よみもののきろく

(2008年12月…518-524) 中段は20字紹介。価格は本体価格(税別)。 もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  もっと新しい記録
518. 「『古事記』に聞く女系の木霊」     中山 千夏
2008.12.03 一般書 70P 800円 2003年9月発行 御茶の水書房 ★★★+
古代日本には、女王も数多く存在していた!


【100字紹介】
 三十二代まで続く男性天皇。だが本当に男性ばかりだったのか?
 古事記をひもとくと、参考とした当時の諸家伝には
 「両系系譜」が多く存在していたように思えてくる。
 古代は決して男性優位時代ではなかったという意見。


神奈川大学評論ブックレット25です。
著者のことはよく知らないのですが、役者とか物書きさん…らしいです。
研究者ではないので、本書も「研究」ではなく、
趣味が高じての自分の考え、というスタンス。
まえがきによれば、実際に過去の研究書等を読んだことも無い、ということです。
それはさすがにどうなのか…という気もしますけれども、
古事記自体は古語辞典片手に取り組んでいて、
その上での独自の考えということで、
むしろ他の研究の影響を変に受けていないため、
先入観が少ないのは悪いことではないと思います。
特に「これが正しい」と主張しているわけでもなく、
「こういう理由で、私自身はこう考えています」というものですし。
あ、そうなんだ、確かにそれも一理あるかも…、という部分もあれば
えー、それはさすがに言い過ぎじゃない?という部分もあり、
なかなか面白いです。

主張はそれほど難しいものでも複雑なものでもありません。
男性優先的思想を持ち込んだ中国人学者が主に携わった「日本書紀」は、
男性優先的思想が色濃く反映されているものの、
「古事記」の方はそこまで徹底されていないのではないか、
というところからスタートし、「古事記」を中心に話が進みます。

第一章「男系の実態」、第三章「女性を祖とする族たち」では、
「古事記」には非常に多くの、そして多彩な女性名が登場すること、
女性を祖とする族が幾つも明記されていることから、
「古事記」の元となった諸家伝の系譜には、
その後の時代に主流となった男性名が繋がっている「男性系譜」だけではなく、
女性の名も記されている「両系系譜」が
多く含まれていたのではないかということを推定します。

第二章「女性天皇の謎」では天皇系譜において、三十二代まで男性のみ、
三十三代から四十八代までの4割が女性という不自然な男女比について、
三十二代以前の天皇に関しては、昔有力だった人物から、
意図的に男性のみをピックアップして繋げたのではないか、
という推理をしています。
四十八代あたりまでの男女比は、古代と同じくらいであって、
むしろ古代の系譜が意図的に男性のみにされている、というわけです。

第四章では女性の高官(長)も何人も記されていることを紹介しています。

第五章では、もしも女性でさえなければきっと天皇として
系譜に選ばれていたであろう大活躍した女性を、
古事記からピックアップして紹介しています。

全面的に正しいとは思えませんけれども、
ああ、なるほど!それってあるのかも…?と、
古代世界に対して興味を覚える本でした。


テーマ : 日本古代史
語り口 : 学術風エッセイ
ジャンル : 一般書
対 象 : 一般向け
雰囲気 : エッセイ
装 丁 : 松岡夏樹

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
簡 潔 性 : ★★★+
独 自 性 : ★★★★
読 後 感 : ★★★+

総合評価 : ★★★+
よみもののきろくTOP
519. 「レンタルマギカ 魔法使い、修行中!」     三田 誠
2008.12.05 ライトノベル 286P 514円 2006年7月発行 角川書店
(スニーカー文庫)
★★★★★
アストラル業務日誌短編集。シリーズ第6巻


【100字紹介】
 <ゲーティア>首領で、ソロモン王の末裔として
 72の魔神を召喚するアディリシアが、
 自身の使い魔に攻撃を受ける。
 裏切り者の手によってすべての魔神を奪われたアディリシアに
 いつきが味方するが…。シリーズ第6巻


オカルト系ライトノベル作品の第6巻。
前作に引き続き、今回も短編集。
というわけで、「業務日誌」です。
もちろん、各話の最後には、アストラル社員がそれぞれ書く
「業務日誌」も掲載されています。

