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(2004年8月…007-025) もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  もっと新しい記録
007. 「46番目の密室」     有栖川有栖
2004.8.1 推理小説(長編) 角川文庫 ★★★★

有栖川再び。
有栖川作品、読了2作目です。
前回読ませて頂いた「スウェーデン館の謎」で探偵役だった
火村助教授のデビュー戦です。


「密室推理小説家」真壁聖一がクリスマスに
気の許せる推理小説家たちと編集担当者たちを招きます。
そこで事件が…!
最初は悪戯。全員の部屋に変な悪戯がされます。
共通するのは「白い」ということだけ。
そして雪降る深夜、書斎と地下室という2つの密室と
それぞれ暖炉の中に上半身を突っ込んだ2人の遺体が発見され…。
1人は真壁聖一。もう一人は?一体誰だよ、こいつは!?


…そんなお話です。何なんだ。被害者も分からないのか!となると
まるでみゆきちゃんの「理由」みたいだ。
まあ、そこまで複雑ではなかったですけどね。

評価。「スウェーデン館」より、格段に面白かったです。
それ以外は大体、前作と変わらないかな。
うまいです。きれいにまとまった「本格派推理小説」です。
いかにも推理小説というところが、好きな人にはたまらないんでしょう。
その分、パズルチックで現実感とのリンクはないのですが。
むしろ「現実感」を外したお陰で、
「これは推理小説なんだ」ということを主張しているようにも思えます。
そういう手法もあるんですね。なるほど。



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008. 「ぼんくら」     宮部みゆき
2004.8.4 長編時代推理小説 講談社 ★★★★

さて、ついにみゆきちゃんの時代物に初トライです。
前々からちょっと読んでみたかったみゆきちゃんの時代物。
でもみゆきちゃんの時代物ってば短編が多いので、
長編好きの菜の花としては、ちょっと二の足を踏んでました。
しかし!ここに長編時代物を発見したので、喜び勇んで借りてきました。
もちろん、貸してくれたのは我が愛しの区民図書館でございます。
いやあ、こんなに公共図書館ってのが愉快なものとは知らなかったよ、はっはっは。
読みたい本が!無料で!我が家に!やってきてくれるなんて、
何としあわせな世の中だろう!日本国憲法第25条万歳!
菜の花はお金はないですが、健康で文化的な生活を送らせて頂いておりますよ。


さて、中身に入っていきましょう。
といいつつ、帯から入っとこうかな。帯のキャッチコピーです。


    「長屋から / ひとりずつ / 人が / 消えていく。」

    「店子を襲った殺し屋、差配人の出奔、謎の新興宗教騒ぎ。
     江戸下町の長屋で連続する事件の裏の陰謀に、
     同心・井筒平四郎と超美形少年・弓之助が挑む。」


ほほーう。なーんかこれだけ読むだけでも相当どきどきじゃないですか?
めっちゃ面白そうですな。ちなみに裏返すと…


    「奉行所きっての怠け者同心・井筒平四郎、
     超美形少年の弓之助のほか、
     神出鬼没の隠密同心・黒豆、
     回向院の茂七の手下・政五郎、
     驚異の人間テレコ・おでこ、
     若き差配人・佐吉と伝書烏の官九郎など
     最強キャラクターが続々登場!」


…なんかさあ、時代物として間違ってる気がするのは菜の花だけでしょうかね?
そんな、最強キャラクターが続々登場なんて言われても…(^ ^;)。
というか、これの前に読んだ時代物が「新選組血風録」だったもんで、
時代物ってちょっと「陰のある」ってイメージがあるんですけど…
これ読むとまるっきり明るいですね。むしろ現代小説より明るいんでは…?
それは別に構わないんですが。何だか調子狂っちゃうな(笑)。


ストーリーに関しては、そうですね、特に紹介はいりませんさね。
帯の紹介とかぶるといえばかぶる。かぶんないといえばかぶんない。…どっちやねん。
まあ、看板に偽りあり、というのもあったので、ちょっと紹介しよう。


まだ日も明けぬ明けの7ツ(午前4時)、変事を知らせに差配人の家に飛び込む足音。
曰く、「鉄瓶長屋」で八百屋を営む太助が殺されたと。
袖をべっとり血で濡らした、妹のお露の証言は
「殺し屋がきて、兄さんを殺してしまった」。
何だそりゃ? お前、やっただろ!?と駆けつけた同じ鉄瓶長屋のお徳も不審に思ったし、
やってきた同心・井筒平四郎も「は?」という感じ…。
しかしお露の「嘘」をもっともらしくしようとでもいうように、差配人・久兵衛が出奔。
鉄瓶長屋の住人みんながお露をかばおうという姿勢をみせて…。
結局、井筒平四郎はお露を信じた振りをする。事件は終わったかに見えた。
新しい差配人は若輩者。でも決して悪い人じゃない。
しかし何気ない日々の生活の中、「鉄瓶長屋」の店子達に異変が。
まるで関係ないはずの事件が連続し、店子がどんどん減っていく。
長屋に一体、何が起こっているのか?


まあこんな感じです。中間部、だるだるーっとして、平和〜でこういうとこが好きです。
いいこともあって、悪いこともあって…
というように日常が進んでいくかのように見えるのですが、
よくよく振り返ってみて、結果だけみると何か変だぞ?と。
急転直下、事件の渦の中で右往左往、じゃないんですよね。
この辺、いかにもみゆきちゃんらしい。まあ、元々連載していたそうですから、
一話ごとのまとまり(起承転結)を大事にした結果こうなったんでしょうね。
でも、ちゃんと少しずつ少しずつ、抜き差しならないところまで落としていくあたりが
著者の腕の見せ所。ザ・蟻地獄作家と呼ばせて下さい、師匠!って感じです(謎)。


真相解明の方。こっちはいまいち、ぱっとしなかった…。悪くはないんですけどね。
ちゃんと筋は通ってるし、問題はない。腑に落ちる。のですが。
それなのにさっぱりした感じがしないのは何故でしょうか。
こういうもやもや感も、みゆきちゃん作品では多いんですが。。。
落ちも微妙。いいけど…いいんだけどね。何となく世の無常を感じるっていうか。
もう元の場所には戻れないんだなあという、哀しさが。
新しい未来への第1歩って感じもなくはないんですけど、
様々な「日常」を垣間見てきたラストですから、
やっぱり変化してしまうこと、「もうあの頃には戻れない」ことが、
どうしても染み付いて離れない気持ちになるのです。

という訳で、評価は★4つでいっときます。





009. 「とり残されて」     宮部みゆき
2004.8.5 短編小説集 文春社 ★★★★

連続してみゆきちゃん、いきます。実はこの次もそうなんですけどね。
ちょっと最近、みゆきちゃん特集をしてます。ほのかに。


さて、初めてみゆきちゃんの短編集を拝読させて頂きました。
基本的に、短編は好きではないのですが。だって短いじゃん!
折角感情移入しかけたキャラクターと、すぐにお別れって悲しいじゃん!
だから短編はあまり好きではありませんが、連作は好きですよ。
ちなみにシリーズが一番好き。だって気に入ったキャラと、長く一緒にいられるから。

ところがところが、この作品はほんとに短編です。
主人公も設定も、内容も、全くつながりなしの7編。
それぞれジャンルも違うんじゃない?という感じ。
共通してるのは…人が死んでるってとこだけかも(その辺がやっぱりみゆきちゃん)。
でも別に推理小説じゃないんだよね。だからどうやって分類するのか、
ちょっと分からなかったりする。ので、分類は「短編小説」になってるのです。


短編ですので、内容を解説しちゃったらネタがばれちゃうので、
その辺はやめときます。巻末で「解説」していた文芸評論家さんですら、
その辺難しい!って言ってたから。本職が駄目だって言ってるんだから、
菜の花みたいな素人には到底無理でしょう!うん。納得。何だそりゃ。


さて評価です。短編としては相当楽しませて頂きました。
悪くありません。巻末解説であった通り、「小粒だがピリッときくぞ」です。
推理ものに近いもの、超能力っぽいもの、SF、ユーモア系など、
ジャンルはまちまちですが、それぞれに味がある。
短い分、感情移入は出来ないですが、そこをさらりと流すのも
また楽しいものだということが何となく分かったのでした。
ああ、でも短くても司馬遼太郎大先生のような苦味たっぷりコーヒーよりも
さらに濃ゆい短編もありますからねえ。軽いというのもひとつの美徳なのかも。


解説者が秀逸と評した「たった一人」は、さすがに緊張感の持続がよかったですね。
でもちょっと長い。むしろ長いのが気になってしまいました。長編好きのはずが。
長編がいくら好きと言っても、長いのが好きなわけじゃなくて、
面白いのが好きなわけですね、多分。
単に長編の方が完成度が高い作品が多いというだけか、長編好きってのは。
表題作「とり残されて」の方が短さの中に緊張感を凝縮していてよかったと思います。





010. 「震える岩  霊験お初捕物控」     宮部みゆき
2004.8.7 長編時代推理小説 講談社 ★★★★★

はい、更にしつこいくらい、みゆきちゃんです。
またも時代物が読みたくなったので、借りてみました。
勿論、貸主は区民図書館ね。区民図書館っていいなあ。


内容の紹介、いっときますか。
これは所謂「捕物帳」ってやつですね。
でもみゆきちゃんオリジナル…というか得意技ってゆーか…
ちょっと普通の捕物帳じゃない。どう違うかって?
もう、タイトルからそのまま読み取れちゃうと思います。

主人公はお初。岡っ引きの兄を持つ、10代の町娘。
彼女は、人には見えないものが見え、聞こえないものが聞こえる…。
一度死んで生き返ったという、ろうそくの流れ買い・吉次を
「死人憑き」ではないかと疑ったお初は、
これを「御前様」こと、南町奉行さまにお伝えする。
そこで御奉行様に右京之介という侍と引き合わされた。
彼と共に町中を歩いていたお初は、その不思議な力で子供の遺体を発見。
おりしもその頃、浅野匠守の切腹した場所に置かれている岩が
百年たった今になって鳴動を始めた…。
一体何が起ころうとしているのか?


