よみもののきろく

(2009年4月…547-550) 中段は20字紹介。価格は本体価格(税別)。 もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  もっと新しい記録
547. 「EUを知るための12章 第2版」     パスカル・フォンテーヌ著
2009.04.05 ブックレット 71P -円 2009年2月第2版 駐日欧州委員会代表部 ★★★+★★
一般向けにEUを解説する導入書の邦訳版。


【100字紹介】
 欧州連合(EU)の目的、成り立ち、機能、成果、そして今後など、
 EUに関する知識の導入的役割を担う、欧州委員会発行の
 一般向け解説書2007年版を日本語翻訳した改訂版。
 日・EU関係の加筆として13章がある


 --オリジナル・データ-------------------
  Europe in 12 lessons
  ©European Communities, 2007-2009
 ---------------------------------------

欧州連合(EU)の駐日欧州委員会代表部による翻訳小冊子です。
オンラインでもPDFで全文無料DLできます。

EUって何の略だっけー?くらい、世間知らずな菜の花に
(すみません、一般教養が欠如した輩で)、
EUってこんなものだー!と教えてくれる凄い本です。
タイトルは「12章」ですが、それはEUの欧州委員会が発行した原文のことで、
本書自体は日本語に翻訳される際に、日本向けに加筆・修正されて
13章構成になっています。加わった第13章は「日本と欧州の関係」です。

目次は下記。

 1.なぜ、欧州連合なのか
 2.歴史上の10大ステップ
 3.拡大と近隣政策
 4.欧州連合の仕組み
 5.欧州連合の政策
 6.単一市場
 7.経済通貨同盟とユーロ
 8.知識を基盤とした社会に向けて
 9.市民の欧州
10.自由・安全・司法
11.世界の中の欧州連合
12.欧州の将来
13.日本と欧州連合の関係

ほぼ、目次タイトルで何が書いてあるかは想像できるかと思います。
基本的には1章が4-6ページで構成されており、
それぞれの1ページ目は章タイトルと何だか綺麗な写真、
2ページ目の最初に色枠に囲まれた部分があってそこに
その章の概要が書かれています。
とりあえず拾い読みするには、そこだけを順に読んでもOK。
気になる部分は本文の小項目タイトルを読んで、
更に読みたい部分は全部読む、という形で効率よく斜め読みできるでしょう。

内容としては、広く浅く。
EU自身が発行していますので、基本的には悪いことは書いていません。
若干のマイナス部分の言及はありますが、
デメリットとまで言えることはさすがに明記がありません。
そもそも少ない紙幅で全体をカバーするために、
細かいことはカットして、ざっくりと書かれているから、
ということもありそうです。
EUの理想を中心に広報している感じです。
その目標とするところや、あり方の概要については、
簡潔で分かりやすくとりまとまっていると思います。
とりあえず、全体を眺めるには、ちょうどよいブックレットです。


テーマ : EU(欧州連合)
語り口 : PR
ジャンル : 解説書
対 象 : 一般向け
雰囲気 : PR誌

文章・展開 : ★★★★★
学 術 性 : ★★+★★
簡 潔 性 : ★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★+
よみもののきろくTOP
548. 「貴族探偵エドワード 記憶のゆりかご」     椹野 道流
2009.04.10 ライトノベル 224P 457円 2008年10月発行 角川ビーンズ文庫 ★★★★★
英国風ミステリアス・ストーリー第9巻

【100字紹介】
 地方領主の三男坊エドワードは、守り役シーヴァ、
 霊感少年トーヤとともにロンドラで探偵事務所を構えている。
 幽霊猫事件やシーヴァの兄の意外な特技、
 学生エドワードの最初の事件に4コマ漫画…と盛り沢山の短編集。


シリーズ第9巻です。
主人公は貴族のお坊ちゃんでありながら
パブリックスクール卒業後に趣味に走って私立探偵になったエドワード。
容姿端麗、頭脳明晰、家柄最高で三拍子揃っている、
気のいい、でも結構ワガママお坊ちゃん。
そんなエドワードを支える守り役の青年シーヴァ。
助手見習いで霊感をもつエドワードの元・後輩トーヤ。
エドワードの学生時代からの友人で発明家のアルヴィン。
アルヴィン宅に同居することになったクレメンス先輩。
それに彼らの住むロンドラ市警のプライス警部補と、
彼に命を救われた天涯孤独の少年マイカ。
などなどが織り成すシリーズの外伝的短編集です。
初出は大体、「The Sneaker」の増刊「The Beans」。
一部、書下ろしがあります。