第1話は「魔法使いと赤い槍」。
約束どおり、竜蓮寺で隻蓮に修行をさせてもらう、いつき。
才能はあまりない…らしいですが頑張っています。
突然、出掛けるから留守番しているように、と
ひとり竜蓮寺に泊まることになったのですが…。
なかなかとんでもない修行ですね。
でも今まで「普通の」彼は戦力外でしたから、
これで変われる…かもしれない?
業務日誌は、伊庭いつき。

第2話は「魔法使いとクリスマス」。
いつきが、女の子へのプレゼントは何がいいかと訊いて回っている…
なんて話を聞きつけてしまった穂波、まなみ、アディリシアが、
いつきを追跡!?
が、街で歩いている途中に幽霊の子どもに話しかけたいつきは、
その子と一緒に裏路地に入っていってしまい…。
クリスマスに起こる、哀しい奇跡のお話。最後は明るく。
業務日誌は、黒羽まなみ。

第3話は「魔法使いとソロモンの血」。
100字紹介に挙げているお話です。
魔神アスモダイをめぐる、アディリシアの戦い。
彼女は、単に気が強いだけではなく、
責任感と自分に課している義務感の強さが凄いですよね。
だから、ちょっとくらい高慢な態度でも納得してしまう。
何だか王様みたいです。さすが、ソロモン王の末裔。
業務日誌は、アディリシア=レン=メイザース。

4話は「魔法使いとソロモンの絆」。
タイトル通り、第3話とセット。
というか、同じ時系列内の別のキャラたちの物語。
普段のメインキャラは殆ど登場せず、主人公はダフネさん。
…ダフネさんって誰?となった人もいたりして…。
たまにはこういう話も、しんみりといいですね。
きらびやかに一線で活躍する人もいるし、
こうして支えていてくれる人たちもいるのです。
業務日誌は、隻蓮。

最後に「<特別付録>「レンタルマギカ」の基礎理論」収録。
1ページ1テーマで、上半分が横書きで説明、
下半分がそれに対するいつきと穂波の会話で成り立っています。
結構面白かったので、次回以降も付録にならないかなーと期待。


菜の花の一押しキャラ…伊庭いつき 「だったら、『ブルーノ』でアイリッシュ・コーヒーをおごって」(ダフネ)
主人公 : 伊庭 いつき
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : オカルト
結 末 : 一話完結
イラスト : pako
デザイン : 中デザイン事務所

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP
520. 「すごい上司 部下が自ら動き出す心理学」     松下 信武ほか著
2008.12.13 一般書 212P 1143円 2006年2月発行 プレジデント社 ★★★★★
上司のための、心の持ちよう・チップス集。


【100字紹介】
 ここぞというときに、部下の心を上手に刺激し、
 部下を成長させるひと言が言えるマネジャー
 「すごい上司」になる知恵を探る
 プレジデント誌連載「職場の心理学」から、
 反響の大きかった28本を厳選収録したチップス集


「なぜ人は言われたこともできないのか」が表紙の文句。
上司の、部下との関わり方を示したハウツー本です。

元々は「職場の心理学」という雑誌の連載で、
執筆者は毎回別の人のようです。
精神科医、心理学の大学教授、ビジネス教育の研究所所長、
コンサルタントなどなど、色々な人が執筆しています。

元が連載のため、1テーマあたり5-6Pと分量は一定、
それぞれのテーマは独立していてそれだけで成立しています。
一応、全体を6章構成にしていますが、
元々章名があった上で書いているのではなくて、
あとから再編成したような感じで、ゆるやかなくくりです。

それぞれの執筆者が違うため、分量こそは一定ですが、
内容に関してはずいぶん差がありますね。
玉石混淆とまでは言いませんけれども、粒度が違うというか、
実践一点張りのいかにも「ハウツー」なものから、
学術論文風の「理論と実験攻め」みたいなものまで、
ずいぶん色が違っていて面白いです。
テーマごとに扉があって、著者名と肩書き、テーマ名、
簡単なイラストと導入、著者の経歴が入っているのですけれども、
そのページを見るだけで「あ、これは役に立ちそう」
「これは興味深いけれども実践は出来ないだろう」というのが…。
基本的に、学者の言うことは興味深いけれども即実践とはいかない、
というものが多いですね。理学部と工学部という感じ。
根源的なところを解明していく理学系、
それを踏まえつつ応用を作り上げていく工学系。
まあ、この本の場合は学者陣営もコンサルタント陣営も、
どちらも文系なわけですけれどもね。