さてさてさて、そんな訳で事件を解明しようとする訳ですが、
関係ないとしか思えなかった事象がどんどん繋がっていき、
気付くとキーワードは「忠臣蔵」になってたりするのです。
そして「忠臣蔵新解釈」が始まるんです。
思うんだけどこの作品、新解釈を書きたいから書いたんじゃないですかね。
何かそんな気がする。確かに新解釈、かなり秀逸です。
非常に素晴らしい。筋も通ってる。そっかーって思わず納得。
けど…それがうまく全体に繋がったか、と言われると微妙だと言わざるを得ない。
そんなにひどい入れ方ではないんですが、新解釈自体が相当綺麗だからなあ。
あんまり綺麗過ぎて、普通なら気にならない断面が気になるというか。
入れ込む周りはまあまあ綺麗。でも新解釈が綺麗すぎちゃって、やや浮く。
そんな感じ。

そのためか、幕切れがあまりよろしくなかった。
真相が、へ?それは何故?って感じの部分がかなり気になる。
何となく、変な感じが残るのだ。まあ幽霊さんの気持ちは
ちっとも分からなくても仕方ないのかもしれないけど、でもやっぱ分からん!
そういう意味で、みゆきちゃん作品にしては初めての★2つ評価で…。
これはおすすめしないってだけで、実際にはこの作品、面白かったですよ。
菜の花自身は、たのしく読ませて頂きました。



菜の花の一押しキャラ…御前様 宮部みゆき著作リスト よみもののきろくTOP
011. 「八犬伝  14巻/15巻」     碧也ぴんく
2004.8.7 漫画 ニュータイプ100%コミックス(角川書店) ★★★★

初めて漫画を入れてみます。よみものには違いない。
いつもは読んでも入れないんだけどね。
…立ち読みなもんで、データが取れないのさ!
つまり、この本は買ったって訳ですが。珍しく菜の花の収集してる漫画です。
実は2年位前に完結してたらしいんだけど、気付かずに今頃買い求めました。
ってゆーか、高いよ!この本。1冊千円する漫画ってどうよ!?
絶対、間違ってると思う!まあ大学の生協で買ったから(おい)、
1割引だったんだけどね。2冊も一緒に買ったから、すっかり散財ですよ。うう。


この漫画は、かの有名な滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」を原作としています。
かなり、原作に忠実です。八犬伝は様々な訳本が出てますが、
なかなか原作に忠実なものは少ないんですよね。
抄訳は一言一句抜けたりしないよう、すごい気を遣ってるのが出てるみたいですが、
普通の訳本では、よくてもどっか削ってるか、ひどいと全然違う話になってます。
まあ、ひどいことはないか。でもこれほど、勝手に書き換えられてしまっている
古典文学って他に例がないような気も。それだけ八犬伝が魅力的で
現在にも通じる面白さが隠されていると、言うことも出来るんですけど。


そりゃもう、面白いでしょうよ!現代でも全然通用するよ、これは。
まずは8人の犬士!ってのがいい。現代でも5レンジャーシリーズは大人気だ!
しかも主役キャラはどれも美男子ぞろいで、腕も立つ。
力持ちの大丈夫(小文吾)から変装すれば超美少女白拍子(毛野)まで
美男子と言っても個性様々。キャラ・ルックスではおねえさま方、
ストーリー・戦略性ではおにいさま方の気を惹くこと間違いなし。
お話自体は勧善懲悪系だから、おじいさまおばあさまにも受けますね。
(勧善懲悪といえば現代では水戸黄門が大人気さ!)


さてと、ストーリー紹介はどうしようかな。途中巻だからなー。
八犬伝知らない人には全然分かんないだろうしなあ。どうしよっかなー。

じゃ、まあ、適当にあらすじというか発端を書いとこうかな。
昔々…戦国時代の始まりくらいです。
関東で結城合戦というのが起こりました(史実です)。
このとき房総半島に落ち延びた若武者が里見義実でした。
この方、周りから推されて悪い領主を倒して滝田のお殿様になりました。
が、悪い領主の妾・玉梓を処刑したことで、里見家は呪われてしまったのです!
玉梓の霊は女狸に乗り移り、仔犬を育てました。そうとは知らない里見義実は
この仔犬を息女・伏姫のもとに引き取ります。この伏姫も、元々玉梓の呪いのため
様々な障害を抱えた子供でしたが、役行者のくれた如是畜生発菩提真という
文字の浮き上がった数珠によってその呪いを跳ね返したという人。
この伏姫が美しく成長した頃…隣国の安西氏が、里見の領土が不作で弱っているところに
攻め込んできたのです!卑怯者ー!!!滝田は今にも落城しそうな危機に。
諦めた里見義実は何気に、巨犬に成長したあの仔犬…八房に
安西の首を取ってきたら伏姫を嫁にやろう、と戯れを言います。
しかし!何と八房は本当に首を取ってきてしまったんですね。
義実は八房に、山海の珍味や専属の世話役をつけたりとするわけですが、
八房は納得しません。結局、事情を知った伏姫が八房に嫁入りし、
領土内にある富山(とみさん)に登り、静かにそこで暮らしておりました。
しばしのち、戦いの中で行方が知れなくなっていた伏姫の婚約者が帰城。
八房に連れ去られた伏姫を助けようと、鉄砲片手に富山へ。
そして首尾よく八房を見つけて撃ったわけですが、
勢い余って近くにいた伏姫まで撃っちゃった!
慌てて抱き起こすと、伏姫は八房の「気」によって妊娠したと言う。
しかしこれは「気」で出来た子供なので実体がない。
それを証明し、また玉梓の呪いを希望に変えるために、
伏姫は懐刀で自らの腹を一文字に切る。腹から出た光は
彼女の首にかかっていた数珠の糸を切り、108つの数珠球がばらばらに。
そのうち8つの大玉に入っていた文字が「如是畜生発菩提真」から
「仁義礼智孝悌忠信」に変化し、四方に飛び散る。
伏姫の婚約者はこの8つの玉を持つ「伏姫の子供たち」を探すため
僧侶となって全国行脚の旅に出る。。。
そして話は伏姫の子供たち(八犬士)の青春に舞台を移す…。

そんな感じです。

さて、14巻15巻はもう最終なんで、八犬士はそろってます。
みんな安房の国に帰参した後ですね。そして最後の戦いが始まったところです。
周りの国全部を敵に回しての、安房の国の孤立戦。
しかし、八犬士の集まった里見家は無敵です。
何しろ神女・伏姫さまの加護まであるんですからねえ。


さてと、評価。…評価?出来るか?漫画の評価なんざしたことないぞ。
ってゆーか、これまでも本当の書評って書いたことないさね。
いつも単なる雑文じゃ…ごほごほ。まあいいさ。

ええと、この漫画は少女漫画的図柄ですので、
やっぱり不満といえば不満なところがございます。
常々思っていることですが、女性の漫画家さんは大抵、
静止画をとても大切にされますね。本当に美しい!んです。好きです。
でもその分、動きを描くのが苦手のように感じます。
何か、不自然なんですよねえ。躍動感に欠けるというか。
まあ、普通の少女漫画に躍動感はそれほど要求されないんですが。
でも八犬伝はこういうお話ですから。やっぱ必要なんですよ。
その辺、大戦に入ってしまってからも物足りなさが…。
特にその他大勢の兵士が出てきちゃいますとねえ。
何か足りない。多分その他大勢ってアシさんのお仕事だと思うんですが、
何だかつるっとしてしまっていて、書き込みも少ないし、
お人形さんみたいで全然迫力がない!物足りない!
そこ、減点ですね。ストーリーとしては、悪くないんですが。
コマの割り方とか、少年漫画にはない細やかな演出は素晴らしい。
全般としては、八犬伝の漫画化を女性がやったのは間違いでないと思います。
八犬伝は古いお話ですから、心理描写というものが一切出てきません。
そういう表現技法が現れたのは明治以降ですからね。
それを見事に、またストーリーに矛盾なく描き出したのは、
この作家の腕だと思います。ラストはオリジナルに入っていきましたが、
こういう終わり方もまた、漫画らしくてよいかと思います。
個人的には八犬士の結婚生活って見てみたかった!けどね。
いや、原作にも描かれてないけどさ。後日談みたいな形で
この作家さんに描いてもらいたかったかなーなんて。
面白そうだから。

この漫画、15巻でついに完結致しました。
連載開始から12年。干支が一回りしちゃってますね。
碧也ぴんくさん、お疲れ様!と是非、言いたいところであります。
という訳で、この漫画は比較的おすすめ。是非最初から読んでみて下さいな。



菜の花の一押しキャラ…犬坂毛野胤智 よみもののきろくTOP
012. 「初ものがたり」     宮部みゆき
2004.8.10 短編連作時代小説 272P 新潮社 ★★★★★

さてさて、またみゆきちゃんに戻りますね。
今度はええと、茂七親分のお話でございます。
「は?茂七って誰?」って感じですね。
ええと、今までの菜の花が感想を書かせて頂いた中で名前だけ登場したことがあります。
ほんとに名前だけですが。その作品とは「ぼんくら」です、はい。
こっそり、「茂七の手下・政五郎」なんて言葉が出てます…。ほんとこっそり。
「ぼんくら」の時点では茂七親分は70歳くらいだかで温泉に湯治に行っちゃって
主人公の井筒平四郎が訪ねていったときお留守でした。はい。
作品成立年としては「初ものがたり」の方が先みたいなので
「ぼんくら」に出てきた茂七親分は読者サービス(?)といったところでしょうか。
特別出演ってゆーか。思わずにやり、な読者が多数いたと思われます。

