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(2009年2月…532-539) 中段は20字紹介。価格は本体価格(税別)。 もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  もっと新しい記録
532. 「「10分刻み」ニッチタイム(すきま時間)超勉強法」     中島 孝志
2009.02.07 一般書 225P 1300円 2003年4月発行 講談社
ニューハードカバー
★★★+
短時間集中と、捨てる技術で高効率の勉強を


【100字紹介】
 成功人生を手にするために、お金に変わる、
 すればするほど得する、した分だけきちんと成果が出る、
 そんな勉強法を紹介する。
 必要かつ自分に合った勉強を、すきま時間を有効活用し、
 短く刻むことで集中して行なおう。


普通に生活しているときにふと、
「あ、この時間、もったいないな」と思うこと、ありませんか?
電車に乗っているときはもちろん、ちょっとした待ち時間、空き時間は、
あちこちに落ちているように感じます。
そういう時間はとても短くて、バラバラに存在しているから、
なかなか有効利用できないもの。
思わずぼーっと過ごしてしまったり、一瞬寝とく?程度。
そんな短い「ニッチタイム(すきま時間)」を生かして、
「お金になる」勉強をしませんか、というのが本書です。

ここでいう「勉強」は、ビジネスに役立つような
知識やスキルを学び取るというような意味。
学校での基礎知識習得や、生涯学習とは別物です。
だから「お金になる」という言葉が何度も登場します。
菜の花にとっての「勉強」とはこれまで、
研究と研究を行なうための知識と技術を得ることであって、
本書で言うような意味をあまり持っていなかったのでちょっと新鮮。
そうか、世間一般的には勉強とは、そういうものなのか、という感じです。
つまり、「勉強」をすることで「自分」の市場価値が上がる、ということ。
そういう自分への付加価値をつけられる良質な勉強を、
どれだけ効率よく行なうかというのが、ポイントというわけです。

鉄則は、裏表紙にも第一章冒頭にも登場しますがこんな感じ。

1.お金につながる勉強を
2.ニッチ勉強法で
3.10分で刻んで行なう

1は内容についての言及。自分のスキルを上げたり、
ビジネスや資金運用などに役立つ知識やノウハウを得られるものを選びましょう、
といったところでしょうか。

2は勉強法について。これがメインになります。
詳しくは以降の章で説明。
第二章では(無駄な情報や勉強の仕方の)捨て方、
第三章では、ニッチ勉強法の実例、
第四章では、速読…というか効率的な本からの情報収集法、
第五章では、ニッチ勉強法で行なう、英語勉強、
第六章では、休日を勉強に活用しよう、という感じ。

3については、何故そうするのかを第一章で説明。
10分刻みは3つの「自己マネジメント」だと言います。

 10分間の「時間マネジメント」
 集中の「メンタル・マネジメント」
 勉強の「習慣マネジメント」

それに10分間という短時間なら集中力ももつはずですし、
習慣化もしやすい、更には変化をつけることで飽きない。
そういうことのようです。確かに。

基本的には、とてつもなく画期的なことはないかもしれませんが
「ああ、そうだった」と「ああ、そうかもしれない」が沢山あって、
これからちょっと生かしてみようかな、が拾える可能性が高い作品です。

読書に関して、「大事なことは著者の知識を覚えることではなく、
あなたがなにを考えたか、思いついたか、発想したか、連想したかにあるのだ。」
というような指摘があり、ああそうだなーと思わず首肯しました。
著者の意図したことを汲み取らなかったとしても、
自分にとって価値ある情報を得られたとしたら、読書としては成功なのですね。
読む人によってこの本から汲み取る情報は、異なるものとなるでしょう。


テーマ : 社会人の勉強法
語り口 : 方法論
ジャンル : 一般書
対 象 : 社会人向け
雰囲気 : 明快
装 丁 : モリサキデザイン

文章・描写 : ★★★+
展開・結末 : ★★★★
簡 潔 性 : ★★★★
独 自 性 : ★★★★
読 後 感 : ★★★★

総合評価 : ★★★+
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533. 「レンタルマギカ 妖都の魔法使い」     三田 誠
2009.02.14 ライトノベル 358P 590円 2007年10月発行 角川書店
(スニーカー文庫)
★★★★★
ロンドンで出会った事件。シリーズ第11巻


【100字紹介】
 <アストラル>のメンバーは<協会>の審査を受けるためにロンドンへ。
 そこで待ち受けていたのは、白いインバネスの錬金術師による
 「魔法使い連続殺人事件」。
 ついに発動する影崎の力も見逃せない、シリーズ第11巻


