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(2008年2月…431-437) 中段は20字紹介。価格は本体価格(税別)。 もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  もっと新しい記録
2008年2月の総評
今月の読了冊数は7です。
内訳は長編なし、エッセイ・一般書4、ライトノベル3。
何だかライトな月。
コンプ計画中の著者の読了数は森博嗣1、結城光流2、時雨沢恵一1です。

2008年2月の菜の花的ベストは…該当なし。

以下、高評価順(同評価の場合は読了日順)に簡単に作品紹介します。

 「キノの旅XI」               時雨沢恵一 (評点3.5)

「キノの旅XI」はその名の通り、時雨沢恵一のキノシリーズ第11巻。
人間キノと言葉を話す二輪車エルメスが、異世界の都市国家を1話1国で
巡っていく連作短編ライトノベルです。
現代社会に通じる第一話「つながっている国」や
信念の強さと素晴らしさ、そして恐ろしさを描く第五話「学校の国」などを収録。


 「少年陰陽師 妙なる絆を掴みとれ」     結城 光流 (評点3.0)
 「モリログ・アカデミィ7」         森 博嗣  (評点3.0)
 「少年陰陽師 真実を告げる声をきけ」    結城 光流 (評点3.0)
 「イッキ読み!神田陽子の日本史」      神田 陽子 (評点3.0)

「妙なる絆を掴みとれ」は結城光流のライトノベルで、
少年陰陽師シリーズ第16巻。珂神編の2冊目です。
瀕死の重傷を負った上に誘拐される昌浩、
怪我人続出の十二神将と、流血ノベルになっています。

「モリログ・アカデミィ7」は森博嗣のブログを再編成したエッセイ。
「WEBダ・ヴィンチ」連載の森博嗣のブログ日記、
「MORI LOG ACADEMY」の文庫化第7巻です。
2007年4−6月の春から初夏にかけての日常です。

「真実を告げる声をきけ」は結城光流のライトノベルで、
少年陰陽師シリーズ第17巻。珂神編の3冊目です。
出雲の地に彰子まで巻き込まれて大混戦。
昌浩V.S.比古の図式が出来上がっていきます。

「イッキ読み!神田陽子の日本史」は講談師・神田陽子が、
縄文時代から幕開ける2000年以上におよぶ日本の歴史を、
懐かしの昭和まで僅か1時間で、一気に楽しく語り上げる講談。
CDつきで、聞くことも可能なCDブックです。


 「ヨーロッパの死者の書」          竹内 節子 (評点2.5)

「ヨーロッパの死者の書」は、竹内節子の教養書。
固有の「死者の書」を持たないキリスト・カトリック文化が優勢な、
ヨーロッパにおける死生観、有形無形の「死のガイダンス」を
説き明かします。「死者の書」とは、よりよく生きるために
「生者の書」でもあるという」著者からの呼びかけです。


 「「日本神話」の謎と真実」         三浦 竜  (評点2.0)

「「日本神話」の謎と真実」は三浦竜の一般書。
日本書紀や古事記に残された日本神話の記述は、
何らかの史実を反映しているという視点に立ち、
古代日本の歴史を大胆に推理、古代ロマンの夢を膨らませます。


以上、今月の読書の俯瞰でした。







431. 「「日本神話」の謎と真実」     三浦 竜
2008.02.04 一般書 250P 780円 2006年4月発行 青春新書 ★★★★★
日本神話を史実と見て、古代ロマンを味わう


【100字紹介】
 日本書紀や古事記に残された日本神話の記述は、
 何らかの史実を反映しているという視点に立つ。
 古代の歴史的事実との接点を考え
 神話の謎の連鎖を解きほぐし、古代日本の歴史を大胆に推理、
 古代ロマンの夢を膨らませる


古事記や日本書紀。フィクションと思われてきたその物語には、
不自然な部分、謎が沢山あります。
本書はそれらの陰には必ず、何らかの「史実」が隠れている、
つまり日本書紀や古事記はフィクションではなく、
史実の反映であり、不自然な部分を考察し、謎を解きほぐせば、
古代日本の歴史が見えてくるに違いない、という姿勢。

中心としてとりあげる謎は、以下の8つ。
「アマテラスはなぜ岩屋にかくれたか」
「ヤマタノオロチの正体は何か」
「オオクニヌシはなぜ出雲大社に祀られているのか」
「日本神話の星の神はなぜ知られていないのか」
「サルタヒコはなぜ天孫を案内したのか」
「天孫はなぜコノハナノサクヤヒメを娶ったのか」
「ヤマトタケルの正体は誰か」
「「国譲り」は本当にあったのか」