じゃ、中身を紹介。
主人公は「回向院の旦那」こと岡っ引きの茂七。
何故に回向院かと言えば、回向院裏のしもたやに住んでるから。
この連作短編は茂七の捕物帖というわけです。
他のキャラクターも、とてもユニーク。
茂七の下っぴきは、食べ物大好き動きの機敏な若手の糸吉と、
酒屋勤続30年で番頭までなったのに45にしてこの道に入った権三。
やくざ連中をまとめ上げる頭目・梶屋の勝蔵。
謎の屋台屋の親父。やっぱり謎の霊感少年・日道。
起こる事件は大小さまざま。殺しもあれば盗みもあるし、
事件じゃない事件もある…とバラエティ豊富で楽しめる。
題名は「初物」を由来としており、あちこちに美味しそう!な食べ物が登場。
蕪汁、白魚蒲鉾、初鰹、柿羊羹、小田巻き蒸しに桜餅。
うーん、いいなあ!何だかこの味わい、たまりません。

もう、ずっと読んでいたいような、楽しい1冊。
強くお勧めしたい!とは思うのですが、★は3つで。
何故ならこの作品、完結していないから。
謎が謎のままなんです(T-T)!
屋台屋の親父さんと勝蔵の関係を匂わせておきながら、
結局親父は謎の人物のまま!日道少年も寝込んだまま!
どーなるんだよ!と思わず叫びたくなる、このもどかしさ。
それというのも、この連作を連載していた雑誌が、廃刊になっちゃったから、
なんですね。悲しい話だ…。そういえばこの前の「八犬伝」も、
連載していた雑誌が2度も廃刊になるという悲劇に見舞われていましたね。
でもちゃんとお引越しして連載は終了させてますが。相当大変そうでしたけど。
みゆきちゃん自身もそうしたかったとのあとがきですが、
結局「いつか必ず続きを書きます」で終わっています。
信じてますので、どうぞ必ず書いて下さいまし!ってところ。
そういう訳で、続巻がでた時点で、評価を上げさせて頂こうと思います。



菜の花の一押しキャラ…屋台屋の親父 宮部みゆき著作リスト よみもののきろくTOP
013. 「天狗風  霊験お初捕物控【二】」     宮部みゆき
2004.8.12 長編時代推理小説 573P 講談社 ★★★★★

連続して、みゆきちゃんです。
まだしばらく、菜の花のみゆきちゃん熱は続きます。
あと4冊ほど借りてありますので。
8月うちに、みゆきちゃんを制覇しちゃいそうな勢いだなあ。

これは以前に感想を書かせて頂きました「震える岩」の続編です。
という訳でメインキャラクターはそのまま踏襲されています。

主人公は前作から1つ歳をとって、17歳になったお初。
今回も見えないものを見てしまい聞こえないものを聞く能力、大活躍。
更に、前回は超へなちょこキャラだった元与力見習・右京之介さまが、
水を得た魚的に、ちょっと頼りになるようになって再登場。
おお、かっこいいではないか。何か好きです、右京之介さま。
あとは前回はいませんでしたが今回大活躍キャラと言えば、鉄くんです。
すごいです。よく働きます。こやつがいなかったら解決できなかった気がします。
前回悪役(?)だった赤鬼・古沢さまも今回は何だかとってもご機嫌麗しく。
彼は一体、どうしてしまったのか…?
まあ、前作を読んでいると、にやりなキャラかもしれません。
その他、どのキャラクターも強烈な印象を残してくれます。

今回の事件は「神隠し」です。嫁入り直前の下駄屋の娘が突如消える事件発生。
犯人は天狗!?…天狗の正体とは一体何なのか…?


全体として、大変楽しめました。ただ前作よりもやや指向性が低い気がします。
元々が新聞だかに連載していたからだと思います。少々発散傾向あり。
どのキャラクターもよくたっていて、それぞれにそれぞれの人生を
しっかり背後に背負っている感じがして、素晴らしいと思います。
ただその分、発散しやすくなっているのですね。ややもすると中心がにじんでしまう。
だから「鉄」というキャラを作って、ストーリーを引っ張らせている感があります。
話の展開が少し、「鉄」に頼りすぎたかなあという気もしなくはない。

あと、何だか宮部みゆきにしては、やや対象読者を広げてるかなあと感じます。
ちょっと高尚、な雰囲気の筆が多い気がしたんですが(気がするだけか?)、
この作品は相当、一般受けを狙っていそう。そうか、新聞連載だからそうなるのか。

全573ページ(解説抜きで564P)と、文庫本にしては相当な分厚さでしたが、
2日でさっくり読めるほど、面白かったです。更なる続編、求む!



菜の花の一押しキャラ…古沢右京之介 付録・宮部みゆき著作リスト よみもののきろくTOP
014. 「平成お徒歩日記」     宮部みゆき
2004.8.16 紀行エッセイ 275P 新潮文庫 ★★★★

みゆきちゃんの唯一の小説じゃない本です。
紀行文というか、エッセイというか。
あ、紀行文はみんなエッセイか!まあいいや。


これは作者が江戸を中心にお徒歩(おかちと読む)でお出掛けした記録ですね。
雑誌「小説新潮」で夏冬に連載されていた特別企画だった模様。

コースは…

  • 討ち入り後に四十七士が吉良邸〜泉岳寺で辿った、忠臣蔵コース
  • 小伝馬町牢屋敷〜鈴ヶ森・小塚原刑場まで、毒婦みゆき、引き回しコース
  • 小田原〜箱根旧街道の、毒婦みゆき、関所破りコース
  • 江戸城一周コース
  • 毒婦みゆき、八丈島に島流し、八丈島巡り
  • 本所深川七不思議巡り
  • 善光寺+伊勢参りコース などなど。 メニューを見た感じ、相当面白そうでしょ?ね?ね? なんですけどねえ。…すみません。 みゆきちゃんファンの菜の花ですが、今回ばかりはご勘弁! ★1つで御願いします。すみません、すみません。 途中で、くじけそうでした。前回拝読した「天狗風」が500ページを超えていても ぜーんぜん苦痛でなかったのに、これはちょっと辛かった…。 いいんですよ、いいんですけどね。。。 はー…何であんなすごい小説が書ける人が、このエッセイも書くかなあ。 正直言って、読みづらいことこの上ありませんでした。 多分、短すぎるせいかと思います。紙上の制限があったんじゃないかな。 どうやらみゆきちゃんは楽しかったらしい、ということは伝わってくるのですが、 菜の花は一緒に楽しめませんでした。移動は基本がお徒歩なわけですから、 連続的に場面が移り変わっていっているはずなのに、 要所要所しかレポートされないからあんまり「お徒歩」のありがたみがない…。 小説ではいつも、読者をあちこちに引き回してくれる彼女の文章が、 ちっともここに感じられないのです。読者を一緒に連れて行ってくれないのです。 でも世間的には結構、評判よかったみたいですよねー。 一発企画っぽかったのに、反響が大きくてシリーズ化したようですから。 うーん、菜の花がひねくれすぎなのか?
    菜の花の一押しキャラ…さぬきうどん土居氏 宮部みゆき著作リスト よみもののきろくTOP
  • 015. 「幻色江戸ごよみ」     宮部みゆき
    2004.8.17 短編集 330P 新潮文庫 ★★★★★
    
    分類が短編集なのか、連作短編集なのか、迷うところです。
    一応、ひとつひとつの話にはつながりがないので、短編集としておきます。
    
    
    本作は全十二話のお話が絶妙なバランスと順番で並べられている短編集です。
    「江戸ごよみ」というだけあって、それぞれが独立してはいますが
    全体として大体、四季折々に辿っていく、という風になってます。
    
    
      ●第一話  鬼子母火
    	師走の終わりの深夜、伊丹屋から小火が出た。
    	この店と共に生きてきた女中頭のおとよは、
    	出火元が神棚の注連縄(しめなわ)に隠されていた
    	「髪の毛」であったらしいことを知る…。
    
    	娘の幸せを願う母の想いが伝わる、温かい話。
    
    
      ●第二話  紅の玉
    	病身の妻・お美代を抱える飾り職人・佐吉は一流の腕を持つ。
    	しかし「奢侈取締り」により、生業が成り立たなくなり困窮。
    	あるとき、老武士がお忍びで豪華なかんざしを注文にきた。
    	彼は一体何者なのか?
    
    	もののけより怖いのは人間なのかもしれない…。
    
    
      ●第三話  春花秋燈
    	古道具屋に行灯を求める客が来た。相当な額を出すという。
    	そこで蔵からいわくつきの2つの行灯が出された。
    	主人はそれぞれの来歴を語って聞かせる。
    	
    	行灯の光に照らし出される心の闇。
    
    
      ●第四話  器量のぞみ
    	大女で醜女として知られる貧乏長屋の娘・お信に
    	下駄屋の一人息子で評判の美男子・繁太郎が
    	器量が気に入ったから嫁に来てくれと言う。
    	繁太郎一家は両親も2人の妹も皆、美形。
    	しかし全員自分は醜く、お信は美しいと信じているらしい。
    	一体全体、何がどうなっているのか?
    