とりあえず、菜の花は現在上司ではないので、
いきなり使えるワザというのはないのですけれども、
普段から心がけておこう、仕事にはこういう風に向き合うものだ、
というようなヒントにはなりました。
やっぱり、こういうものは読んでおいて損はありません。
たとえ上司でなくても、それどころか上司になる気がなくても、
「関係ないよ」と避けるのは勿体無いかな、と。

この本がお勧め!というほどでもないですが、
このテの本を、もっと読んでみたいかな、とは思います。


テーマ : ビジネス
語り口 : テーマごとに別著者
ジャンル : ハウツー
対 象 : 勤め人向け
雰囲気 : ビジネスライク
装 丁 : 竹内雄二
図表作成 : ライヴ・アート
イラスト : 高橋常政

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
簡 潔 性 : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★
読 後 感 : ★★★+

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP
521. 「業多姫 四之帖―雪帰月」     時海 結以
2008.12.19 ライトノベル 332P 600円 2004年1月発行 富士見書房
(富士見ミステリー文庫)
★★★★★
第4巻。円岡に占領された美駒で戦う人々。


【100字紹介】
 戦国乱世。隣国・円岡の謀略を暴いた後に出奔した領主の娘・業多姫。
 しかし美駒の郷の窮状を聞き、
 組織を裏切り彼女と共に生きる道を選んだ颯音とともに、
 業多姫の復活を願う民の声あふれる美駒に戻ってきた。第4巻


タイトル通り、「業多姫」の第4巻。
戦国乱世に、小国・美駒の郷の領主の娘に生まれた鳴は、
その命を狙ってきた颯音とともに国を出奔したのですが、
かつて颯音が属していた組織に未だに命を狙われていることから、
過去に決着をつけるために、颯音の故郷へ戻る決意をします。
ちょうどそのとき、鳴の故郷・美駒が大変なことになっている、
という情報が入り、まずは美駒に寄ることになったのですが…。
想像以上の惨状と、「業多姫復活」を願う民衆の声に、
これからどうすべきから揺れる鳴。
弟の常盤丸が敵国の捕虜となったことを知って、その救出を決意します。

というわけで、前作の個人戦とは打って変わって、
国と国の戦いがメインになってきました。
こういう戦いは、国と国の戦いが気付いたら単なる個人の戦いに
なってしまっていて、組織の動き、民の動きが描けない作家さんもいらっしゃいますが、
(これって、主人公たちだけがスタンドプレイで活躍するような、
アニメや漫画の影響なのでしょうか…?)、
この作品は比較的バランスがよい方かも。
同じシリーズの1巻に関しては、国同士の争いでしたが、
そこまでバランスが良いようには思えなかったのですけれども。
そもそも恋愛をメインとするような小説の場合は、
圧倒的にスタンドプレイに偏る作家さんが多いですね。
多分恋愛小説というものが、個人対、個人の話なわけですから、
「個人をも内包してしまう圧倒的な組織」を描くのには慣れていないのでしょう。

今回は初めて、密室殺人が出てきませんでした!
4作目にしてついに。
でも「ミステリー文庫」ですから勿論、ミステリー部分、あります!
密室殺人の代わりに取り上げられたのは、暗号解読、でした。
和風な暗号です。
暗号といえば「財宝の隠し場所」を示すのが王道ってもので、
当然、この作品でも「美駒の財(たから)」の隠し場所の暗号。
ミステリーですよー。
戦国で恋愛でファンタジーで、ミステリーなのですよ!
何でも詰め込んどけ!って感じでいいですねえ。
エンターテイメントだなあ。