オカルト系ライトノベル作品の第11巻。
第2部スタートの前作に引き続き、またも長編でお目見えです。

今回の舞台はついに海外進出。
第1章からいきなり英国はロンドンです。
しかもアストラルメンバー全員での出張!
でも海外はなかなか大変みたいですね。
特に、みかんの「禊ぎ」は土地にとても依存するので、
あまり強力にはいかないようです。

そんな中、「螺旋なる蛇(オピオン)」が暗躍しているようで…。
序章は、前回の続き。
吸血鬼が登場しています。しかも幹部連中も登場。
その中には前々作で召集されたフィンもいたり。
どうやら今回の敵は、すでにここから派遣済み…のようですが、
一体どんなやからなのか…。

今回は、白いインバネスのあの錬金術師と、ラピスも再登場です。
どこでどんな関係で登場するかは読んでのお楽しみ。
更にあの影崎さんが、ついにその力を見せます…。
これもお楽しみに、ですね。
あ、もうひとつサプライズな人物とその人と誰かの関係も明らかに。
何だか、いっぱい「え、そうなんだ!」を見せている巻かも。

そして、なかなかスカッとした活躍ができません。
そういうところが、「レンタルマギカ」らしさとすら
言ってもいいような気がしてきました。
そんな第11巻。まだまだ続きます。


菜の花の一押しキャラ…伊庭いつき 「それが、<アストラル>のやり方かね」 と、ダリウスが問うた。         「それが…<アストラル>のやり方です」 と、いつきが答えた。         
主人公 : 伊庭 いつき
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : オカルト
結 末 : +end
イラスト : pako
デザイン : 中デザイン事務所

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
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534. 「MORI LOG ACADEMY11 モリログ・アカデミィ11 飛行少年の日々」     森 博嗣
2009.02.17 エッセイ 350P 670円 2008年9月発行 メディアファクトリー ★★★★★
ブログを再編成した森博嗣のシリーズ11


【100字紹介】
 「WEBダ・ヴィンチ」連載の森博嗣のブログ日記
 「MORI LOG ACADEMY」の文庫化。
 体調はいまひとつだったが趣味も仕事も充実の、
 2008年の春から初夏までの3ヶ月。
 特別講義は、初の市民講座。


第11巻です。
2008年4−6月の、3か月分の森博嗣の
ブログの内容を再編成しています。
カテゴリ分けはいつものように
HR、国語、算数、理科、社会、図工、体育、
そして、特別講座は初の試み「市民講座」。
通常の「市民講座」は聞き手が市民ですが、
モリログでは違います。確かに市民に開放はされていますが、
語り手の方が市民、という企画になっています。
今回は春から初夏へ、とても素敵な季節です。


もちろん、どこまでいってもいつも通り。
この変わらなさが安心感です。
大ハズレしないので。
「へー」
「ああ、なるほど」
「そうそう、そうなんですよ」
「えっ、それはどうかなあ…」

うわあ、こんな見方もあったのか!とか、
前からそう思っていた気がするけれど、
うまく言葉に出来なかったことを明快に文章にしてくれているとか。
中にはこれにはこういう反論をしてみたいものだけれど、
自分の考え方って甘くないか?と深く考え直すきっかけになったり。
でも基本的には、あまり深く考えずに、
惰性で読んでいるときが多いのですけれども。
その惰性で読んでいるときが結構好きだったりして。
読書好きにはそういう人も多いのでは?

菜の花の今回の注目の的!は「パスカル、ダイエットする」
(というか、させられる、か?)ですね。
裏表紙の「紹介文」の中にあったので「なにぃ!?」と。
いやあ、その経過については是非中身をどうぞ。



テーマ : 日々の雑感など
語り口 : 日記
ジャンル : エッセイ
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 普通の日記ブログ
装画、総扉・目次イラスト : 羽海野チカ
ブックデザイン : 後藤 一敬、佐藤 弘子

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
簡 潔 性 : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP 森博嗣の著作リスト
535. 「レンタルマギカ 魔導書大全」     三田 誠
2009.02.18 ライトノベル 128P 590円 2007年12月発行 角川書店
(スニーカー文庫)
★★★★★
2短編を同時収録、シリーズ初のイラスト集