    	生まれつきでどうしようもない美醜に振り回される人の愚かさを、
    	滑稽さと緊張感を兼ね備えた筆で描く。ラストが感動的。
    
    
      ●第五話  庄助の夜着
    	一膳飯屋いなり屋の店員・庄助が、古着屋で夜着を求めてから
    	様子がおかしいことに主人・五郎兵衛が気付く。
    	やんわりと尋ねるが、もうすぐ嫁ぐ一人娘おゆうの方に
    	気がいっている五郎兵衛はあまり深く考えていない。
    	庄助は怪異にからめとられているのか?
    
    	結局、結論は庄助とともに。。。余韻のある話。
    
    
      ●第六話  まひごのしるべ
    	盆市で大工が拾った迷子の男の子は首に迷子札を下げていた。
    	それを頼りに家を訪ねた大工の妻・おつやと差配人。
    	だが、子供の父親は3年前の火事ですでに亡く、
    	子供は母と共に行方知れずだが、迷子の男の子とは
    	明らかに別人であることが分かる。
    	この子は一体、どこからやってきたのか?
    
    	希望は人を強くし、また残酷に陥れるものであることを
    	親子の愛情を通して描く。
    
    
      ●第七話  だるま猫
    	幼い頃から両親との縁が薄く、親戚をたらい回しにされて育った文治。
    	彼を支えていた夢は「火消しになる」こと。
    	ついにその夢への第1歩を踏み出した文治は、「臆病者」という
    	どうしようもない性という壁にぶち当たり、居場所を見失う。
    	彼を救った一膳飯屋の主・角蔵は「だるま猫の頭巾」の話をする…。
    
    	話は二転三転、闇の中を手探りで歩くような緊張感が保たれている。
    	ラストは怪異との絆を断ち切ることで明日への希望を得る。
    
    
      ●第八話  小袖の手
    	娘が買ってきた格安の小袖。母はこれをほごしてしまう。
    	そして「いわくつきの小袖」の恐ろしさを、
    	自らの体験談として語って聞かせる。
    
    	単体ではあまりぱっとしないが、
    	全体とのバランスを整えるに、なくてはならない話かもしれない。
    
    
      ●第九話  首吊り本尊
    	奉公が辛くて逃げ出した幼い捨吉。しかし家族は泣くばかりで
    	迎え入れてくれない。帰るところをなくした捨吉は、
    	絶望しながら奉公先に連れ戻される。そんな彼を大旦那さまが
    	呼び出す。大旦那は笑顔で首を吊る不思議な男の掛け軸を見せ、
    	昔、丁稚奉公をしていた自分もまた、奉公先から逃げ出し、
    	そのときに番頭さんにされた話というのを語って聞かせる。
    
    	怪異はときに、人を助けるのである。その形は一様とは限らない。
    
    
      ●第十話  神無月
    	毎年、神無月に1度だけ現れる手際のいい強盗。
    	それを追う岡っ引と、辛い事情を抱えて強盗を働く男の
    	それぞれの様子が交互に語られる。
    
    	怪異現象は全く出てこないが、十分な怪異を秘めた話。
    
    
      ●第十一話 侘助の花
    	看板屋・要助は、掛け行灯を作るときに必ず侘助の花を描く。
    	その由来は淡い初恋の物語。だがこれを笑われ、咄嗟に
    	ついた嘘が「生き別れの娘」の話。そこへ「その娘だ」と
    	名乗る、おゆきという女が現れる。たった一度の嘘が現実に?
    
    	正気と狂気の狭間にある、切ない孤独が伝わる話。
    
    
      ●第十二話 紙吹雪
    	井筒屋の唯一の女中・おぎん。
    	主人夫婦の部屋から出てきた彼女は、手足を清め、
    	井筒屋にやってきたときにたったひとつ持ってきた
    	鋏を清め、そうして紙を切り、屋根に上った。
    	彼女は雪を降らせるのだ…。
    
    	ぎんの視点に、それを見ていた人々の「証言」が時々
    	挿入される形になっており、謎と緊張感が漂う話。
    
    
    はー…全部書いたら疲れました。
    とりあえず全部に共通してることと言えばやっぱり、どれも市井の人々に
    スポットライトが当たっている、ということでしょうか。
    誰もが懸命に生きていて、誰もが自分だけの背景を抱えていて、
    そしてあるときふと、事件に巻き込まれたり、逆に救われたりする。
    そんな何気ないような、でも緻密な計算をされた作品群です。
    
    今まで読んだ短編集の中では、時代物、現代物含めて最高の秀作。
    というか、宮部みゆきの短編集では一番おすすめかもしれません。
    ただし、読書に慣れない人にはやや辛いかも。
    
    
    
    
    
    
    016. 「本所深川ふしぎ草子」     宮部みゆき
    2004.8.18 短編集 266P 1991年4月初出
    1995年9月発行
    新潮文庫 ★★★★
    
    本日もみゆきちゃんの時代物短編集で。
    今回は珍しく、区の図書館じゃないところから借りてきました。
    中身には関係ないですけどね。某私立大学の図書館です。
    たはは、小説借りるのにわざわざ他大学に行くなって?
    いやあ、近かったんだもーん。今、通ってますから。
    図書館司書講習のために!(T-T)
    
    
    さて、中身ですが。
    前回(「幻色江戸ごよみ」)は、
    思いっきり全部の短編の紹介を書いて相当疲れたし、簡単に書こうかと思ったけど…。
    うーん。どうしよう…。
    
    まま、とりあえずは全体の説明をば。
    多分七不思議ってご存知ですよねえ。どこにでもありますからね。
    この短編集に収められている話は7編。
    それぞれに冠せられたタイトルが、本所深川七不思議になっております。
    全然、予備知識ないとタイトルの意味が分からないかも。
    この辺りは、先に最低レベルの評価をしてしまった(ごめんなさい!)
    「平成お徒歩日記」で本所深川七不思議巡りってコースがあったお陰で
    菜の花、すでそれぞれの話を知ってるんですね。
    ああ、読んでてよかったなあと。おすすめレベル、上げとこうかな…(苦笑)。
    よし、それぞれ七不思議の内容(うろおぼえ)とセットで中身紹介しましょう!
    
    
      ●第一話 片葉の芦
    
    	【不思議】
    	両国橋の北にある小さな堀留に生える芦の葉は、
    	どういうわけか片側にしか葉がつかない。
    
    	近江屋藤兵衛が殺された。噂では娘のお美津が疑われているという。
    	蕎麦屋の奉公人・彦次は「片葉の芦」の思い出とともにある
    	優しいお美津が人殺しなどするはずがない、と思うのだが…。
    
    	片葉の芦がシンボルとして非常に上手く働いている…
    	という評価だけでは言い尽くせないものがある。
    	この話は、凡人には書けませんよ。恐ろしいほどの秀作かと。
    
    
      ●第二話 送り提灯
    
    	【不思議】
    	夜道を一人歩きしていると、つかず離れず、提灯が浮くようにして
    	あとを尾いてくる。尾いてきた提灯に帰ってもらうには
    	御礼として履物を片方と握り飯をひとつ投げなくてはならない。
    	もしも御礼をしないと…食べられてしまう。
    
    	やっと十二になったばかりの奉公人のおりんに、大野屋のお嬢さんは
    	自らの恋の願掛けの為、神無月の丑三つ時に誰にも見られずに回向院の石を
    	百日間拾いに行けと言う。出掛けたおりんは毎夜、送り提灯に尾けられて…。
    
    	何というか、掴みかねると言うか、でもすごく絶妙。
    	人の心がほんとにうまく描かれている一編。
    
    
      ●第三話 置いてけ堀
    
    	【不思議】
    	夕暮れ過ぎに本所の錦糸掘あたりを、大漁に上機嫌の釣人が通りかかると
    	どこからともなく「置いていけ…置いていけ」という声が呼びかけて、
    	いつまでも追いかけてくる。逃げている内に気付くと、魚籠は空になっている。
    
    	置いてけ堀の化け物の正体は、横死した魚屋か猟師の生まれ変わり?
    	魚屋の若い夫を亡くしたばかりのおしずは、そんな話を小耳にはさむ。
    	まさかと思うが、早朝に自分の長屋の前に得体の知れない
    	水かきのついた足跡が…。夫は彼女と幼い息子に会いに来たのか?
    
    	切ないお話です。おしずさんは強いなあ。
    
    
      ●第四話 落ち葉なしの椎
    
    	【不思議】
    	松浦家の上屋敷にある椎の木は、どんなときでも決して
    	ただの一枚の葉も落とさないという。
    
    	小原屋の裏手が面する横道で殺しがあった。しかし時悪く、
    	落ち葉のせいで下手人の足跡が分からない。
    	岡っ引の独り言を聞きつけた小原屋の息子の婚約者で、
    	奉公人でもあるお袖は、毎晩自分が「落ち葉なしの椎」
    	と呼ばれるほどに掃き掃除をすると言い出す。
    
    	親子の細かな情愛と複雑な駆け引きを浮かび上がらせた作品。
    
    
      ●第五話 馬鹿囃子
    
    	【不思議】
    	夜中にふと目を覚ますと、どこからともなくお囃子が聞こえてくる。
    	遠いと思えば近づき、近いと思えば遠のく。どうしても場所が
    	分からない。朝起きて調べても、夜中にそんなお囃子を
    	やっていた家などない。
    
    	おとしは許婚者の宗助の様子が最近おかしいと愚痴るため
    	伯父夫婦の家にやってきた。岡っ引の伯父は若い娘・お吉と
    	話し込んでいる。その話は「人を殺した」という内容。
    	驚くおとしに、「お吉の話はみな嘘なのだ」と伯母が教える。
    
    	正気と狂気と、恋心。宮部みゆきらしい繊細な筆致で
    	それらを通して人の心を透かし見る。
    
    
      ●第六話 足洗い屋敷
    
    	【不思議】
    	真夜中、あるお屋敷の座敷で人が寝んでいると、天井を破って
    	大きな汚い足が降りてきて「洗え、洗え」と命令する。
    	それを綺麗に丁寧に洗ってあげれば福が来るし、
    	いい加減に洗うとよくないことが起こる。
    
    	大野屋に新しいお内儀・お静がやってきた。元は茶屋の店員だったという
    	彼女の嫁入りを皆が危ぶんだが、その美しさと人柄に誰もが彼女を
    	認めるようになった。大野屋の娘・おみよもそのひとりで、
    	お静によくなついていた。何もかもが幸せに見えたが、
    	大野屋の旦那によくないことが起こる。
    
    	人生って色々です。悪い大人には気をつけよう。
    	でも根っからの悪人もいないのかもしれません。
    
    
      ●第七話 消えずの行灯
    
    	【不思議】
    	ある二八蕎麦屋の掛行灯の火が、雨の日も風の日も、いつも同じように
    	燃えていて、消えたところを誰も見たことがない。また油を足している
    	ところも見られない。
    
    	桜屋の女中のおゆうは天涯孤独の身。人を当てにせず、自分ひとりで
    	自分を養うのだと決心している。そんな彼女を見つめる客がいた。
    	客は夜中に訪ねてくる。持ちかけられた話とは?
    
