よみもののきろく

(2009年8月…566-569) 中段は20字紹介。価格は本体価格(税別)。 もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  もっと新しい記録
566. 「鉱物と宝石の魅力 つくられかたから性質の違い、日本で取れる鉱物まで」     松原聡・宮脇律郎
2009.08.07 一般書 230P 952円 2007年9月発行 ソフトバンク
(サイエンス・アイ新書)
★★★★★
鉱物の基本的な知識と性質から鉱物図鑑まで


【100字紹介】
 雲母や石英など中学校で学ぶ鉱物、石膏などの工業用として使われる鉱物、
 金やルビーなど装飾品として使われる鉱物…様々な鉱物のできかたから
 それぞれの性質をカラー写真入りで解説。
 著者の鉱物への愛が詰まった1冊


表紙からして、美しい本です。
中央にある写真は「藍銅鉱」。
右側には「自然金」「硫砒鉄鉱」「ばら輝石」。
左側には「ルチル」「自然硫黄」「孔雀石」。
(多分…。どこにも表紙写真についての記述を見つけられず。)
ひょいと裏を向けると「鉱物の魅力に目と心をときめかそう!」の文字。
カラー写真満載で、ぱらぱらっとめくるだけで、
めくるめく鉱物の世界へ、レッツ・ダイブ!という感じ。

4章構成で、「第1章 鉱物が生まれるまで」でまず、
「鉱物って何?」というような、鉱物の基本的知識を説明します。
鉱物の定義、鉱物のできかたなど。
この章は入門編。とても簡単に、初心者を鉱物の世界へ導入します。
読んで楽しい章です。

「第2章 鉱物の性質」では鉱物の成分や結晶構造、
見た目(色や質感)のことや、物理的特性などを、
第1章よりもずっと専門的に解説します。
これ、いきなりステップアップでして…、
菜の花のような中途半端な知識の持ち主程度では、
途中で振り落とされそうになりました。危ない危ない。

が、「第3章 日本でどんな鉱物がとれるか」では、
危ないどころではなく、完全に振り落とされました…。
一般には殆ど知られていないものの、日本は鉱物の宝庫なのだそうです。
世界でとれる鉱物の4分の1がとれてしまうのですね。
こんな小さな国土で。それについての解説なのですが…解説なのですが…、
ああ、菜の花にはお手上げでした。文字を追いかけるだけで精一杯。

「第4章 いろいろな鉱物」は、図鑑です。
約80種類の鉱物について、1種類につき半ページ〜3ページくらいを割き、
英名、化学式、結晶系、色、光沢、硬度、条痕、劈開、比重などの基本情報と、
写真と解説文を掲載。通読するのも面白いですが、
どちらかというと、ぱらぱらとめくって興味あるものを拾い読みしたり、
実際に物を持ってきてあれこれ似たものを探してみる、という方が
似合っていそうな気がします。菜の花はもちろん、通読したわけですが…、
色とりどりで面白そうではあるものの、なかなか厳しかったです。
いや、ここで「うわ、面白すぎる!」と思うか否かが、
鉱物マニアと一般人の分水嶺なのかもしれませんが…。


とりあえず、菜の花は鉱物マニアにはなれないかも、と思いつつ、
この本は綺麗だなーと眺めていたくなる感じでした。


テーマ : 鉱物
語り口 : 教科書〜エッセイ的
ジャンル : 一般書
対 象 : 一般〜鉱物好き向け
雰囲気 : 後半は図鑑として手元に。

文章・展開 : ★★★★★
簡 潔 性 : ★★★★★
学 術 性 : ★★★+
独 自 性 : ★★★★+
読 後 感 : ★★+★★

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP
567. 「人類は衰退しました」     田中 ロミオ
2009.08.09 ライトノベル 259P 571円 2007年5月発行 小学館
(ガガガ文庫)
★★★★★
新人類は「妖精さん」。ファンタジーラノベ


【100字紹介】
 人類は緩やかに衰退、地球は新しい人類「妖精さん」のものに。
 平均身長10cmで3頭身、高い知能をもち、お菓子が大好きな彼らと
 人との間を取り持つのが調停官。
 新米少女調停官と妖精さんのコミカル・ファンタジー