【100字紹介】
 レンタルマギカシリーズの雑誌、ドラマCDからのイラスト、
 ラフ集など30点を収録。<アストラル>の歴史を
 描き下ろしイラストで綴る「本日は猫日和」、
 穂波とアディの結婚騒動の、
 短編2編を同時収録のお楽しみ本


オカルト系ライトノベル作品のお楽しみ本ヴァージョン。
第11巻のあとなので、第12巻かもしれませんが、
一応、抜いて数えるべきかな…、と悩むところ。

最初が<アストラル>&猫屋敷さんの歴史を描いたショートストーリー。
色鉛筆でさらっと描いたような、素朴なイラストが見どころ。
猫屋敷さんにも色々あったんだなーという感じ。
この直前の第11巻での、彼の活躍ぶりを見ていると、
余計にその悲哀のようなものが伝わってくるような。
凄いよ、猫屋敷さん。普段はあんななのに!(え?)

それからイラストギャラリー。
見開き1枚を中心にした30点弱のフルカラーです。

そしてもう一度短編「魔法使い、結婚します!?」。
穂波とアディリシアの結婚騒動を描くこの短編は、
確かアニメでもやっていたなーと思い出しました。
イラスト集!というなら、
これは最後にイラスト1枚欲しかったなー、という感じ。

最後が珍ラフ集。

ページは普段の半分以下ですが、紙質と色で同じお値段です。
薄くて読み応えが…ですが、イラスト好きなら必見ですね。


菜の花の一押しキャラ…伊庭いつき ―さあ。             ここから、魔法をはじめましょう。
主人公 : 伊庭 いつき
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : オカルト
結 末 : +end
イラスト : pako
デザイン : 中デザイン事務所

文章・描写 : ★★+★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
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536. 「図書館の基本を求めてII ―『風』『三角点』2004〜2006より―」     田井 郁久雄
2009.02.22 一般書 179P 1500円 2008年11月発行 大学教育出版 ★★★★★
最近の図書館と図書館を取り巻く環境へ一言


【100字紹介】
 公共図書館勤務歴のある著者による、
 現実の図書館の事例や、
 研究者・図書館関係者の発言を紹介して論評する図書館批評。
 2004年から2006年まで、
 同人誌『風』と『三角点』に掲載したものの中から31編を収録

「図書館の基本を求めて」という作品の第2弾。
…ですが、1作目は読んでいなかったりするという。
IIと書いてあったのに気付かず、手にとってしまいました。

著者は岡山市立図書館に30年ほど勤務した元図書館員。
この作品は、100字紹介の通り、同人誌に掲載された記事から、
選抜して収録されたものということですが、
巻末にある「風」の2004-2006タイトルリストを見ると、
結構な割合で収録しているのかな、という印象です。

目次を見ると「お」と目を引く言葉が目白押しです。
「ベストセラー複本購入批判には根拠がない」
「カウンター業務委託の図書館を見て」
「何のための図書館評価か」
「なぜビジネス支援コーナーか」
などなど。

図書館関係者なら「ん?」と思わず振り返りそうでしょう?
そういう感じです。

内容としては、それほど奇抜ではなく、正論もあり、
ちょっと頭で考えすぎじゃないかなーというものもあり、
バランスが良い感じです。

館種は公共図書館を想定しています。
若干、古きよき時代系の懐古的な成分や
牧歌的な小さな図書館が取り上げられている例が多い気もしますが、
気のせいかも。そもそもそういう図書館に良い印象が強くて、
菜の花の心に残ってしまっただけかもしれません。

カウンター対応に関しての話は、本書内で何回か取り上げられていて、
細かいことまで読み取って適切に対応できることこそが、
司書の専門性であり、何もレファレンスサービスなどの
いかにも専門知識があります、というサービスだけが
司書の専門性ではない、というのが主張されていました。
確かにそうかもしれません。司書の専門性は、
その何気ない行動のすべてににじむようなもの、なのでしょう。
ただ、カウンター対応に関して何が良いかは、
人によってあまりにも感じ方が違うので難しいですね。
かつての菜の花は話しかけられたくないタイプでした。
図書館に入って最初にカウンターがあると、逃げ出したくなったものです。
カウンターに人がいて、座っているだけで嫌な気持ちになるという、
どうしようもない利用者でした。
今は、自分が図書館の人なのであまり気になりませんが、
人によっては話しかけられたくないな、イヤだなあ、というのも分かります。
逆に、話したい話したい!!という利用者さんがいるのも事実。
特に公共図書館ならその傾向は更に顕著なのでは、と思います。