    	第一話と同様、「消えずの行灯」が上手くシンボルになっている。
    	また、宮部作品では珍しく、やたらと冷静な女性が主人公。
    	おゆうの人生観は興味深い。
    
    
    実は全編に渡って登場する人物がひとり。それは回向院の茂七親分です。
    みたび登場!と、言っても全部脇役。何かそれも面白い。
    結局主役張ってるのは「初ものがたり」だけなんですね、親分!
    しかし、いい味出してます。普通、主役が共通して出てくる作品群が多いですが、
    脇役がずっと出てくるとは。楽しい趣向ですが、安心感のある仕上がりです。
    ただの捕物帖になっていないところがいいですね。
    「幻色江戸ごよみ」同様、庶民の目の高さで、って感じが。
    ほんと、江戸の町に住んでいるような不思議な気分です。
    
    
    
    
    菜の花の一押しキャラ…おりん 宮部みゆき著作リスト よみもののきろくTOP
    017. 「冷たい密室と博士たち-Doctors in isolated room」     森博嗣
    2004.8.20 長編 297P 1996年7月発行 講談社 ★★★★
    
    さて、初めて森博嗣を評価させて頂きます。
    菜の花としては森作品、2作目拝読でございます。
    ちなみに過去に読んだ1作はデビュー作の「すべてがFになる」です。
    まあまあ面白うございました。
    
    元々、森作品って見慣れていた割に、ちっとも読んだことのないものでした。
    何故見慣れていたか?それは、大学の生協に行くと平積みになってるから。
    新作が出るたびに山積みです。森博嗣の回し者がいるのね!?っていうくらい。
    まあ、ほんとにいるんだと思います。浅からぬ縁で結ばれた仲ですからね(謎)。
    それがたまたま手にとってみる機会を得られたことは、よいものであったかと思います。
    出会って7年目に初めて読むって遅すぎた気もしますけどねえ。ほほほ。
    
    
    では、この作品の概要を。
    これはあるシリーズの1作です。シリーズ名はS&Mらしいです。
    別にあやしくないよ。
    メインキャラクターの犀川創平と西之園萌絵の頭文字を並べただけという
    いたって単純なタイトル命名であります。
    デビュー作「すべてがFになる」の直後に出版された第2作。
    ただし、「すべてがFになる」より先に草稿は出来ていたらしいです。
    というか、入賞時にはすでにシリーズの全10作がすべて考案されていたとかいう噂も。
    とっても筆が速いみたいです、森博嗣。
    ってか、いいのか?公務員が副業(小説家)持って。
    森博嗣は何を隠そう、某国立大の工学部の助教授なんですよ。
    あ、もはや公務員ではないか。独立法人だ。そんなのどうでもいいや。
    
    
    さて、内容の紹介をば。
    めんどいから今日はカバーの見返しにある内容紹介をそのまま引用。
    
    同僚の喜多助教授の誘いで、N大学工学部の低温度実験室を訪ねた
    犀川助教授と、西之園萌絵の師弟の前でまたも、不可思議な殺人事件が起こった。
    衆人環視の実験室の中で、男女二名の院生が死体となって発見されたのだ。
    完全密室のなかに、殺人者はどうやって侵入し、また、どうやって
    脱出したのか?しかも、殺された二人も密室の中には入る事が
    出来なかったはずなのに?
    研究者たちの純粋論理が導き出した真実は何を意味するのか?
    
    
    だそうです。密室ですよ。皆様、密室。
    わくわくですねえ。どきどきですねえ。
    そして、実際に密室が目の前に出されたとき、
    菜の花相当、頭を抱えましたよ。
    ええ、事件が進むときの、謎を抱えた部分、最高に素晴らしかったですよ。
    うまい。トリックは…うーん、まあ及第点。いいんじゃないでしょうか。
    
    文章の表現としての評価はそれほど高くはありません。低くもないけど。
    普通です。一般人です。可もなく不可もなくです。
    いらない文章も多いですが(それが多分に論理的で、嫌いな人は嫌いらしい)、
    その論理を愉しむのも、また一興です。
    
    推理部分は非常に緻密かつ論理的。これは他の追随を許しません。
    さすがに理系研究者。まるで数学の問題でも解くかのような推理です。
    
    人物の描き方で森博嗣はよく、「理系人間をこれだけ描ける人はいない」
    とされますが(そりゃそうだ、理系人間が理系人間を描いてるんだから)、
    それは間違いないかと思います。「彼は人間を描いていない」という批判は
    確かに誤っているかと。確かにいるもん、こういう人たち。
    ただし理系に限る、みたいな。まあ、同じ理系でも菜の花は理学学生なんで
    工学の方とはちょっと文化が違うなあと思うことも度々ですけどね。
    
    
    とりあえず、純粋に推理が好きな人には、まあおすすめの一品です。
    
    
    
    
    菜の花の一押しキャラ…国枝桃子助手 森博嗣の著作リスト よみもののきろくTOP
    018. 「陰陽師 飛天ノ巻」     夢枕獏
    2004.8.21 連作短編 261P 1995年6月発行 文藝春秋 ★★★★★
    
    ちょっと前の話題作にレッツトライ。
    この前漫画を立ち読みしたら結構面白かったので、原作に挑んでみました。
    しかし、第1作が貸し出し中でなかったので、いきなりですが第2作目からです。
    公共図書館から借りると、多々このようなことがございます。
    タダで借りてる身なので、まあ文句は言いますまい。
    
    
    どんな話なのか?から、まずは。
    ええと、平安時代の凄腕陰陽師・安部清明さんの活躍譚といったところかな。
    で、いつも清明とセットで出てくるのが、別に陰陽師でも何でもない、
    親友の源博雅さんです。雅楽の天才です。でも天然系です。
    この二人、とりあえずいつでも飲んでます。飲み友達か?
    
    飛天ノ巻の収録作品は以下の通り。
    
    
      ●天邪鬼
    	博雅が菅原文時に頼まれ、清明に相談にやってくる。
    	文時が恋人のもとを訪ねようとすると、
    	途中にある檜の切り株の辺りで子供の姿をした
    	あやかしが出て、通り抜けられないという。
    	あやかしの正体とは?
    
    
      ●下衆法師
    	博雅の友人・寒水翁は辻で見られる外術の虜になった。
    	是非習得したい、と青猿法師に懇願すると、
    	条件を守れば教えて貰える方に引き合わせるという。
    	喜んだ寒水翁は条件を守り、山奥へ導かれる。
    	そこで見たものは…?
    
    
      ●陀羅尼仙
    	法師・明智が清明の元に相談に訪れた。
    	毎晩、尊勝陀羅尼を唱えて眠ると不思議な僧が
    	枕元にやってきて「香をたいて欲しい」と頼むという。
    	夢は一体、何を意味するのか?
    
    
      ●露と答へて
    	藤原兼家が百鬼夜行に襲われたのだという話を
    	博雅が清明の元に持ってきた。
    	彼は兼家をおとない、清明に助けを求めにきたのだ。
    	しかし話を聞いた清明は…?
    
    
      ●鬼小町
    	如水法師の紫光院に品のよい老婆が毎日やってくる。
    	あるとき声を法師が声を掛けたところ、翌日に
    	自分の庵に来て欲しいという。約束どおり訪れた法師。
    	しかし…。法師は縁のある博雅に相談し、
    	博雅は清明と共に法師を訪ねる。老婆の正体とは?
    
    
      ●桃園の柱の穴より児の手の人を招くこと
    	源高明の住まい・桃園邸。夜になると、母屋の柱の木の
    	節穴から1本の小さな子供の右腕が這い出てきて、
    	ひらひらと人を招くという。節穴に征矢を突き立てると
    	手は出なくなったがどこからともなく人の指が落ちてくる。
    	次は蛙、そして蛇。この怪奇現象の由縁は?
    
