よみもののきろく

(2008年1月…425-430) 中段は20字紹介。価格は本体価格(税別)。 もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  もっと新しい記録
2008年1月の総評
今月の読了冊数は6です。
内訳は長編1、エッセイ・一般書3、ライトノベル2。
コンプ計画中の著者の読了数は森博嗣1、時雨沢恵一1、結城光流1。


さて2008年1月の菜の花的ベストは…該当なし。
以下、高評価順(同評価の場合は読了日順)に簡単に作品紹介します。

 「辞めるなんてもったいない!」       大和賢一郎(評点3.5)
 「ゾラ・一撃・さようなら」         森 博嗣 (評点3.5)

「辞めるなんてもったいない!」は、副題が「入社3年たったら読む本」。
会社、辞めてしまいたい…起業したいよ、起業…なんて思っている人、
結構いそうですよね。そういう人たちに向けて、
「辞めるなんてもったいない!、サラリーマンってこんなにいいんだよ」
という主張をするのが本書です。明日から楽しく働くために。

「ゾラ・一撃・さようなら」は森博嗣の単発長編。
捜査、恋愛、そして暗殺…といった、
ハードボイルド系ミステリです。
気ままに生きる主人公の探偵の仕事を追います。


 「多重人格」                和田 秀樹(評点3.0)
 「少年陰陽師 いにしえの魂を呼び覚ませ」  結城 光流(評点3.0)

「多重人格」は多重人格について、その歴史、メカニズム、
事例、背景などなどを、コンパクトな新書にまとめたもの。
ややハイレベルな記述が多いですが、知っておいて損は無い、
多重人格の情報が詰め込まれています。教養書として是非。

「いにしえの魂を呼び覚ませ」は結城光流のライトノベルで、
少年陰陽師シリーズ第15巻。珂神編の1冊目です。
新章スタートで、まだまださわり、ご挨拶程度といったところですが、
ここから出雲の地での大激闘が始まります。


 「ホームレス中学生」            田村 裕 (評点2.0)
 「学園キノ2」               時雨沢恵一(評点2.0)

「ホームレス中学生」はお笑い芸人・麒麟のボケ役、
田村裕の貧乏自叙伝。母が亡くなった後、田村家解散、
最初は1人で、その後は兄姉と、周りの温かい支援を受けつつ、
芸人になるまでの数年のエピソードです。

「学園キノ2」は時雨沢恵一の「キノの旅」シリーズの
著者本人によるパロディ第2巻です。
同人誌のノリで、はちゃめちゃな展開、
もしもキノが正義の変身ヒーロー、でも正体は女子高生だったら!?
…という、元シリーズとは、まったく違う雰囲気を楽しめる作品です。


以上、今月の読書の俯瞰でした。







425. 「多重人格」     和田 秀樹
2008.01.06 教養書 266P 700円 1998年2月発行 講談社現代新書 ★★★★★
歴史から医学的背景と実際をまとめた教科書


【100字紹介】
 コンパクトな新書に、多重人格の歴史から、解離、
 トラウマや複雑性PDSDのような精神医学的背景、
 更にアメリカと日本の社会病理、
 多重人格の精神鑑定を受けた刑事犯罪の被告の
 症例検討まで盛り込む一般向け教科書


多重人格について、えいや!と詰め込んだ本です。
第1章で歴史、第2章でメカニズム、第3章で事例検討、
第4章は一般の人が抱きやすい3つの疑問について論じ、
第5章で日本で多重人格はどうなるかを書いています。

第1章の歴史は、菜の花は全然知らなかったもので大変勉強になりました。
第2章のメカニズム。メカニズムというよりは、精神医学的に
こういうものなんだよー、という説明みたいな感じかも。
実際、菜の花は「解離」についても全然知識が足りませんでした、ゴメンナサイ、
って感じでした。スプリッティングってそういうことだったのか、とか、
精神分裂病と多重人格ってどういう関係よ?とか、
かなり基本的なことが分かっていなかったのが続々と判明する感じ。
それは菜の花の勉強不足、ということもあるかもしれませんけど(しくしく)、
実際に「多重人格」ということばほどには、
その内実は一般には浸透していないのじゃないかしら、というのは強く感じました。
知らなかったことを知ることが出来る、というのは読書の醍醐味ではありますが、
この内容はもっと一般にも知られていいことかもしれないねえ、と
ちょっとばかり思いましたね。