可愛らしい絵柄に、コミカルな文章、ほのぼの雰囲気の中にも
ちょっとブラック・ユーモアを混ぜたファンタジー系ライトノベルです。

舞台としては、人類が数世紀をかけてゆっくりと衰退し、
科学技術も失われていく…という未来?
人口は減り続け、主人公は教育機関の最後の卒業生。
そんな人類=旧人類が消えていく地球を闊歩するのが
新人類の「妖精さん」なのですが、
この「妖精さん」は人間の前にあまり姿を現しません。
それどころか生き物としても色々と謎。
生きるために食べる必要がないらしい、とか、
定住しないし、常日頃から集団生活をしていないとか、
人語は解するもののその話し方はたどたどしいとか、
争いをするという習慣も考え方も無いとか。
とても不思議で、主人公を含めた我々から見ると、
何ともでたらめなことばかりの「妖精さん」と、
交流を試みる(試みないといけない職業の)主人公。

ちなみに主人公は女の子ですが、名前不明。
全体に、固有名詞が殆ど出てきません。
でも人が出てこないわけではなく、ちゃんと会話は交わされます。
「調停官」である主人公の上司は彼女の祖父ですが、
祖父の名前も不明ですし、祖父も主人公を名前で呼ばないため、
主人公の名前も不明というわけ。
なかなか高度です、これ。
これは、著者の主な仕事に影響している気がします。
著者はゲームのシナリオライターとして有名なのですよね。
ゲームの場合は、キャラの名前を出さないとか、よくやる手法だと思います。
プレイヤー自身が主人公に浸れるからとか、
主人公の名前をプレイヤーに付けさせる場合は、
フルボイスにするようなときに名前が呼べないので困るからとか、
色々な必要性があってかと。

著者がゲームのシナリオライターであることは、
これ以外にも全編に渡って感じられます。
文章が、一般的な小説ではないのです。
シナリオあるゲームをしているか、サウンドノベルを見ているかのような、
そういう文章です。それはどんなもの?と言われると悩んでしまいますが…、
ひとつひとつの文の独立性が高く、全体のリズム感よりも、
一度で表示される文での完結性がある…感じでしょうか。
読みやすい、といえば読みやすいですね。
慣れの問題でしょうか。
菜の花は…うーん、決してキライではないですが、
紙で読むにはちょっと違うなあと、違和感がぬぐえません。
ゲームを小説化したらこうなるかも。

内容は絵本のよう。何かをパロディ化しているような気もしますが、
元ネタが分からないので何とも。
知っている人には思わず「あ、なるほど」かもしれません。

ファンタジックでありつつ、ブラックでもあり、
子供向けでもなく、でも適度に(良い意味で)ぐだぐだしていて、
気楽に読める、まさに「ライトノベル」です。


菜の花の一押しキャラ…祖父 『みなさんの、まごころでうごいています』(妖精さん(パイロット))
主人公 : わたし(名前不明)
語り口 : 1人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : コミカル、ファンタジー
結 末 : ゆるやかに続く
イラスト : 山崎 透

文章・描写 : ★★+★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★+
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP
568. 「少年陰陽師 彼方のときを見はるかせ」     結城 光流
2009.8.12 ライトノベル 253P 476円 2009年2月発行 角川ビーンズ文庫 ★★★★★
安倍晴明の孫昌浩の活躍!シリーズ第25巻


【100字紹介】
 時は平安。稀代の陰陽師・安倍晴明の末の孫である
 14歳の陰陽師・昌浩の成長物語シリーズ。
 地御柱を覆う邪念を断ち切ろうとする昌浩は、
 意外な「本当の敵」に出会う。
 伊勢の地で繰り広げられる玉依編第5弾の完結作


シリーズ第25巻です。「玉依編」の第5巻。完結編。
前巻から眠りっぱなしの昌浩がようやく復活して戦います!