    
      ●源博雅堀川橋にて妖しの女と出逢うこと
    	三条東堀川橋に不思議な女のあやかしが出るという。
    	幾人もの殿上人がこれを目撃し、宿直では大いなる
    	話題になっていた。博雅は周りに焚き付けられ、
    	夜分に三条東堀川にひとりで行くことになる…。
    	
    
    うーん。まとめるって難しいですね。
    とりあえず、お話はこんな感じです。
    
    
    評価の方へ進みますか。文章。別に可もなく不可もなく。
    軽い。その意味では読みやすい。
    が、無駄にひねくり回しているように感じてしまう部分も幾分ある。
    もう少し練ることは可能かもしれない。
    会話文が多いので、その点でも軽さと読みやすさを感じる。
    
    内容。漫画になりやすそう。一般向け。文章同様、内容も軽い。
    時折、いい訳じみた変な解説の一言が入ることがあり、それはやや、評価できない。
    しかし、事件と関係ないところの言動や解説が意外に面白い。
    この辺りが人気の秘密かもしれない。横道が面白いのだ。
    何より、キャラがいい。
    単によく描けている、描写されている、という訳ではない。
    人を描くなら、宮部みゆきの繊細さなどには及ばない。
    どこがよいのか?まずキャラそのものが、筆者の中で
    しっかりとした形を持っているように見える。
    (ただし、清明だけはどうにもつかみかねるが…。)
    そして人物描写の殆どを、会話文に頼っているところが面白い。
    それでも十分に通じる「間合い」を会話文に取り込んでいる。
    その意味で「漫画になりやすい」と言える。
    
    個人的なことだけど、菜の花の書く小説も会話文が多い。
    何となく、似たタイプだから好ましいのかもしれない。
    
    
    またこのシリーズ、借りてこようっと。
    
    
    
    菜の花の一押しキャラ…源博雅 よみもののきろくTOP
    019. 「堪忍箱」     宮部みゆき
    2004.8.22 短編集 244P 1996年10月初出
    2001年11月発行
    新潮文庫 ★★★★
    
    このひとは、何度読んでもやっぱり巧い。
    と、何となく納得してしまう。
    
    はい、最近恒例のみゆきちゃん作品(時代物)です。
    今回はちょっと体力の限界で、1つ1つの短編を解説するのは控えます。
    だるだるだる。
    
    
    内容的には、いつもと同じです。
    庶民の目の高さで、何気ないひとこまを描く振りをして、
    何だか事件に巻き込まれております。
    まあ、事件と言っても大したものでもありません。
    必ず人死にが出るということでもなし。出ないわけじゃないですが。
    何というか、もっとありえそうな…とってつけたようでもない、
    自然な事件という感じ。しかも、ひょい、て感じで起こったりする。
    これは巧い。何か、読者の期待を裏切るようなところ。
    こういう舞台が出来たなら、こう進んで欲しい、
    こうなるはずだろう、という読者の淡い希望が
    あっさりと裏切られるというか。何の気なし、という風なので
    読者も、キャラと一緒に「あれ?」という気持ちが味わえる。
    不思議を、キャラと一緒に共有できるのです。
    この描き方をもしももっと別の表現で言い表すなら…
    そうですね、視点のずれ。著者と読者の、見ているところが違う。
    読者が見ているのは、並の著者ならきっと注目するであろうところ。
    なのに、みゆきちゃんは他の人と同じような舞台を用意しつつ、
    実はぜーんぜん、違うところを描きたがっているのです。
    これは狙ってる訳じゃないよねえ。
    きっと、この著者の持って生まれた、天性の才能なんだろうなあ。
    
    
    ただ、全作品を絶賛できないところが心苦しいところ。
    謎を謎のままに、という終わり方は悪くはないのですが…、
    途中でキャラクターに読者が置き去りにされるような気持ちになった後に
    謎を背負ったまま終わられてしまうと、読後感がさっぱりしないですね。
    余韻、と言えばそうなんでしょうが…、もう少し清清しい気持ちになりたい!
    というのが個人的意見です。
    
    例えば表題作品「堪忍箱」。悪くない。何でもないたったひとつの
    「もの」の周りに人がいる。普通だったら渦中にある、堪忍箱の
    謎解きに主眼を置きそうなものだけれど、みゆきちゃんは箱の周りの
    人間の心に広がる漣を描いていく。箱は何だかよく分からないまま。
    最後に主人公にすら置き去りにされているような、不安感を覚えました。
    巧いんだけど…余韻もまあいいんだけど…やっぱり終わったあと
    すっきり気持ちいい!ってことにはならないなあ。
    
    他に「十六夜髑髏」。これはちっとも分からなかった。
    分かる気もするけど、え?何で?みたいなところもあって。
    
    「てんびんばかり」も本当に巧い。
    心の機微を上手に上手に浮かび上がらせている。
    でも、やっぱりさっぱりしないんだよねえ。
    誰も幸せになってないんじゃないか…そんな気がする。
    確かにその通りなんだと思うんですよ。
    人間塞翁が馬であって、最高に幸せ〜!で終わる小説って
    何だか嘘っぱちな気がしますよね。
    人間なんていつも幸せと不幸せがないまぜになってる、
    そんな状態にあるのがほんとなんだ、とは思うし、
    その意味でやっぱりみゆきちゃんって巧い、写実的!って思います。
    でもでもでも…エンターテイメントとしてはどーなのよ!?って
    そんなことも思っちゃうんですねえ…。巧いけど、うーん。って。
    わがままかなあ。わがままだよねえ。
    
    でも「敵持ち」みたいなのは、別にとってもハッピー!って
    終わり方ではなかったですが、何かほんのりと温かくなる、
    そして希望も見えている気がする…そんな感じで好きです。
    同様に「砂村新田」も何かよいものを予感させており、
    短編集の最後としては悪くない配列かと。
    
    
    
    
    菜の花の一押しキャラ…小坂井又四郎 宮部みゆき著作リスト よみもののきろくTOP
    020. 「顎十郎捕物帳」     久生十蘭
    2004.8.25 連作短編 678P 1940年初出、1998年5月発行 朝日新聞社 ★★★★★
    
    初めて読ませて頂きます、著者様でございます。
    でも…なかなかお古い御方の模様。
    何しろこの作品、連載がスタートしたのが昭和14年1月。
    「奇譚」という誌上のことだったようです。
    その後、昭和15年に連載外の作品と共に1冊にまとめられ、
    様々な出版社でどんどん校訂・改訂が重ねられていった模様。
    ざっとまとめると…
    
    昭和22年 鷺ノ宮版
    昭和16年 春陽堂版
    昭和26年 岩谷選書版
      同   春陽堂文庫版(著者、生前最後の改訂、ただし未完)
    昭和45年 全集版
    昭和57年 六興版
    昭和61年 創元版
    平成10年 朝日文庫版
    
    
    これだけたっぷり校訂・改訂されているってことは、相当の名作ですかね?
    でも聞いたことないけど…。菜の花が無知なのか?
    (あとで調べたら、やっぱりかなり有名だった!
     菜の花、まだまだだなあ…)
    しかしすごいですねえ。お亡くなりになったのが戦前です。
    それが今でも出版されてるとは。やはり相当の…。
    
    
    中身は短編集ですもので、1つ1つについては述べません。
    ちなみに全部で24編かな。かなり多い!
    というか、見よ、このページ数!普通の文庫の2倍以上あるぞ…。
    分厚くて重たい…文庫のくせに生意気な。
    
    主人公は仙波阿古十郎。裏表紙の紹介をそのまま引用しますと…
    
    古袷(ふるあわせ)に冷飯草履(ひやめしぞうり)、はげちょろ鞘の
    両刀をこじりさがりに落とし込み、ヘチマなりの顎をぶらさげ
    ぼんやり間抜けな風情だが、謎解きにかけては江戸随一。
    難解な怪事件を解く鮮やかな手腕に奉行所同心も顔色なし。
    噂の顎十郎が大活躍する、捕物小説史上に名高い傑作。
    
    だそうですよ。そうなんですか。
    ちなみに主人公の身分は途中で変わります。
    最初は下っ端のお役人でしたが、途中で落ちぶれて(?)駕篭かきに。
    なかなか面白い人ではあります。特に顔が。顎が異常に長い。らしい。
    
    
    評価です。文体は、もはや現代人ではない。な。さすがに。
    説明調の長台詞も多いです。絶対、そんな会話しないぞ!みたいな。
    ってか、話しすぎだろ、キミたち、って(笑)
    でも悪くないな。一言で言えば、講談調。
    調子がよろしい。とんとんとん、という感じ。
    時代が時代ですし、探偵講談なんかでやられていても
    ちっともおかしくない作品ですね。
    
    捕物帳ですので、推理系統についても。
    作品によっては納得いかないものもあります。
    特に、顎十郎がしくじりをやらかして、
    北番所の例繰方(れいくりかた)をやめることになった事件。
    これは…ちっとも分からない。は?どうして?何がどうなった?
    という感じで、途方に暮れてしまいました。
    逆に、おおなるほど!と膝を打つ作品もあります。
    玉石混淆ですねえ。
    でも、やっぱり「すべてのヒントを先に読者に提出する」
    という努力がないものも多いので、推理小説としては
    何だかかつがれたみたいな風になるものもあります。
    ま、いいけどさ。ちなみに顎十郎のモデルは
    シラノ・ド・ベルジュラックだそうです。
    …誰?すみません、知識なくって。
    
    
    しかしさすがに時代が変わっても、
    もっと古い時代を描いているだけあって
    みゆきちゃんとあんまり変わらないなあ…背景が。
    当たり前か。同じ時代を描いてるんだもんな。
    何か変な感じ。
    でも、表現方法などはやっぱり時代を反映しているのかなあと
    何となく思ったのでした。
    
    
    
    
    菜の花の一押しキャラ…三津五郎 よみもののきろくTOP
    021. 「殺人を呼んだ本−わたしの図書館−」     赤川次郎
    2004.8.26 連作短編 339P 1991年初出、1996年3月発行 角川書店 ★★★★★
    
    またまた、初めましての作家さんです。
    
    赤川次郎。
    
    この名前を知らない人は…
    いるかもしれないけど、多分あんまりいないだろう。
    確か、菜の花が中学生くらいの頃、
    やたら流行っていた記憶があります。
    いや、小学生だっただろうか。
    三毛猫シリーズは何故か知らないけど、
    女の子の間でとにかくすごい人気でした。
    ちょっと気のきいた女の子なら、みんな読んでる。そんな感じ。
    
    当時、菜の花は自他共に認める文学少女でした。
    図書館にこもる小学生。はっきり言って変人だ。
    …違う。文学少女だってば。ほんとだってば。
    
    小学生・菜の花の愛読書はこども世界文学全集から始まり、
    ホームズ、ルパンの外国小説に続き、途中(何故か)落語にはまり、
    続いて科学、日本史、日本の古典文学と不思議な経緯を辿りましたが、
    最終的には「古事記」や「土佐日記」を読んではほくそえむ、
    相当いっちゃったキャラに…
    
    いや、だから違う、王道文学少女だってば。このネタしつこいな。
    まあ、いいや。
    
    とにかく。
    そんな菜の花(文学少女)にとって、赤川次郎とかいう奴は
    とんでもなくミーハーな、綿菓子みたいに軽い存在でありました。
    
    何だよ?え?赤川次郎?
    はん、そんなの女子供じゃあるまいし、読んでられっかよ!
    ってなもんです。いや、まさに女子供だったけどさ。
    
    まあ、前置きが長くなりましたが、結局言いたかったのはね、
    
    赤川次郎、初読み!
    