ちょっと読み流しすぎてしまったかな、と思いつつ。


テーマ : 公共図書館
語り口 : エッセイ風
ジャンル : 一般書
対 象 : 一般〜図書館関係者向け
雰囲気 : 若干批判的な目線
装 丁 : ティーボーンデザイン事務所

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
簡 潔 性 : ★★★★★
独 自 性 : ★★★+
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
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537. 「「大切にされる人」94のヒント」     斉藤 茂太
2009.02.23 一般書 203P 533円 2004年11月発行 三笠書房
(知的生きかた文庫)
★★★+
人と人とのつながりを、大切にするために。


【100字紹介】
 何故か誰からも好かれ、大切にされる人。
 あなたの周りにもいませんか?
 より良い人付き合いで、より良い人生へ。
 友人関係、ビジネス、恋愛。
 ちょっとした心がけで、人を大切にし、
 人から大切にされる度が上がります。

表紙にある文句は
「なぜか不思議と人に好かれる」
「充実人生のちょっとしたコツ」。

一体どんな内容なんだろうとページをめくってみると
「はじめに―もっと人に好かれるための「小さな発見」がいっぱいの本」。

「そばにいるだけで、なぜか楽しくなってくる人」
「いつも前向きで、元気と活力を与えてくれる人」
「話をしていると、不思議と心が軽くなる人」
「あなたの良いところを、どんどんほめてくれる人」

ああ、何だかいいなあ、そんな人になってみたい!
…と、素直に思えたらどんどんページをめくってみましょう。
きっと、ちょっとした言葉がはっと何かを気付かせてくれます。

見開き2Pで1項目。
特に系統だってはおらず、それぞれ独立した内容で94の小話。
それぞれのタイトルも魅力的で、それだけ読んでいても
「なるほどね」というものもあります。
でも中身も、同じくらい興味深いエピソードが盛り沢山。
「誰かが誰かを大切にしている姿」というのは、
読んでいるだけで何かほっとします。

「こういうのはちょっとねえ…」ということを例に挙げて
「気をつけましょう」と教えてくれる項目もありますが、
菜の花は断然「こういう人って素敵!」
ということを記述している項目が好きです。
前者は、あまりにも自分の胸に手を当てたくなってしまって(苦笑)。
いや、その意味ではとっても参考になるのですけれども。
後者は読んでいるとほんわかとして、ああ、自分もこうありたいものだ、
という前向きな気持ちになります。

…もしかすると、これは著者の狙いかもしれませんね。
「気をつけましょう」で自分を反省させて、
「こういうのは素敵」で癒しながら新しい見方をインストール、みたいな。
何しろ著者・斉藤氏は精神医学な先生ですから、
それくらい考えていても全然おかしくないですね。
菜の花は、見事その術中にはまってしまったというわけですかー。

94の項目の独立性が高いため、時間のないときにも
ちょこちょこと読むのに適しています。
ちょっとした空き時間に、自分のこと、見つめ直してみませんか?


テーマ : 生き方
語り口 : エッセイ風
ジャンル : 一般書(ハウツー系)
対 象 : 一般向け
雰囲気 : ゆったりと
カバー・イラストレーション : 河本 徹朗
カバー・デザイン : 三笠書房装幀室
カバー・フォーマット : 三枝 ノリユキ
本文イラスト : 河本 徹朗

文章・描写 : ★★★★★
学 術 性 : ★★★★★
簡 潔 性 : ★★★★
独 自 性 : ★★★+
読 後 感 : ★★★★

総合評価 : ★★★+
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538. 「シゴフミ 〜Stories of Last Letters〜」     雨宮 諒
2009.02.28 ライトノベル 264P 570円 2006年10月発行 メディアワークス
(電撃文庫)
★★★★
死者からの「死後文」を届ける配達人の物語


【100字紹介】
 不思議な杖を持つレトロな郵便配達人風の少女が届けるのは、
 黒い切手の死後文。想いを残して逝ったひとが、
 大切なひとへ宛てて書いた手紙。
 家族へ、友人へ、恋人へ、
 届けられた最後の手紙。切なくて優しい3つの物語


アニメ版(2008年放映)と同じ原案で、
全4巻の刊行がなされているライトノベルです。
ちなみに菜の花は、この本を読み終わってからググってみて初めて、
アニメ版の存在を知りました。えー、こんなのやっていましたっけ?