これらをひとつずつ乗り越えていくことにより、
綺麗なひとつの物語が紡がれていく、という趣向です。

終わってみれば、確かにとても滑らかに謎が解けました。
ただ、学術性はありませんね。
持論展開の際に、殆ど論理的な根拠が示されず、
更にその不確かな自説を下敷きにして次の自説が展開されるため。
文章としての論理性はありません。根拠は本書内で呈示しないだけで、
実際にはあるのかもしれませんけれども。

文章は、よく言えば丁寧ですが、少々同内容の繰り返しが気になります。
過去形で繋ぎ続ける風景描写も、テンポがよろしくない印象でした。
あまり菜の花好みの文章じゃないということで、評価は低め。
あとは論理性がもう少し高ければ安心して読めるのにー、というところ。
でもその辺りは著者本人も言及していて、「はじめに」のラストでは

「異論のある論理展開もあるかもしれないが、それ以上に読者諸兄に
 古代ロマンを膨らませていただければ望外の幸せである。」

ということなので、ある意味狙い通りなのかもしれません。

たまには古代ロマンに思いを馳せたい人…には向かないかも。
いやあ、歴史って結構、「人間ってのはいつの時代も…」ですからねー。
でも歴史好きなら、「へー、そういう意見の人もいるんですね」というのが
面白いかもしれません。学術的でないにせよ。


テーマ : 古代日本
語り口 : 筆者の考えを述べる
ジャンル : 一般書(エッセイに近い)
対 象 : 一般向け
雰囲気 : ロマンチスト
カバー写真 : SEVEN PHOTO
本文写真 : 毎日新聞社、三浦 竜
DTP : ハッシィ

文章・展開 : ★+★★★
学 術 性 : ★+★★★
簡 潔 性 : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
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432. 「少年陰陽師 妙なる絆を掴みとれ」     結城 光流
2008.02.08 ライトノベル 253P 476円 2006年7月発行 角川ビーンズ文庫 ★★★★★
安倍晴明の孫昌浩の活躍!シリーズ第16巻


【100字紹介】
 時は平安。14歳の昌浩は、稀代の陰陽師・安倍晴明の末の孫。
 瀕死の重傷を負った昌浩は、道反大神の姫・風音の身体と
 霊力を乗っ取った真鉄に連れ去られてしまう。
 いしにえの神の国・出雲を舞台にした珂神編、第2弾


第15巻でスタートした新章は「珂神編」という名前になったようです。
読みは「かがみ」。今回の敵キャラの名前ですね、多分。
本作はその続き、第2弾。第15巻の完全なる続きですので、
必ず前作を先にお読み下さい。飛ばすと悲劇が…(経験者は語る)。

前作ですでに重傷だった昌浩ですが、更に誘拐までされて、
十二神将も晴明も大慌ての大騒動というのが、全体の話か…。
その上、道反大神の嫉妬(?)も上乗せされて、
動き回ってるーという感じ。いつもよりボリュームが多めに感じましたが、
あとから振り返ってみると意外に話は進んでいなかった、という。何故だ。

第15巻の感想で、「昌浩はやっぱり怪我ばっかりしている」と書きましたけど、
ここに加筆修正ですね。昌浩だけでなく、十二神将も怪我人続出しすぎ。
特に今回は、もうとっても。
「人間を傷つけてはならない」という理(ことわり)のお陰で、
なかなか大変なことになっています。
気になるのは、風音って本当に人間?ってことですけど。
ハーフ?
いや、でも形は人間ですが…。
いやだがしかし、やっぱり人間じゃないのでは…。
結構、びみょーな線にある気がしますけど。

それにしても、読めば読むほどこのシリーズって怪我ばっかりだー。
ピンチばっかりだー。流血だー。流血ノベルだー。
…と思う菜の花でした。別に流血好きじゃないんですけどね。



菜の花の一押しキャラ…勾陣 「だったらお前も沈んでこい!」(紅蓮)
主人公 : 安倍 昌浩
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 歴史オカルト
結 末 : 続く
イラスト : あさぎ桜
デザイン : micro fish