    そんだけなんです。てへ☆
    
    
    さて、作品紹介をば。
    主人公は松永三記子、19歳。とっても元気な女の子。
    住み込みで勤めることになった「私立野々宮図書館」を訪れるところから
    物語は始まる。金持ちの道楽で作られたこの図書館は、一風変わっている。
    所蔵されている本が、どれも犯罪や事件に関係のあったものばかり。
    殺人現場で被害者が抱いていた本や、連続殺人犯が愛読していた本、
    首吊り自殺の踏み台として使われた本など…。
    人間の愛憎が乗り移ったのか、この図書館、色んなものが「出る」。
    本にまつわる奇妙な出来事を、三記子と、そのボーイフレンド好男、
    野々宮家の弁護士・田所が立ち向かう(?)、連作短編集。
    
    
    そんなところで。
    評価。軽いですね。さすがに。
    そりゃ小中学生の頃に流行ったものですものね。
    誰でも読めるってことだわね。
    だからといって、内容までそんなに子供向けでもありません。
    思ったよりは。もっと子供だましかと思っていたけれど、
    軽いだけで別に文章が稚拙な訳でもなんでもないのです。
    全然、普通。いたってまとも。可もなく不可もなく。
    いや、むしろ読みやすいという美徳がある。
    無駄に重々しくない。つまり気取っていない。それはよいこと。
    文の構造はしっかりしていて、その辺の頭の軽い小説とは
    一線を画していますね。真面目に、文学してるじゃん!という感じ。
    
    
    分類はミステリ風。ただし本格ではありません。
    
    
    着眼点は大変面白い。犯罪に関係した本の図書館。
    その「本」が事件を引き起こす。
    何と面白そうな、と聞いただけでどきどきする。
    さすが売れっ子。この辺が非凡です。
    
    作中、幽霊がいたるところに登場するが、
    結局犯罪自体には関わらない(死者が生者を傷つけない)という
    一貫したポリシーにも非常に好感が持てる。
    真面目に事件に取り組もう、という著者の姿勢が見て取れます。
    
    しかし、全く推理というものはまったくありません。
    まあ別に、探偵じゃあるまいし、
    すらすら事件を解けとは言いませんが、
    これはちょっとキャラクター達、考えなさすぎじゃない?
    というか、そのうち殺されますよ…この人たち(- -;)。
    運良く皆様、石頭だから助かってるものの、
    このたった300ページ強の間に一体何回、殴られましたかね?
    普通の人ならとっくに死んでいそうです(笑)。
    なのに、事件の方から勝手に都合よく解決していく。
    って、何だか居心地悪いです。推理小説の読みすぎか?
    
    
    まあ、総合評価。着想のよさに、ざぶとん一枚。★3つで。
    
    
    
    
    菜の花の一押しキャラ…直木さをり よみもののきろくTOP
    022. 「陰陽師 鳳凰ノ巻」     夢枕獏
    2004.8.27 連作短編 251P 2000年6月発行 文藝春秋 ★★★★★
    
    さて、陰陽師第2弾です。でも4作目です。
    前回は2作目の「飛天ノ巻」を拝読させて頂きました。
    今回こそは第1作を読みたかったのですが、
    いかんせん、公共図書館から貸借の身でございますれば、
    ないものはない、と。そのような次第で。
    でも大丈夫!今度はちゃんと予約してきたので、必ず手に入るはずです。
    ちなみに、第3作も飛ばしていきなり第4作になったのは…
    単なるミスです。今回はちゃんと第3作・第4作を借りてきたのですが
    間違えて第4作の方から読みました。てへ☆
    
    
    どんな話なのか?から、まずは。
    ええと、大体の話は第2作の方でも紹介してますので、もういいでしょう。
    平安時代の凄腕陰陽師・安倍清明と、親友で雅楽の天才・源博雅が
    心霊関係(!?)の事件に挑むお話です。
    
    鳳凰ノ巻の収録作品は以下の通り。
    
    
      ●泰山府君祭
    	帝から、智興内供を蘇らせるために
    	泰山府君の祭をせよと清明に勅が下る。
    	蘇生などは理に反すると相手にしない清明。
    	しかし、智興内供の様子を聞き、
    	内供が死んでいないのではないかと
    	博雅とともに訪ねることにした。
    
    
      ●青鬼の背に乗りたる男の譚
    	鴨直平の離縁した妻が奇行を行なうという。
    	気になった直平は彼女をおとなったが
    	すでに死んでいた。しかしこの遺体、
    	40日が過ぎても腐らず、夜な夜な
    	恨み言を言うらしい。恐れをなした
    	直平は、清明に助けを求める。
    
    
      ●月見草
    	文章博士であった故・大江朝綱の、
    	すっかり荒れ果てた屋敷で、文章好みの輩が
    	酒を飲んで漢詩論議を愉しんでいた。
    	そこへ朝綱の縁者という、不思議な女が
    	現れ、歌を判じて欲しいと申し出る。
    	その歌は一体どんな意味が込められているのか?
    	
    
      ●漢神道士
    	藤原為輔が博雅に助けを求めた。夜になると老人が
    	枕元に現れ、為輔の手を引いて外に連れ出し、
    	焼けた鉄柱に抱きつかせるのだという。
    	そして実際、日毎に彼の身体に火傷が現れてくる。
    	思い込みでもそれは身体に現れる。
    	呪にはそのような力があると清明は言う。
    
    
      ●手をひく人
    	竹取の猿重の元に、夜中おとなう男がいた。
    	男は猿重の手をひいて、橋から飛び降りようとするが
    	危ういところで猿重は妻に助けられる。
    	ところが次の夜は女が現れ、今度は猿重の妻の手をひき
    	橋のたもとまで連れていく。猿重はその身を救った。
    	一体、この男女は何が目的なのか?
    
    
      ●髑髏譚
    	最照寺の忍覚和尚が恐ろしい夢を見たという。
    	今は亡き同輩や恩師が死んでも責め苦に合うという
    	夢であった。しかも目が覚めるとその床下に
    	恩師の髑髏が転がり込んできていたのだ…。
    
    
      ●清明、道満と覆物の中身を占うこと
    	当代随一の陰陽師は誰か?
    	帝の御前で安倍清明と葦屋道満が
    	術を競い合い、覆物の中身を当てるという
    	勝負をすることになった!
    	
    
    評価の方へ進みますか。文章。前回とあんまり変わらず。
    もはや、自分の中で完成してしまっているのですね、
    この著者は。多分、何作書いても同じなんだろうなあ。
    安定感があっていいのかも。
    
    すっかり定型と化している。それもまた、水戸黄門みたいで
    よいのかもしれない。あれはエンターテイメントの
    ひとつの完成形だと菜の花は個人的には思うのです。
    実際の事件への取り組みが始まる前
    (つまり解決編に移行する直前)に必ず
    
    「「ゆこう」
     「ゆこう」
     そういうことになった。」
    
    という文章が入るんですが、これもまた好きだったりするのです。
    まさに定型。まさに水戸黄門。…または暴れん坊将軍でも可。
    
    本題と関係があるのかないのか分からない前振りも
    (全然関係ないこともあるが、とても密接な関係にある場合もある)
    実は相当好きだったりしちゃうんだよね。
    この平和さが好き。この前振り部分は必ず
    季節の話題でスタートし、清明宅の濡れ縁で清明と博雅が
    酒を飲んで話しているという、これまた定型。
    よくこれだけ書いて、飽きないわねえとも言えなくもない。
    だが、人間とはそういうものなのだ!(笑)
    
    
    
    
    菜の花の一押しキャラ…源博雅 よみもののきろくTOP
    023. 「図書館経営論-図書館情報学の基礎2」     宮沢厚雄
    2004.8.27 教科書 116P 2002年6月発行 勉誠出版 ★★★★
    
    またまた教科書です。
    
    突然ですがこれ、面白いです。
    かつ、かなり勉強になりました。
    
    これまでに読んだ、どの図書館学の本よりもよかったです。
    まず、文章に無駄がない。これ、すごい。
    今までの図書館学の教科書って、何だかすごくものものしい表現とか
    
    「ひえー、なんじゃこりゃ?」
    
    とうちのS助手(物理学で博士取ってるよーな人種)に言わしめる、
    とんでもないものばかりだったんですが、これなら助手さんでも
    読めるんじゃないかと菜の花は思うのです。
    
    普通の図書館学の教科書って、何しろ書いてるのが
    文章は専門だとでも思ってるらしい先生方ばっかりだったので
    (でもやっぱりうちの助手であるM氏に言わせると、
    文学部とかの先生ってのは小説家とか詩人のなり損ねであって
    文才がある人では決してないのだ、ということになる)
    やっぱり文章が何ていうかねえ、何かインテリっていうか、
    すごく不自然に偉そう。
    …って言ってる菜の花が一番偉そうか?たはは。
    でもね、、、
    
    俺はこんなすごい文章が書けるんだぜい!
    見てみろよ、分かるか、この美学が!
    