タイトル「シゴフミ」はカタカナになっているとぴんときませんが、
漢字にすると死後文。
想いを残して逝った人が書く最後の手紙、という意味。
レトロな郵便配達人の格好をした少女・文伽と、
彼女の背丈よりも長い、喋る杖のマヤマが、
死者の元から、死後文を届けます。

本作は短編
「飛べない蝶」「ひとひらの想い」「父さんの眼差し」の3編を収録。


物語の性質上当然、どの話も人の死に始まり、そして別れに終わります。
人が死に、文伽とマヤマが現れ、手紙が書かれ、届けられる。
そして、死者はあの世へ。
よくあるゲームやファンタジーのように奇跡が起こって、
いきなり死者が蘇り、シゴフミを受け取った人とハッピーエンドに!
…なんて、甘い展開はありません。
ある意味、結末の分かっている物語。
切なくて…、でも優しい物語です。
その決められた枠内で、どれだけのことが表現できるか…、
それが著者の腕の見せ所かもしれません。
どの話も一筋縄ではいかない意外性と、
ちょっとひねった展開が用意されています。
スタートとゴールはある程度、決められたもののはずなのに、
そこまでの道のりの面白さは素晴らしいですね。
巧い、という感じ。

メインのキャラ造詣に関しては、どこかで見たような…、
という感じがぬぐえませんが、それぞれの物語に登場する人々の
設定とか、心情とか、そして展開が興味深い作品でした。

そういえば、アニメ版のキャラクター原案は黒星紅白氏だそうで…、
通りでそんな雰囲気のはずだなーと。
やっぱり文伽とマヤマってば、あの旅人と喋るモトラドに…。
いえいえ、まあ、それはおいておきましょう。


菜の花の一押しキャラ…特になし 「わたしの幸せはわたしが決めるわ」(長谷川典子)
主人公 : 文伽、マヤマ
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 現代ファンタジー
結 末 : +end
イラスト : ポコ
原 案 : 湯澤 友楼
デザイン : Yoshihiko Kamabe (Zen)

文章・描写 : ★★★+
展開・結末 : ★★★★+
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★+
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★
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539. 「レンタルマギカ 魔法使いの記憶」     三田 誠
2009.02.28 ライトノベル 303P 552円 2008年1月発行 角川書店
(スニーカー文庫)
★★★★★
第12巻。アストラルの過去と現在の短編集


【100字紹介】
 己の目的のために、人を呪う禁忌に手を染めた猫屋敷蓮の前に、
 <協会>の「魔法使いを罰する魔法使い」が現れる。
 猫屋敷と”あの男”の因縁がついに明かされる
 「魔法使いの出会い」他4編収録の短編集。
 第2部第3作


オカルト系ライトノベル作品の第2部第3作、通算だと第12巻。

第2部最初の短編集です。勿論、いつもの「業務日誌」つき。
今回は4編を収録。
オルトヴィーンが入社して最初の短編「魔法使いの査定!」。
前作の続きでロンドン滞在中の「魔法使いの代理授業」。
更にイギリス・ウェールズでの「魔法使いの約束」。
そして、今ではない<アストラル>のお話「魔法使いの出会い」。

配列はなかなか絶妙ですね。
新入社員を迎え、加速度的に変化していく<アストラル>を描く第1話、
同じく新入社員を迎え、今に一歩ずつ近寄る、
しかし確実に今とは異なる<アストラル>を描く最終話。

はい、この最終話が今作の最大のポイントですよね、ですよね?
猫屋敷さん、びっくりですね。
でもそれ以上にびっくりなのは…あの人!です。
そう、あの人。あの人、まさか、そんな…!と叫んだ人は、
きっと沢山いたに違いありません。
まさかそんな因縁があったなんて、誰が想像したでしょう。
もうこれについては、多くを述べられません。
とりあえず、読んでね、というのも無駄ですね。
ここまで追いかけてきた読者なら最初から読んでいるでしょうし、
初めて読む人にはこの因縁は分からないはずなので、
これだけ読んでもどうかと思いますので。
ということは、言えることといえば、シリーズ最初から順に読んでね!
…ということくらいでしょうか。

…1冊だけ読むには向いていない第12巻でした。


菜の花の一押しキャラ…伊庭いつき 「自分であるっていうのは、すごい難しいことや。魔法使いやったら  誰でも分かる。むしろ、それこそが一番の魔法やってね」     (穂波・高瀬・アンブラー)
主人公 : 伊庭 いつき
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : オカルト
結 末 : 1話完結
イラスト : pako
デザイン : 中デザイン事務所

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
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