最初に登場する「キトゥンズ・パニック!」は、
物語の初期の頃のお話。市場で幽霊猫と出会い、導かれたトーヤは、
うっかり事件の核心に大接近してしまいます。
最後は大団円なわけですが、よくよく考えてみると結構な犠牲が出ています…。
手放しで喜べない、少し悲しい気もするお話。

「兄と小鳥と下町で」では、シーヴァの兄・グレゴリー登場。
何だか既視感が…えーと、誰かさんのおにーさんのときも…。
意外な特技でほんわりとしたエピソードです。

「今だけ!王子様探偵エドワード」は第4巻(碧き湖底…)で出てきた、
エドワードの「成人の儀」のパーティー会場での事件。
探偵は、事件を解決するだけではなくプレゼンも大事!?

「記憶のゆりかご」は更にその夜のお話。
素敵な「タイムカプセル」は、兄弟愛の証です。
アトウッドさんのオチもなかなか…(笑)。
素敵なお誕生日で羨ましい限りです。

「マイカ・フロストの長い半日」は、ひょんなことから
事件に巻き込まれてしまったマイカとトーヤのお話。
プライス刑事、相変わらず親馬鹿(?)です。

「学生探偵エドワード」は書き下ろし。
学生時代のエドワードが最初に解決した事件を、
アルヴィン・ブルックが語ります。
エドワードとアルヴィンの友人になるきっかけでもあった事件です。
人間時代のマクファーソン先輩もちらっと登場して、
ちくちくっと「いいこと」を仰っています、はい。

あとがきのうしろに「キャラクターによる短編集のための座談会」
および「4こままんが ロンドラビックリ人間コンテスト」を収録。
普段大変な事件が多い中、ふんわりとキュートなお話と
イラストが詰め込まれた、お楽しみボックス的な短編集になっています。


菜の花の一押しキャラ…アルヴィン・ブルック 「僕が、君と友達になりたいからだ。これまではそのチャンスがなかったけれど、  これからの日々まで僕は失いたくない。だから…君を信じる。待っていてくれ」 (エドワード・H・グラッドストーン)
主人公 : エドワード・H・グラッドストーン
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト
雰囲気 : オカルト・ミステリ
結 末 : 1話完結
イラストレーション : ひだかなみ
デザイン : BELL’s

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★+
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★+

総合評価 : ★★★★★
椹野道流の著作リスト よみもののきろくTOP
549. 「太陽と異端者 フェンネル大陸真勇伝」     高里 椎奈
2009.04.14 長編 310P 950円 2008年12月発行 講談社ノベルス ★+★★★
海賊に嵐の果てに辿り着いたのは人喰いの島

【100字紹介】
 医師・イーターの強い誘いでグールの国を目指し、
 南海の孤島へ向かったフェンたち。
 海賊と嵐に襲われた船旅の末、
 辿り着いたのは「人喰いの島」だった。
 祖国を追われた元王女・フェンの冒険ファンタジー、新章第2巻

フェンネル大陸シリーズ、新シリーズ「真勇伝」第2巻です。
でも大陸とか言いつつ、舞台は南海の孤島へ向かいつつありますが。

新シリーズ開幕の前作では、フェン・テオ・サチが港町で、
これから船旅、というときに、強制的にリムナンテスの内乱に
巻き込まれてしまいました。
今作ではちゃんと船旅に出ました。おめでとう。
海賊に襲われるわ、嵐にあうわの大変な事態ではありますが。
彼らが向かったのは、グールの国があるというフィー・バーフュー。
グールについて知りたいフェンは、強い誘いをかけてきた
命の恩人でもある医師イーターとともに船上の人となりました。

しかし、フェン、テオ、サチ、イーター、
それにイーターの連れているギィは、ばらばらになってしまいます。
いや、正確に言えば、テオとサチは最初から最後まで一緒だったかも。
まあとにかく、それぞれがそれぞれの冒険をします。
さて、その結末は?