    …とでも言いたげな文章が多いのが、今まで文系の人が書いた
    教科書が気に入らなかった理由さ!無駄にひねくれて長い文章。
    でもこの教科書は無駄がないんだ!比較的、平易だし。
    さすが、経営論。経済学だわね。
    無駄を省くことこそ経済学の真髄。
    
    というわけで、結構おすすめ。
    図書館学を志す方でも「図書館経営なんて興味ないぜ!」
    という人はいらっしゃると思うんですが、そんなこと言わないで
    是非読んでみて下され、と言いたいさ!
    でも図書館学に興味のない人は聞き流して下さいまし。
    はいな。
    
    
    
    
    
    
    024. 「封印再度-Who inside」     森博嗣
    2004.8.29 長編 400P 1997年4月発行 講談社 ★★★★★
    
    さて、森博嗣第2弾です。拝読としては3作目。
    そしてシリーズとしては…ええと5作目ですね。
    今までの拝読は1作目「すべてがFになる」と
    2作目「冷たい密室と博士たち」であります。
    3・4作目を未読である理由は、陰陽師と同じ理由です。
    図書館にないんだ!誰かが借りてるんだ!
    仕方ないからこれら2冊も予約済み。
    次に来館するときには手に入るかも。
    
    
    では、この作品の概要を。
    S&Mシリーズ…犀川創平と西之園萌絵のペアの第5作。
    内容の紹介はめんどいからまたカバーの見返しにあるのをそのまま引用。
    
    岐阜県恵那市の旧家、香山家には代々伝わる家宝があった。
    その名は「天地の瓢(こひょう)」と「無我の匣(はこ)」。
    「無我の匣」には鍵がかけられており、「天地の瓢」には
    鍵が入っている。ただし、鍵は「瓢」の口よりも大きく、
    取り出すことが出来ないのだ。五十年前の香山家の当主は、
    鍵を「瓢」の中に入れ、息子に残して自殺したという。
    果たして、「匣」を開けることが出来るのか?
    興味を持って香山家を訪れた西之園萌絵だが、
    そこにはさらに不思議な事件が待ち受けていた!
    
    ということだそうです。今回はあんまり派手じゃないね。
    所詮、知恵の輪的パズルか?くらいな感じ?
    でも、まあちゃんと密室出てきます。
    みんな困ってしまっておりましたよ、キャラさんたち。
    
    
    しかし、今回は実験室を離れ、学外に出た割に
    推理ネタとしてはとっても理系でした。
    これはふつーの人じゃあ分からんだろーよ、おいおい、
    どころか、マジでそれって出来るんですか、先生!?
    と聞きたくなっちゃったんですけど…出来るんですか?
    (これ、実際ファンイベントで試したらしいです。
     結果として、実際に可能だということが証明されたとか。)
    
    全体としては中だるみ的な部分も多く、
    事件の進展も遅いし、トリック(?)もあんまり気に入らず。
    しかし、この萌絵って人物、菜の花的には相当、嫌いです。
    今回も「嫌い度」を更に向上させてくれました。
    うーん、どうしてこんなに好きになれないかなあ。
    こういうキャラがいるのは別にいいんですけどねえ。
    でも何か気に入らないんだよなあ…
    この子、理系にはやっぱりいないタイプですよ。
    第2作の解説者さんも言ってましたけどね。
    
    
    しかしやはり見るべきところは国枝桃子助手でしょう!
    一貫して、この人は大好きです。
    今回もしっかり笑わせて頂きました。
    いや、面白い、って大笑いするんじゃないんですよ、
    このキャラは。にやり、と思わずほくそえんじゃうのです。
    いいなあ、この人。
    でも絶対に主人公にはなって欲しくないですね。
    こんな主人公はいやだー。ちらっと出てきてちらっと見せるから
    このキャラは生きるんです、はい。
    
    
    国枝桃子助手大好きさんは、是非探して下さい、
    彼女の活躍(?)を。
    
    
    
    
    菜の花の一押しキャラ…国枝桃子助手 (萌絵に出したメールがよかった!) よみもののきろくTOP 森博嗣の著作リスト
    025. 「陰陽師 付喪神ノ巻」     夢枕獏
    2004.8.30 連作短編 317P 1997年11月発行 文藝春秋 ★★★★★
    
    さて、またまた陰陽師です。シリーズ3作目です。
    これまでの拝読分は
    第2作「飛天ノ巻」と
    第4作「鳳凰ノ巻」です。
    真ん中が抜けちゃったのは前回も申し上げました通り、
    単に読む順番を間違えただけです。寝ぼけてたんだよー(- -;)。
    
    
    どんな話なのか?はもう3回目だし、そろそろいいでしょう。
    平安時代の凄腕陰陽師・安倍清明と、親友で雅楽の天才・源博雅の
    お気楽極楽な飲み話です(嘘です)。
    
    付喪神ノ巻の収録作品は以下の通り。
    
    
      ●瓜仙人
    	近頃、都で怪異がある…。
    	帝のお遣いからの帰り道、博雅は
    	随身たちのそんな噂話に耳を傾けていた。
    	そこへ現れた不思議な翁。
    	博雅に瓜を渡し、清明への言伝を頼んできた。
    	都の怪異と翁には何か関係があるのか?
    	
    	<一言感想>
    	珍しくあんまり命のやり取りに関係ないお話。
    
    
      ●鉄輪(かなわ)
    	白装束に素足、唇に釘をくわえ、
    	人の名を墨書きした木の人形と鉄の鎚を持った女が
    	夜毎、貴船神社に通ってくる。あまりの恐ろしさに
    	神社の男は女に、嘘の満願を告げた…。
    	しかし呪いにかけられた藤原為良が
    	呪いの通りに寝込んでしまった!
    
    	<一言感想>
    	博雅、結構活躍…ってゆーか、最初にしくじったのは
    	博雅って説もありますが…でもかっこいいぞ!博雅。
    
    
      ●這う鬼
    	開けてはいけない箱の中に、恐ろしいものが
    	入っていた…。それは人体の一部。
    	贈られた貴子は、清明に助けを求める。
    	しかし、清明の目の前で貴子に怪異が…。
    
    	<一言感想>	
    	贈られたものってのが、相当怖いんですが(- -;)。
    
    
      ●迷神(まどわしがみ)
    	仲睦まじい夫婦がいた。
    	しかし夫が亡くなり妻は泣き暮らした。
    	そして彼女はしてはならないことをした。
    	蘆屋道満に反魂の術を施してもらったのだ。
    	しかし彼女は最後の一歩が踏み出せない…。
    
    	<一言感想>
    	最初の「美」談義がとても好き。
    	何だか他人が書いたような気がしないくらい。
    	微妙な人の心をうまく描き出している良作。
    	まあ、心愉しい話ではないですが。
    
    
      ●ものや思ふと…
    	天徳4年(九六〇)の春−歴史的な歌合が催された。
    	二八名の女房達が左右に分かれた二〇番勝負。
    	壬生忠見の歌は、最後の対決で惜しくも破れた。
    	半月後、忠見は食わずの病で亡くなった。
    	以後、宮中にこの忠見の霊が出るという。
    
    	<一言感想>
    	これも「呪」談義がとても好き。
    
    
      ●打臥の巫女
    	打臥の巫女は大変に美しい女子で、
    	占いをよくすると評判だという。
    	藤原道長の父・兼家も打臥の巫女を気に入り、
    	この占いによって出世したという噂である。
    	その巫女があるとき、「瓜」とだけ占じた。
    	判じかねた兼家は、清明に相談を持ちかける。
    
    	<一言感想>
    	事件解決後?の清明と博雅の会話が素敵。
    	いいなあ、いい2人組だ。
    
    
      ●血吸い女房
    	都はしばらく雨に恵まれなかった。
    	藤原師尹は奇を衒ったやり方で雨乞いをしてみせたという。
    	この師尹の女房達が、夜中に次々と血を吸われるという
    	怪異が起こった!清明と博雅は師尹の屋敷に向かう。
    	
    	<一言感想>
    	雨乞いと怪異をうまく組み合わせている。
    
    
    今回は頑張って個々の感想も一言ずつ、つけてみました。
    こんなことに頑張ってる場合じゃないんだが…(^ ^;)。
    
    さて、文章のこと。何か、2作目・4作目と趣の違う作りも
    見かけられましたぞ。ということは何か。
    4作目で定型に入ったというのは突然か。
    なんだそりゃ。でもこれもまた一興(謎)。
    
    
    いつもながら清明と博雅の談義はとても好ましいです。
    何というかねえ、ほんとに菜の花がいつも思ってる通りに
    彼らはしゃべってるんですよ。
    うーん、ネタ取られた!って感じ。
    やっぱりどうにも近しいものを感じてしまう、
    夢枕獏氏なのでありました。そういえば名前も…。
    菜の花は、イラストや詩を書くときに必ず、
    水色か薄紫色で押印するんですが、
    それが「夢」ってはんこなんですよ。
    好きなんだよね、この字。
    何だか、司馬遼太郎なみに浅からぬ縁を感じるなあ。
    (司馬遼太郎と菜の花の縁はこちらを参照のこと。)
    
    
    
    
    菜の花の一押しキャラ…源博雅 (葉双を吹くときの彼は、最高!) よみもののきろくTOP
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