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
結城光流の著作リスト よみもののきろくTOP
433. 「MORI LOG ACADEMY7 モリログ・アカデミィ7 山伏の品格」     森 博嗣
2008.02.10 エッセイ 334P 670円 2007年9月発行 メディアファクトリー ★★★★★
ブログを再編成した、森博嗣のシリーズ7


【100字紹介】
 「WEBダ・ヴィンチ」連載の森博嗣のブログ日記
 「MORI LOG ACADEMY」の文庫化。
 久々の講演会や、スカイ・クロラ映画化発表など、
 2007年の春から初夏にかけての3ヶ月。
 特別講義は西澤保彦氏。
             

第7巻です。
2007年4−6月の、3か月分の森博嗣の
ブログの内容を再編成しています。
カテゴリ分けはHR、国語、算数、理科、社会、図工、体育、音楽、特別講義。
いつも通り、内容量は圧倒的にHRが多いです。
今回は暖かく過ごしやすい、春から初夏にかけて。

何だか、いつも通り。何を書いてもいつも通り。
妙に読むとほっとすると申しますか。
この時点で発行されている同著者の作品は、一応全部読了しているもので、
すでに100作近くを読ませて頂いています。
別にとても好き!という「大ファン」だから読んでいるつもりはなくて、
もうここまで来ると意地でも全部読みきってみせる!という感覚なのですが
(それを人はファンと呼ぶのかもしれない…ちなみに惰性ではないです、
アグレッシヴに攻めてます…何をかは謎ですが)、
お陰様でこの著者の文章を読むと「あ、いつも通り…」と思える自分がいたりして。
うーん、慣れてしまった、ということですか。
語り口は比較的「独特」に分類できると思いますが、
この語り口に妙な安心感があると申しますか。慣れとは恐ろしいものよ。

基本的に淡々と、日々の生活(執筆状況と趣味の話)と、
何かに関する意見的文章(つまりはエッセイ)とが
混ざり合いながらつづられています。

当初全12巻の予定でしたが(2008年9月まで連載)、
きりがいいので2008年12月までの連載に延長されて全13巻となるようです。
うーん、困ってしまうな、今7巻目。まだ半分。
いつも淡々と進むから、これ以上の感想はないや…。
その巻ごとに特筆することはないのです。
森氏は変わらないですから。連載漫画だとよくある、
最初の1巻はキャラの絵柄が全然違います、的な変動はないのです。
もう大体、fixされてしまっているからでしょう。
少しばかり、以前より丸くなったなあ、くらいで。
もしもこの文章を書いていて、変化していくものがあるとすれば、
それは読み手である菜の花自身の受け取り方でしょうね。
8巻はすでに発刊されているので、多分1、2ヶ月のうちに読むことになるでしょうが、
さすがにその期間で菜の花の受け取り方も激変はしないですよねえ。
となると、次巻のこの記録は、一体何を書けばいいのやら…。
なんて次の心配をしつつ。


テーマ : 日々の雑感など
語り口 : 日記
ジャンル : エッセイ
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 普通の日記ブログ
装画イラスト : 羽海野チカ
扉イラスト : 笹沼 真人
ブックデザイン : 後藤 一敬、佐藤 弘子

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
簡 潔 性 : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
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434. 「ヨーロッパの死者の書」     竹内 節子
2008.02.16 一般書 204P 680円 1995年8月発行 ちくま新書 ★★+★★
カトリック文化が優勢なヨーロッパの死生観


【100字紹介】
 キリスト教は、固有の「死者の書」をもたぬとはいえ、
 その二千年の歴史の中で有形無形の
 「死のガイダンス」を残してきた。
 エジプト伝承やケルト文化等の影響を受けた
 様々な形の「智恵」の体系と死生観を明らかにする


文化や歴史、国民性により、土地や民族ごとに様々な死生観があり、
それが言葉や図柄に表わされることがあります。
生まれたからには必ず死すべき運命にあるヒト。
ヒトは死んだらどうなるか。残された者はどうすべきか。
本人はどのような死を迎えればよいのか。
そして…、死を迎えるまでにどのように生きればいいのか。
死生観は「死に方」だけでなく、
その人の「生き方」にも影響を与えるものなのです。
「よき死」を迎えるための死者の書は、
同時に「よく生きる」ための生者の書でもありうるということ。