構成はいつも通り、章ごとに「鳴」「颯音」「鳴」…と、
1人称の視点が交互に変わります。
今回も二人は別行動が多いので、それぞれが断片的に仕入れた情報で、
それぞれのことを考える部分が面白いです。
目の前にいないから、すべての状況を把握できていないため、
両方の状況を見ている読者から見ると
「えっ、いや、それ、駄目だって、引き返して!」と、
思わずキャラに教えてあげたくなってしまうこともしばしば。
やきもきしながら眺めることに。
颯音の方は遠隔透視ができるので比較的、鳴の状況は見えていますが、
鳴の方は念は送れても、受信ができないから大変です。

それにしても最後、よく着地できたなあ、という感じ。
凄いです。


菜の花の一押しキャラ…颯音 「行きましょう、颯音、私たちは進むしかできないの。  これからも生きるために」             (鳴)
主人公 : 鳴、颯音
語り口 : 1人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : ミステリ仕立て、恋愛もの
結 末 : 一件落着
イラスト : 増田 恵
カバーデザイン : 元良 志和 + design CREST
口絵デザイン : 浅倉 聡美
装丁者 : 朝倉 哲也

文章・描写 : ★★★+
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★+
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP
522. 「ネットカフェ難民 ドキュメント「最底辺生活」」     川崎 昌平
2008.12.25 エッセイ 231P 740円 2007年9月発行 幻冬舎新書 ★★+★★
ネットカフェ住民になってみたニートの日記


【100字紹介】
 金も職も技能もない25歳のニートがある日突然、
 実家の六畳間からネットカフェの1畳ちょいの空間に居を移した。
 派遣会社に登録し、その日暮らしの生活。
 ファミレスでささやかな贅沢を楽しむ、ネカフェ住人の実録。


タイトルと、裏表紙の紹介文を読んで、
ネカフェ難民ってどんなものかなー、と思い、手に取りました。
期待していたのは、ネカフェ難民の一般論だったのですが、
読んでみたらあまり一般的な状況には見えなかった気がします。
それともそれは菜の花のイメージが間違っていて、
この本の人のような例が一般的な姿?

菜の花のイメージとしては、ワーキングプアな若者が、
敷金・礼金のようなまとまったお金が払えないので、
仕方なくネットカフェで住むのかな、と思っていたのですが、
著者は、実家があって、ニート暮らしも可能な、
経済的に困窮しているとは言えない環境。
自称、技能がないということですが、
東京藝術大学の大学院(修士)まで出ていて、
世間一般の感じ方としては十分、ネームバリューのある高学歴、
借金があるような描写もなく、
心身ともに、少なくとも動けないほどの病気も障害もなく、
これだけ恵まれていて何故?という印象。
やむにやまれずニートやネットカフェ住民をしているわけではなく、
単に自分からそのような生活をしようと決意して実行している、
という人です。自分でもそのように書いていらっしゃいますが。

そんな著者の、ニートからネカフェ住民に転じて
派遣などで日雇い労働者として働き始めた30日の記録。
こういう生活もあるのだなあ、という感じ。
そもそも根幹の考え方が菜の花とはとても違うので、
共感は出来ませんけれども、
事実としてなるほどな、と受け止めました。
世の中には色々な人がいて、
菜の花の尺度では測れない人も当然沢山いるのだから、
勝手に菜の花が優劣をつけたり、批判したりすることは出来ないですから。

24日目の、マンション展示会の看板持ちバイトのときに
妄想していた「仮想の家族」は、面白いくらいありそうでなさそうな、
素敵な妄想でしたけれども、そちらに流れるつもりは
まったくないのですね。。。まあ、菜の花も右に同じですけれども。

しかし、世の中は思ったよりもずっと何とかなるものですね。
今は不況だから、また状況は変わっているかもしれませんが、
この本が出た2007年の時点では、どんな仕事でもやろう、という
気力さえあればこれくらいの感じで生きているのだな、
と思った次第。最近は派遣切りとかリストラとか、
厳しい話ばかり聞きますけれども、この本を読めば
意外に何とかなるものかもしれない、という勇気がわいてくるかも…?