で、こういう本を読んで情報収集は大切だ!とは思いますが、
ちょっとばかり問題はなきにしもあらずですね。
2点ほど、菜の花にはこの本を誰にでも推しにくい理由がありました。

1つは、ちょっと難しめに書かれていること。
比較的とっつきやすく書いてあるのは分かりますが、
慣れない人だと読みづらそうです。菜の花は途中で少々キツかったですね。
多少、教科書チックすぎる部分があるので、
その辺りで挫折寸前になる恐れがあります。
まあ、教養書なのだからそれくらいは頑張って読もう!ってところでしょうか。

もう1つは、やや古い、というところですね。
何しろ発刊が10年前ですから。医学分野は発展が速い分野でもありますから、
10年前の本は時代遅れもいいところ…の可能性があります。
実際には非専門である菜の花にとっては、
どこがどう変わっていっているかはまったく分かりませんが、
まさかこのまま何も変わっていないことはありえないでしょう。
研究をしているときもですね、絶対に古い論文を読んだら、
新しい最近の論文も読んで、今も通用する内容かどうか、
もしも捨て去られたものならどのような変遷が起こったかを
把握しておかないと無意味になってしまいます。
なので、この本を読むなら必ず、新しい知見の書かれた本を探すべきですね。
もしかすると…180度風向きが変わって、
常識のはずのことが非常識になっている可能性だってあるのです。

というわけで完全には推せないのですが、なかなか面白い本だとは思います。
取っ掛かりとしては…。

ちなみに第3章の事例検討は連続幼女殺人事件のM被告について。
第4章で取り上げられる3つの疑問は、
「多重人格を診断できるか?」「増えているのか?」「治せるのか?」です。
第5章では、何故日本の若者にこれほどまでに「多重人格」が受け入れられたか
(多分、多くの若者が「24人のビリー・ミリガン」をあってもおかしくないこと、
と受け入れたように菜の花にも感じられます)、アメリカとの違いなどの
個人的見解について滔滔と語る、といったところでしょうか。

全体としては文章は並み、ややとっつきにくく、
分かりにくい専門的な説明もありますが、
多重人格について殆ど知識がない人なら、情報収集の一助になりそうな作品です。


テーマ : 多重人格
語り口 : やや筆者の感情寄り
ジャンル : 一般教養書
対 象 : 少し詳しく知りたい一般向け
雰囲気 : PTSD寄り
カバー・イラスト : 国米 豊彦

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
簡 潔 性 : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
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426. 「ホームレス中学生」     田村 裕
2008.01.12 エッセイ 192P 1300円 2007年9月発行 ワニブックス ★★★★★
一家解散!家を失った田村少年の貧乏自叙伝


【100字紹介】
 「これからは各々頑張って生きてください。…解散!」。
 最愛の母を亡くし、家も失い、父まで行方不明。
 兄・姉に迷惑をかけないためひとり、
 公園で暮らすことにした中学生の僕。
 お笑い芸人・麒麟の田村裕の貧乏自叙伝


菜の花は、お笑い芸人・麒麟のファンなので、そのうち読もう!と思っていた作品です。
ベストセラー本なのでブームが過ぎ去った何年か先に…と思っていたのですが、
ラッキーなことに(図書館以外で)手に入れることが出来たので読んでみました。

そうですね、装丁がいいです、とても。巧い!
開いたダンボールの写真をうまく使っていて、
題字も荷物のダンボールにマジックペンで書かれたさりげなさ。
カバーを取ると中は、著者とこの本で重要な役割を果たしている公園の風景が、
ずっと著者を見守ってきてくれたであろう青空を見上げる形で現れます。
何というか、この装丁だけで「やられた!」って感じです。
よく売れた本ですが、やっぱり話題性とあとはこの装丁のお陰では。

麒麟の田村さんはよく昔の「貧乏話」をトークでやっていますけれど
(ただし菜の花の記憶にある限り、ネタではそんなに取り入れていなかったような。
 麒麟のネタづくりは基本的に川島さんがやっているようなので、
 あまりその辺りを前面に押し出すことはないように思いました、今までは)、
それって実際どうだったの?もっと聞きたいなーという、
周囲の声で書かれた本…なのかな。
菜の花もちょっと聞いてみたいかも、な人の一人でありましたし。
その意味ではファンブックなのかも。