「死者の書」と言えば、まず頭に浮かぶのはエジプト。
エジプトでは、その墳墓の中に色鮮やかな死後の世界を描き出し、
死者の魂が迷うことなく「審判」を受けにいけるように教え導いていたとか。
その絵はそのまま、当時のエジプトの死生観を表しています。
また、仏教の世界では「因果応報」で「輪廻転生」という考え方。
それもまた、絵になり言葉になり流布しています。

では、カトリック文化のヨーロッパではどうなっているのか。
どのような「死者の書の風景」が描かれ、
どのような思想が、心の底に根付いているのか。
本書はそれを語るのが目的。
聖書を中心にした資料が登場し、語られていきます。


読んでいると、言葉がやや難しいですね。
菜の花が初めて見る言葉が沢山、特に説明なく登場しまくるので、
その辺りでふらふらになりそうでした(苦笑)。うーん、勉強不足。
クリスチャンならさくっと読める、キリスト教的用語なのか、
それともこの分野の研究者のテクニカル・タームなのかは不明。

文章は流れもよく、読みやすいのですが、展開としてはやや平坦。
まあ、研究書系なので、「凄く盛り上がる!」というのはありえませんが。
学術性はまあまあ高いかもしれませんが、なにぶん分野外なので何とも。
前述のように用語がやや難しいので簡潔性は低めですが、
切り口は面白いし、色々と「あー、そういえば」的な発想があって
一般の方でも楽しめる内容…かもしれません。
この場合の「あー、そういえば」とは、
海外の小説を読んだり映画を見たりしたときの登場人物の発言や行動。
欧米の物語には、キリスト教的文化が色濃く反映されていることが多々あり、
小説でも頻繁に聖書の文言が出てくることがあります。
そういうときの発想は、ここから来ていたのか、というのを、
本書で再確認した部分が幾つか。
聖書くらいは読んだけれども、特にクリスチャンでもないし、
くらいの微妙なレベルの方にうってつけな本かもしれません。

何とか挫折せずに最後まで読んでいったわけですが、
途中で「で、結局この本は何を言いたかったんだろ…?」という
疑問が菜の花の中に生まれてしまいました。
が!最後の最後。
「おわりに」のラスト1ページで、はっとしました。
あ、そうなのか…って。というわけでそれを最後に引用してレポートを終わります。

 悲しみに打ち勝つには言葉が要る。恐怖に打ち勝つには知識が要る。  やさしい言葉をたくさん使って、知識を交換しよう。智恵を伝え合おう。 そうすることで、きっと、私たちはみんな、時代の病から、お互いを癒しあ うことができる。  そんな最初の話しかけのひとつとして本書は書かれたし、そんなふうに読 まれることを祈っている。対話が、人がいっしょに「生きる」ためのささや かだけれど有効なアクションだということを信じながら。                (本書P.197「おわりに」より)
テーマ : ヨーロッパの死生観
語り口 : 研究論文風
ジャンル : 一般書(学術系エッセイ)
対 象 : ややマニアックな一般向け
雰囲気 : 研究論文風

文章・展開 : ★★★★★
学 術 性 : ★★★★
簡 潔 性 : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★+★★
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435. 「少年陰陽師 真実を告げる声をきけ」     結城 光流
2008.02.17 ライトノベル 251P 476円 2006年10月発行 角川ビーンズ文庫 ★★★★★
安倍晴明の孫昌浩の活躍!シリーズ第17巻


【100字紹介】
 時は平安。14歳の昌浩は、稀代の陰陽師・安倍晴明の末の孫。
 瀕死の重傷を負ったとき助けられた少年・比古の正体を知った昌浩は、
 どうしても彼を憎めないでいた。
 いしにえの神の国・出雲を舞台にした珂神編、第3弾


珂神編第3弾、シリーズとしては第17巻です。
相変わらず、それほどストーリーが進んでいないのですが、
今回はサイドストーリーが幾つか入ってきたので、
進行としては妥当なところかなーと。

何しろ、冒頭からいきなり「とっしー」ですから。
「とっしー」母初登場の上、更に成親おにーちゃんも出張ってきて
今まで登場したことのない某キャラのことがちらちらっと話題に上り。
そのうち、その話が来るなーという伏線っぽいです。

出雲の方は、彰子も絡んで混戦模様に。
六合&風音のエピソードは、きっとファンを喜ばせることでしょう。
そしてメインは、昌浩V.S.比古ですね。
昌浩…とりあえず何でもやる子。