テーマ : 日記
語り口 : 日記
ジャンル : エッセイ
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 普通の日記
ブックデザイン : 鈴木成一デザイン室

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
簡 潔 性 : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★
読 後 感 : ★+★★★

総合評価 : ★★+★★
よみもののきろくTOP
523. 「少年陰陽師 刹那の静寂に横たわれ」     結城 光流
2008.12.28 ライトノベル 223P 457円 2008年8月発行 角川ビーンズ文庫 ★★★★★
安倍晴明の孫昌浩の活躍!シリーズ第23巻


【100字紹介】
 時は平安。傷ついた心に苛まれる昌浩を都に残し、
 晴明と彰子は皇女・脩子とともに伊勢へ下る。
 その頃、帝の娘を待つ少女・斎のもとに、
 昌浩の心が闇に囚われれば神を砕く力となるという
 神託がくだる…玉依編第3弾。


シリーズ第23巻です。「玉依編」の第3巻。

ついにと言うべきか、ようやくと言うべきか、
晴明&彰子の伊勢下りです。
置いてけぼりの昌浩…というよりも、基本、
みんな都にいて、例外的に晴明&彰子が行くというだけですが。
勿論、風音や六合も行きます。

それにしても神将たち、今回も人材不足。
前巻ラストで倒れた神将が沢山いますしね。
今回実働は少ないです。
勾陣と青龍が面白いことになっていますし。
それを伝える太陰と玄武がいいです、愉しいです。
一番、戦えそうな紅蓮が昌浩の傍についてしまっていますから、
次に頑張れるのが六合になってしまい、奮闘しています。
でも、彼には強い味方の風音がいますからね…。
ちょっとくらいの実力不足は、補って余りあるどころか、
むしろ風音のが強いだろ!みたいな状況でしょうか。
よかったですねー、安部家。頼れる仲間を手に入れられて。

滅多に登場しない天空まで、人界におりてきました。
まあ…これはある意味、某神将のお手柄(?)でしょうか。
みんな、怖がってますね…。
思わず勢いに飲まれて某氏が大人しくなるくらいですからね。
ちょっと可愛いかも。

うっかり口を滑らした人のお陰で、
昌浩と昌親が出立することになりましたが、
あとから左大臣がどう暴れてくれるか(!?)に、
実は期待している菜の花だったりします。

前回から引き続き謎だった「少女・斎」や
「女房・安曇」などを取り巻く状況が徐々に明らかになってきました。
敵味方入り乱れる、なかなか複雑な状況になってきたような。
少しばかり「翼よいま、天へ還れ」を思い出しました。
不安定な昌浩もいて玉依編、なかなか大変なストーリーになりそうですね。


菜の花の一押しキャラ…安倍 昌親 「晴明も俺も、昌浩のことをよくわかってる。昌浩もそうだろう。  だから、何も言えないんだよ。近すぎるとな、          一番深くて激しいところを見せられなくなる」         (もっくん)
主人公 : 安倍 昌浩
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 歴史オカルト
結 末 : 次巻に続く
イラスト : あさぎ桜
デザイン : micro fish

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
結城光流の著作リスト よみもののきろくTOP
524. 「キノの旅XII」     時雨沢 恵一
2008.12.28 ライトノベル
(連作短編)
257P 550円 2007年10月発行 メディアワークス
電撃文庫
★★★+
人間キノと言葉を話す二輪車エルメスの旅!


【100字紹介】
 人間のキノが、言葉を話す二輪車エルメスと
  旅をする物語第12巻。国を巡ることは人を知ること。
  人間とそして世界の、美しさも醜さも。
  沢山の個性的な人が作り出す異世界都市国家を、
  キノとエルメスと一緒に旅しよう


●収録作品●
--------------------------------------------
カバー裏 寄付の国 ―How's Tricks?―
口 絵 山賊達の話 ―Can You Imagine!―
口 絵 パクリの国 ―I Have Ever Seen Before.―
口 絵 願い
プロローグ 幸せの中で・b ―Birth・b―
第一話 正義の国 ―Idios―
第二話 悪魔が来た国 ―Take of the Devil.―
第三話 求める国 ―Common Sense―
第四話 日時計の国 ―Counter Strike―
第五話 努力をする国 ―Passage 2―
第六話 続・寄付の話 ―How's Tricks?―
第七話 手紙の話 ―the Weak Link―
第八話 賭の話 ―Which is which.―
第九話 徳を積む国 ―Serious Killer―
第十話 雲の前で ―Eye-opener―
エピローグ 幸せの中で・a ―Birth・a―
--------------------------------------------