内容としては、最初に「衝撃の解散劇」。
中学生の田村少年が家に帰ると、家は差し押さえにあっていたのです。
帰ってきた父・兄・姉が揃ったところで、衝撃的な「一家解散」が言い渡されます。
どんなおとーさんですか!( ̄▽ ̄;)さすが田村父。
一緒に何とかしよう、という兄姉と別れ、ひとり公園生活に入る田村少年。
奇跡的なまでに親切な友人の家族や近所の人々、そして兄・姉に支えられつつ、
何とか芸人になるまでの数年間のエピソードが語られます。
途中で、解散に至るまでの話、母との思い出などが挿入されます。

どうもこの挿入が技巧的だなあ、と。
文章は思いっきり素人。ですが、味があります。
一生懸命つづられたんだな、という思いがこもっているような。
そこに好感が持てるのですが、全体の構成がそれに似合わないような
商業的な雰囲気に誰かが構成作り直したねという感じがして、マイナス。
文体とのちぐはぐさが否めません。
また、文章自体も、時々これは誰かが書き足すか書き直しただろう、
と思うような異質な文章が入っているように思います。
そこだけ巧いんですよ。多分元の文章があって、
それを校正のときに分かりやすく直したんじゃないかな、と思います。
勿論、うまい!というところ全部がそうではないし、
むしろ中心にならない細かいところでの直しが多いように感じますが、
何だか手を入れた感が凄く漂っていて、折角の温かさの中に、
ひやりとした怜悧な空気があるようで嫌な感じがします。キメラっぽい。
自叙伝なのに、人の手が入っているように見えるのが何とも。

読む前は、「もしかしたら麒麟を見る目が変わるかも…」なんて思いましたが、
読了してみたら、これからも麒麟は麒麟、関係ないな、と。
それにしても色々な人生があるものだなあ、と思った一作。
考えてみれば菜の花の人生は、安穏と生きられる選択肢が多かったなーと。
それが客観的に見て幸せかどうかは分かりませんが。
勿論、菜の花は菜の花なりにとても幸せですけれども。



テーマ : 自伝
語り口 : 一人称
ジャンル : エッセイ(自伝)
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 貧乏
アートディレクション
・デザイン
: lil.inc
カメラマン : 奥本 昭久
構成 : 鷲頭 文子、鷲頭 紀子
イラスト : 田村 裕
マネージャー : 稲垣 智彦(吉本興業)
編 集 : 吉本 光里、村上 峻亮
(ワニブックス)
スペシャルサンクス : 田村 研一

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
簡 潔 性 : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
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427. 「学園キノ2」     時雨沢 恵一
2008.01.13 ラノベ 308P 570円 2007年7月発行 メディアワークス
電撃文庫
★★★★★
キノの旅・著者による型破りな同人誌版・2


【100字紹介】
 「キノの旅」「アリソン」著者本人によるパロディ。
 同人誌のノリで、はちゃめちゃな展開。
 もしもキノが正義の変身ヒーロー、
 でも正体は女子高生だったら!?
 元シリーズとは、まったく違う雰囲気を楽しめる作品第2弾


●収録作品●
--------------------------------------------
 口絵「宿題〜真夜中のデッド・リミット」―Dead Limit―
 キノの旅第四部・学園編第四話
  「茶子の爆弾物語」― Tea Breaks! ―
 キノの旅第四部・学園編第五話
  「千の鉄砲を持つ少女」― Role Playing Game ―
 キノの旅第四部・学園編第零話
  「エルメス大地に立つ」― Strap Meets the Girl. ―
 番外編
  「とある静ととあるサモエド仮面のとある夏のとある一日」
    ― a Day of a Dog in Dog Days ―
--------------------------------------------

もう完全に別のお話になっている、キノのシリーズ番外編です。
もはや違いすぎて、何を読んでいるか分からなくなるくらい(笑)。
これはノリこそ同人誌ですが、実際にやったら怒られそうですよー。
著者本人がやるから許されるというか…。
いや、著者本人もあとがきにて、
「いつまで学園キノは続くのか?」という問いに対して