今回もやはり、ちょっと都合よすぎじゃないか!?という気も、
しなくもなかったですけれど、まとめちゃいました。
なかなか強引。
それよりも気になったのは、位置関係でしょうか。
読んでいて、ちっとも分からなくなりました。
誰が今、どこにいて、それは他の場所とどういう位置関係で…、
というのがかなり分かりにくいです。読解力不足かもしれませんが。
どうしてそこでそうなるか?も分からないところが幾つか。
ぼーっと読んでいると、話から振り落とされそうでした。
難しいです。

すべてを説明しない、というのはもちろん、まったく悪くは無いですが
(説明しすぎてマイナスのこともありますし、
 説明しないことが味になる作品も少なからず存在しますし)、
ちょっと流石に厳しいかな、と。


次回はまた、別の土地へ行きます。
今度はどんな冒険が待っているのでしょうか。


菜の花の一押しキャラ…サチ 「誰かに優しくするのは、世界に優しくするのと同じだ」(フェンベルク)
主人公 : フェンベルク
語り口 : 3人称
ジャンル : ファンタジー
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 王道ファンタジー
結 末 : まあハッピーエンド
イラスト : ミギー
ブックデザイン : 熊谷 博人・釜津 典之
カバーデザイン : 斉藤 昭 (Veia)
地図製作 : 白髭 徹

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★+★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★+★★

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP 高里椎奈の著作リスト
550. 「EUの知識 <第14版>」     藤井 良広
2009.04.30 一般書 242P 900円 2005年10月第14版 日本経済新聞社
(日経文庫)
★★★★
揺れ動くEUの現状とその歴史を平易に解説


【100字紹介】
 ユーロ導入、加盟国増加…「深化と拡大」を続けてきたEUは
 2005年、欧州憲法条約案の仏・蘭での国民投票での否決で、
 大きな曲がり角に。EUの仕組みや歴史、制度等の現状を、
 経済的視点も含めて丁寧に解説する


EU解説本です。
初心者でも安心な丁寧で平易な解説と、
実務者にも役立ちそうな(←菜の花による推定)現状解説が共存です。

2005年発行なので、そこそこ最近の内容まで収録。
発行時点(2005年)の最新情報である
「欧州憲法条約案の仏・蘭での国民投票での否決」(2005年7月)まで
しっかり取り込んでいます。
それどころか、思いっきり最初の「[I] 岐路に立つEU」52ページ分を
この内容で語るという大胆構成。
スタートからいきなり、こんな歴史でこんな構造で…と、
教科書チックに攻められたら、初心者の菜の花はあえなく撃沈、
だったかもしれません。
時事でこれだけの分量を語られる場合、
何となく初心者は「え!?分からない!」と
尻込みしたくなるような書き方が多いのですけれども(新聞の特集記事とか)、
とにかくEUに対する基礎知識が足りない人でも何とか読みこなせるように、
平易にこの時事を解説してくれます。
これは、読者の心をつかむ導入として、
かなりの成功をおさめているのではないでしょうか。
何となく、分かった気分になれるのですよねー、最初でいきなり。


14版だけあって全体の内容としてもこなれているようです。
EU全体の構造と、更に関連する直接EUではない機関にも触れていて、
EU世界全体をふんわりと包み込むように、読者の理解を助けてくれます。

初心者が広範なEUに対する基礎常識を仕入れるには、
かなりおすすめの一冊です。
中級者以上は最初の方から順に読み、これは知っているー、というところまできたら
そこで読みやめてもいいくらいの感じでしょうか。普通は逆ですよね、
ぱらぱらと最初を飛ばして、途中から読み始める感じになりそうなものですが。
新しい版が出るたびに、チェックする人のための構成でもあるのかもしれません。


テーマ : EU(欧州連合)
語り口 : 解説
ジャンル : 一般書
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 平易ながらも深め

文章・展開 : ★★★★
学 術 性 : ★★★+
簡 潔 性 : ★★★★
独 自 性 : ★★★+
読 後 感 : ★★★+

総合評価 : ★★★★
よみもののきろくTOP
もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  もっと新しい記録