キノのシリーズ第12作です。
いつも通り100字紹介は超手抜きで、またまた前と同じです。
この文章すらいつもと同じ。

今回は、カバー裏の「寄付の国」が読めず。
というのも、図書館で借りてきたら装備がきっちりしていて、
カバーを剥がせないように止められていたからです。
あらら。仕方ないですね。返却のときに、
裏にもお話ありますよ、と指摘しようか悩み中。

口絵「山賊達の話」は、山賊が丘の上から旅人を観察するお話。
長老…悲しい過去をお持ちのようで、すっかり人を見る目が…。
でもこれではなかなか襲えないのでは。
背景の山なみの絵がとても好きです。
そしてあの二人組のイラストが面白すぎです。
ああ、悪魔だ…。
その横の一人と一台が妙にほのぼのしている分、余計に。

口絵「パクリの国」は発想の面白さ、でしょうか。

口絵「願い」のエルメスの願いはちょっといいな、と。
そして直後のキノの願いは…(笑)。
いや、このノリこそがキノの旅じゃないか!?ということで。

第一話「正義の国」は20Pほどの話。
一体どんな正義の国なのだろうと思ったら、あらま。
そういう正義だったのですね。
硬直化した思考は、身を滅ぼすものなのかもしれません。

第二話「悪魔が来た国」は、9Pの短い話。
いやいやいや、まあ、そういうこともあるかもしれませんが。
ちょっとした小ネタを取り上げて、
最後に可愛らしく(?)オチをつけて仕上げています。

第三話「求める国」は、12Pのまた短い話。
短い中に、エピソードは3つも入っています。
「山賊達の話」に近いつくり。
よく似た状況で少しだけ違うものを、
別のパーティーで繰り返す形式ですが、
上手いなあ、という感じ。
皮肉な感じでいかにもキノの旅らしいですね。
今回の中で、もっともシリーズらしい雰囲気です。

第四話「日時計の国」は40P弱とちょっと長め。
後半は、オチが明らかに見えているのに、
ちょっと引っ張りすぎではないかなーという印象。
ややテンポ感に難あり。発想は面白い作品です。

第五話「努力をする国」は、10Pほどで、師匠達の話。
いや、それってどんな国…。

第六話「続・寄付の話」は5Pのとても短い話。
どうやらカバー裏に、元になったらしい「寄付の話」が載っていそうですが、
残念ながらそちらは読めず。でも十分、面白いですよ。

第七話「手紙の話」はシズさまご一行のお話。
オチはイマイチ。

第八話「賭の話」は…繰り返しの妙でしょうか。
でもちょっと繰り返しすぎな気はします。
タイトル+最初の2行でいきなり、オチが見えていますからねえ…。

第九話「徳を積む国」は、その皮肉さが見所か。

第十話「雲の前で」は、最も長い方に入るのですが、
これもテンポ感等々、微妙な感じ。
ちょっと文章が野暮ったく、「らしさ」が足りない気がします。
でも、今後に再登場があるのかなあ、というのが少し期待のしどころ。

プロローグ・エピローグは、とても「らしい」作品になっています。

さて、このシリーズでもうひとつのみどころは、あとがき。
今回は、14ページの大増量版。
「実は普通のあとがきに飢えていた」らしいです、著者…。えー。
しかし、作家とは大変ですね。菜の花にはとても真似できません。


菜の花の一押しキャラ…キノ 「そう…、その通りさ。彼らは、彼らの正義を貫いたんだ」(シズ)
主人公 : キノ
語り口 : 3人称
ジャンル : 異世界ライトノベル
対 象 : 子供〜一般向け
雰囲気 : 静か。淡々とした
結 末 : 各話完結型
イラスト : 黒星 紅白
デザイン : 鎌部 善彦

文章・描写 : ★★+★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP 時雨沢恵一の著作リスト
もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  もっと新しい記録