「キレたファンに殴られるまで続けますよ」
と答えるくらいですから…いやはやいやはや。 やたらと明るい(でも鈍い)大食いの女子高生・木乃と、 優秀で二枚目、クールな人気者・静先輩。 シズを憎む二枚目転校生・犬山ワンワン陸太郎。 (そのネーミングはどうかと思う。) しゃべるストラップ・エルメスに、 思いっきり怪しさ爆発の茶子先生と爆弾を投げる少女・ティー。 今回は、変身ヒーローたちは出てる割には目立っていないような。 謎の美少女ガンファイターライダー・キノ、 純白の正義の騎士(←ネーミング可変)・サモエド仮面に、 ワンワン刑事(デカ)ですが、何だか話の破綻っぷりに、 つっこみどころ満載過ぎて、どこをどうやって、 何からつっこんでいっていいのか全然分からない! 分からない間に勢いで終わってる!…そんな感じで。 今回は劇中劇(?)で「アリソン」のストーリーが登場。 でもご多分に漏れず、思いっきり破綻していくわけですが… 凄いことになっています。 最後の番外編だけ「ちょっといい話」で終わっています。 (中盤までは「おいっ」って叫びたいかもしれませんが。) 著者曰く
「お馬鹿な話の中にちょっといい話があると、単品で読むよりじわっとくるよね」
ということで。一応、自覚あったんだ…(前半)。当たり前か。 話には関係ないですが、著者はアメリカ留学経験者なのですね。 しかもそこで、拳銃所持許可とってシグP226(9ミリ口径)を 近所の射撃場で撃ってました、な筋金入りの銃器好き…。(あとがきより) はっ、まさかそのために留学を…!? 1巻のときも書いた通り、 「ああ、私には荷が重過ぎるようだ…」な方は、決してこの本を開かないで下さい。 折角の時雨沢氏のイメージを壊すことはありません、ええ。
菜の花の一押しキャラ…特になし 「平和と自由はタダじゃないんだよ。覚悟と決意が―」 (ストラップのエルメス)
主人公 : 木乃
語り口 : 著者が語る
ジャンル : 異世界ライトノベル
対 象 : 子供〜一般向け
雰囲気 : 同人誌的ノリ
結 末 : まだ続く…のかも
イラスト : 黒星 紅白
デザイン : Toru Suzuki

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★+★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP 時雨沢恵一の著作リスト
428. 「辞めるなんてもったいない! 入社3年たったら読む本」     大和 賢一郎
2008.01.20 一般書 214P 1300円 2005年10月発行 大和書房 ★★★+
会社を辞めて起業する前に、読んで考えよう


【100字紹介】
 給料が安い、上司への恨みがある、会社に対して不満…そんなあなたに。
 会社員であることのメリットを徹底的に使い倒し、
 幸せなサラリーマンになるための視点を養う38の鉄則を紹介。
 会社で給料以外の資産を蓄えよう


副題の通り、「入社3年たったら読む本」かな。
会社、辞めるなんてもったいない!、
サラリーマンってこんなにいいんだよ、という主張をするのが本書です。
どちらかというと「サラリーマンは夢がない、これからは起業だ!」という
風潮が強くなってきたのを受けて「いや、サラリーマンだってこんなにいいんだ!」と
世間に向けて発信していくのが主目的のようです。

会社員のメリットを使い倒しなさい、ということばだと
「ボーナスを貰ってから辞める」とか「最後の1ヶ月で余った有給休暇を使う!」とか
まずは考えるわけですが、そういうことではなくてもっと根源的に、
「勤めていてよかったー」を探していきます。

比較対象は個人経営かな。どちらかというと、一人で起業していくことの
厳しさが際立った内容…になっているような。
しかし、単なる脅しではなく、実際に独立してやっていた人が
こぼしていたことそのままだったりして、
「あー、そんなこと言ってた言ってた!」という感じ。
それなりに妥当性あり。
でも、ちょっと大企業の事情に寄っているような気もしますね。
結構、恵まれたサラリーマンを想定しているように思えます。
人によっては「そういう企業に勤めているならいいけどさ!」という
別の文句が出てしまうかもしれません。

基本的にそれほど奇抜なことは言いません。
ので、大体が「まー、そうだよね」という納得できる内容ですが、
これらを全部悟って働いている人って…結構微妙よね、みたいな。
でも考え方の参考にはなりました。
事実として知らなかったこともありましたし!
雇用保険とか、よく分かっていませんでした。
これで菜の花も、いつか転職したときに、折角の権利を生かせずに
うっかり損をする…なんてことがなくて済みそうです。


将来のことを考えるつもりで読み始めたのに、
気付くと現在のことを考えていそうな参考書。



テーマ : 幸せなサラリーマンになるための鉄則
語り口 : エッセイ風(著者の語りかけ)
ジャンル : 一般書
対 象 : 会社員〜一般向け
雰囲気 : 会社員っていいよー
ブックデザイン : 福田 和雄

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
簡 潔 性 : ★★★★
独 自 性 : ★★★★
読 後 感 : ★★★+