本巻のキーフレーズは、本編の前1ページを使ったこのことば。

「たとえ。
 その心に、私が欠片もいなくとも。」


今回の「玉依編」は心の傷がテーマでしたが、
昌浩も彰子も、そして斎も、その他のキャラたちも。
沢山の人が救われたのでは?な巻でした。
結局、まずは気付くところから、なんだなあというのが、
教訓、でしょうか。

入りくんでいるように見えたストーリーの謎解き(?)もされ、
解きほぐされてみると、あ、どうしてそんな簡単なことに
気付かなかったかなーとも思わなくも…。
読みが甘いです。が、その分楽しめるということで。
いつまでも初心者な読者でいる方が楽しいですよね。
純粋に物語の中に浸れて…。


何だか色々ありましたが、うまく着地できてよかったです。
そして、気付いてみるとこのシリーズも安定感が増したなあと。
文章も、ストーリーも、ストーリテリングも、です。
今後もちゃんと追いかける予定です。


菜の花の一押しキャラ…榎 ャ斎 「お前はこれからも、何度も傷つくだろうし、何度も絶望するかもいれない。   それが人生というやつだからな。」                    逆を言えば、傷つかず、絶望もしない人生など、ありはしない。        「それでもな…生きていれば、諦めなければ、何度でもやり直しはきくんだよ」 (榎 ャ斎) それがなかなか、難しい。
主人公 : 安倍 昌浩
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 歴史オカルト
結 末 : 一応、完結
イラスト : あさぎ桜
デザイン : micro fish

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
結城光流の著作リスト よみもののきろくTOP
569. 「狼と香辛料 II」     支倉 凍砂
2009.08.28 ライトノベル 387P 630円 2006年6月発行 アスキー・メディアワークス
(電撃文庫)
★★★+
行商人ロレンスと賢狼ホロの駆引と商売の旅


【100字紹介】
 二人旅の行商人ロレンスと賢狼ホロは、
 港町パッツィオでの銀貨騒動で儲けた胡椒を武器に交換し、
 北の教会都市リュビンハイゲンで大きな商売を仕掛けるが…。
 商売と駆け引きがエキサイティングなライトノベル第2巻。


第12回電撃小説大賞(2005年)の銀賞受賞作品の続編です。

中世ヨーロッパ風の世界を舞台に、剣や魔法では戦わない主人公が旅します。
行商人である主人公・ロレンスは日々、お金をめぐって戦っているわけですが。
必ずしも正義を振りかざさない主人公ながら、
同行人のホロに言わせれば、「お人好し」。
で、ついつい茨の道に近い方に踏み込んでしまうこともありつつ、
実戦となるとからっきしで、ホロがいなかったらすでに死んでいそうです。

第2巻では、タイトル通り「香辛料」で儲けて、
更に大きな商売を仕掛けにいきますが…哀れロレンス、失脚。
商人としての命も危うくなる一世一代の大ピンチに陥ります。
やったー!と思ったら一転して突き落とされ、
這い上がれると思ったらやっぱり裏切られ…、というような、
七転び八起きといいますが、波乱万丈といいますか…、
そんな内容になっています。

こういう受賞作品の場合、第1作はコンテスト応募作品のため、
一冊にすべてを凝縮したような感じになっていて、
第2作から著者の今後が占えるようになる、というのが一般的ですが、
やはり第1作とはかなり趣が異なっているように思いました。
ええ、前作は「詰め込んだ感」が強くて、
ついていくのが大変でしたからね。
今回は、大分落ち着いた感じに見えました。
何となく薄くなった、とも言えるかもしれませんが…、
どちらかというとそれいうよりも、無駄というか、
装飾的についていた部分がそぎ落とされて、スマートになり、
すっきりしてきたという方が当たりだと思います、ええ。

ますますこれからが楽しみですねー。


菜の花の一押しキャラ…ロレンス 「わっちゃあヨイツの賢狼ホロじゃ。若造の傲慢さくらい軽く許すことができる…」(ホロ)
主人公 : ロレンス
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 中世ヨーロッパ
結 末 : まあハッピーエンド
イラスト : 文倉 十
カバーデザイン : 暁印刷
装丁者 : 荻窪 裕司(META+MANIERA)

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★+
よみもののきろくTOP
もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  もっと新しい記録