最後の方では思いっきり大混乱が巻き起こりそうな伏線が入って、
次巻も大変そうよねーという感じ。さて…。



菜の花の一押しキャラ…安倍 昌浩 「しぶとさだけが売りなものでね」(勾陣)
主人公 : 安倍 昌浩
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 歴史オカルト
結 末 : 続く
イラスト : あさぎ桜
デザイン : micro fish

文章・描写 : ★★+★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
結城光流の著作リスト よみもののきろくTOP
436. 「キノの旅XI」     時雨沢 恵一
2008.02.21 ライトノベル
(連作短編)
257P 550円 2007年10月発行 メディアワークス
電撃文庫
★★★+
人間キノと言葉を話す二輪車エルメスの旅!


【100字紹介】
 人間のキノが、言葉を話す二輪車エルメスと
  旅をする物語第11巻。国を巡ることは人を知ること。
  人間とそして世界の、美しさも醜さも。
  沢山の個性的な人が作り出す異世界都市国家を、
  キノとエルメスと一緒に旅しよう


●収録作品●
--------------------------------------------
口 絵 子供の国 ―Burn Up―
口 絵 お花畑の国 ―Flower Arrangement―
プロローグ カメラの国・b ―Picturesque・b―
第一話 つながっている国 ―Stand Alone―
第二話 失望の話 ―Hope Against Hope―
第三話 アジン(略)の国 ―With You―
第四話 国境のない国 ―Asylum―
第五話 学校の国 ―Assignment―
第六話 道の話 ―Passage―
第七話 戦う人達の話 ―Reasonable―
エピローグ カメラの国・a ―Picturesque・a―
--------------------------------------------

キノのシリーズ第11作です。
いつも通り100字紹介は超手抜きで、またまた前と同じです。
この文章すらいつもと同じ。
それにしてもよくこんなに話が続くなあ…。
連作短編で、1巻につき数作ずつ入っているわけですから、
短編の数としては100近くになっているのではないかと思います。
うーん、凄い。


第一話「つながっている国」は、
思いっきり今の時代だからこそ書かれた作品、という感じがします。
きっと著者はそんな生活をしているに違いない(苦笑)。
菜の花も、似たようなものですが…。
極端に書かれていますけれども、これ、直面したら
きっとどちらの立場でも、妥当な行動・考え方ですよ、きっと。
キャラの行動にリアリティがあるお陰でそこにひっかからないから、
むしろキャラは沈んで、状況設定の面白さが浮き彫りになる気がします。

第二話「失望の国」は、僅か4Pの短い話。
基本的にキノとその国の人の会話だけで終わります。
何となく「あ、分かるかもー」と思えるし、ちょっと笑えてほっとするオチ。

第三話「アジン(略)の国」は、今度はタイトル(?)がやたら長い話。
なんとタイトルだけで6Pもあったり(笑)。
キノではなく、師匠のお話。
血腥さもありますけれども、最終的には綺麗に落として、
ああ…よかったね…と思えることでしょう。

第四話「国境のない国」も短い。6Pです。今度はシズ様たちのお話。

第五話「学校の国」では、キノがまだ師匠のもとにいて、
5日間だけ学校に通います。学校で習っていたこととは…?
先生はかなり素敵なのです。キノの旅でここまでいい感じに書かれる人は、
何だか裏がありそうだぞ!?…と心配になる程度に。
着地点には、思わずため息がもれるような。
信念とは、人を強くし、幸せにするもの。
でもときに…それはとても恐ろしい武器にもなりえるものですね。


さて、このシリーズでもうひとつのみどころは、あとがきですね。
今回のあとがきも…なかなか面白いことになっています。
2本立てで…あ。いや。お気になさらず。是非、楽しくお読み下さい!



菜の花の一押しキャラ…医者(第七話) 「師匠は、知ってることは何でも教えてくれて、知らないことは、それを知っていて  教えてくれる人を教えてくれる。だから、師匠は自分が何を知らないのか、     よく知ってるんだと思う―それって、凄いことだと思う」       (キノ)
主人公 : キノ
語り口 : 3人称
ジャンル : 異世界ライトノベル
対 象 : 子供〜一般向け
雰囲気 : 静か。淡々とした
結 末 : 各話完結型
イラスト : 黒星 紅白
カバー・口絵・本文デザイン : 鎌部 善彦

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★+
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★+
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★+
よみもののきろくTOP 時雨沢恵一の著作リスト
437. 「イッキ読み!神田陽子の日本史」     神田 陽子
2008.02.24 一般書
CDブック
125P+CD1枚 1700円 2005年7月発行 廣済堂出版 ★★★★★
講談で縄文から昭和まで日本史を駆け抜ける


【100字紹介】
 縄文時代で幕開ける2000年以上におよぶ日本の歴史を、
 懐かしの昭和まで僅か1時間で、一気に楽しく語り上げる講談。
 語りのCD付で、耳からも読める。
 本体では資料写真やおまけ、本編では触れない豆知識も掲載。


「なんと純金に輝くゴージャスなハンコでございました。」
図書館でぱらぱらーっとめくってみたら、 いきなり目に飛び込んできたのがこの言葉でした。 は?…ま、まさかそれって…。 多分、皆様のご想像通りです、はい。 その次の文章がこちら。
「そこに刻まれていたのは、漢委奴国王という文字。」
そうです。あれです。「かんのわのなのこくおう」って、 あの超有名な金印です。うーむ。そりゃまあ、確かにゴージャスではありますな。 とりあえず、この本借りとくか!…ってなものでした。 本書はCDブックで、「語ること」がメイン。 巻末にCDもついていますが、実際はCDを聞かなくても すべて本体に記載されています。 普通の本より字のサイズが2倍どころではない、かなり目に優しい本。 語りそのままの文章なので、テンポもよいです。 強調文字などを使い、語りの雰囲気をも出しています。 CDを聞くよりも読む方が分かりやすい点として、 小タイトルが入っているところが挙げられます。 これはCDには入っていません。(テンポを崩すからかな。) でもこれが意外に面白いです。 例えば第一幕「聖徳太子と大化の改新」の巻にある小タイトル。
「神さま、仏さま、聖徳太子さま」 「和の国ニッポンのはじまりぃ〜」 「ナマイキいわせてもらいます!」 「「ムシしてゴー」する大化の改新」 「お世継ぎさまはどっちだ?」
次は第四幕「元寇、鎌倉から南北朝時代へ」の巻から。
「よくばりフビライ」 「だってカミカゼ吹いちゃったもん!」 「公約破りはイカンぜヨ」 「北か南か…ううむ?」 「「つよぉ〜いお方」の時代へ」
これらの小タイトルで「あ、あれのことね!」と分かる方は…、 全然読む必要ないですけどね(笑)。 まあ、一事が万事、こんなノリです。 全体は11幕の構成で、各章末にはCD未収録のおまけ (上述の小タイトル1つ分程度)の本文が、 ラスト1ページにその章の時代の「うんちくファイル」(ちょっとおもしろ話)と、 簡単な年表が掲載されています。 本文の下には「ものしり道場」として100文字程度の補足が44項目。 それから章扉に2コマ漫画。 これは…ほのぼの系の絵柄で、ちょっと可愛いです。 菜の花は第5幕の信長が一番のヒットでした。 変だよね、うん、変です。 これで本能寺の変の1582年は忘れないです、はい。 で、結局それなりに楽しそうでしょう? 更に下の評価も結構星の数が多いのです。 が、トータルは2+。すみません。意志薄弱な感じで。 まあ…悪くはないのですが。 内容は1時間で語る程度の歴史なので、ざっと流れを通すだけ、という感じ。 中学校でマジメに歴史の勉強をした人なら、特に目新しい情報はありません。 だからこそ楽しめるのかもしれませんが…ちょっと飽きるかも。 それだけです。いや、久々に日本史の流れを読みたいよー、 なんて人にとっては、★4つくらいの価値があるかもしれませんよ。 それはもう、読者のフェイズによりますね。 だからと言って、全然日本史をやったことのない幼稚園児では、 楽しさは分からないかも。習ったばかりの中高生にはテスト対策に(?)、 はるか昔の記憶の奥底だよ、なんて働き盛りの人には、 懐かしく昔が思い出せていいかもしれません。
テーマ : 日本史
語り口 : 講談の語り
ジャンル : 一般書(教養系)
対 象 : 学生〜一般向け
雰囲気 : 完全なる語り
マンガ : いのうえ さきこ
カバーソデ写真 : 横井 洋司
図版作成 : 向井 恵子

文章・展開 : ★★★+
学 術 性 : ★★★+
簡 潔 性 : ★★★★
独 自 性 : ★★★+
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
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