総合評価 : ★★★+
よみもののきろくTOP
429. 「少年陰陽師 いにしえの魂を呼び覚ませ」     結城 光流
2008.01.27 ライトノベル 254P 476円 2006年1月発行 角川ビーンズ文庫 ★★★★★
安倍晴明の孫昌浩の活躍!シリーズ第15巻


【100字紹介】
 時は平安。14歳の昌浩は、稀代の陰陽師・安倍晴明の末の孫。
 昌浩は、お世話になった道反の巫女のもとにお礼に出掛けることに。
 しかしその頃、道反の聖域は謎の襲撃者に侵されていた…
 怒涛の新章スタート、第15巻


13巻で天孤編が完結し、安倍三兄弟の短編集の第14巻をはさみ、
第15巻で新章スタートです。今回は、ここから読み始められなくはないですね。
ただ、ある程度キャラを把握しておくなら最初から読んでおく方が吉。

今回はしばらく昌浩に平和な日々が訪れます。
考えてみると、殆ど間髪入れずに怒涛の日々でしたから、
昌浩が平和に過ごしている時間ってとっても貴重なのでは…。
しかしそんな不穏な雰囲気がそこはかとなく漂う空気を感じ取った
高淤の神、安倍晴明、昌浩、それに兄の成親。
あやしい夢を見、何だか予兆めいたものは徐々に迫ってきて…。

そんな中、「出会い頭の小事件」によって出雲の道反の聖域に出掛けることにした昌浩。
しかしその頃、その不穏な予兆は現実のものとなり、
聖域は、巫女は、守護妖は、そして風音の身体は…。

…というお話で。まだまださわり、ご挨拶代わりといったところ。
さて、敵の正体は?そしてその目的は?
新章、どうなっていくのでしょう?
ついでに新章って何編になるのか!?も気になるところだったりして。

それにしても昌浩ってば、やっぱり怪我ばっかりしてますね。
でもあとがきによると「最近昌浩、怪我が少ない!」という抗議が読者から
寄せられたりなんて話も暴露されていて…も、もしかしてそういう趣味のやからが…!?
いやはや、いやはや。
早く強くなって、怪我なんてしないようになれるといいですね、昌浩。


菜の花の一押しキャラ…安倍 昌浩 「そう言うな。神の言霊だ、ありがたく受け取っておけ」 (高淤の神)
主人公 : 安倍 昌浩
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 歴史オカルト
結 末 : これから続く
イラスト : あさぎ桜
デザイン : micro fish

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
結城光流の著作リスト よみもののきろくTOP
430. 「ゾラ・一撃・さようなら」     森 博嗣
2008.1.31 長編 279P 1400円 2007年8月発行 集英社 ★★★+
孤独で気儘な探偵のハードボイルドミステリ


【100字紹介】
 孤独で気儘な探偵・頸城悦夫が受けた依頼は、
 「天使の演習」という芸術作品を取り戻すこと。
 依頼人の母が、現在暗殺が予告されている
 元都知事に預けたのだという。
 捜査、恋愛、そして暗殺。ハードボイルド系ミステリ


森博嗣氏のシリーズ外、単発長編です。

主人公は探偵の頸城悦夫。気儘に生きる30代、独身。
同じように自由奔放な生き方をしているらしい友人・法輪洋樹の
紹介でやってきた依頼人はお約束のように、若くて美人。
頸城の周りを彩る女性は他にも。
恋というには落ち着いた大人すぎて、
愛というほどには深くないような。
まあ、この手の小説だと、これもお約束な小道具。

依頼内容は探し物ですが、それを持っている元都知事は、
現在世界的に有名な暗殺者のターゲットになっているらしい、と。
タイトルのゾラとは、その暗殺者の通称。
何とか暗殺されてしまう前に、探し物を手に入れて欲しい、というのが
依頼人の希望。決して暗殺を阻止して欲しい、ではないというところが複雑。
何やら、事情はあるようですが…。


感想を言えば、適度に面白い。
とても素晴らしい!というわけではなく、どこをとっても「適度に良い」と。
絶賛するほどではないのに、特に文句をつけるところはないということ。
内容自体が目新しいとか、オリジナリティにあふれるというものではありません。
奇抜なものはむしろ読者を選んでしまうから、売ろう、と思えば
こういう既成の作品から大きく逸脱しないものの方がいいわけです。
製品としては優良ですね。きっとそのように著者本人も書いたのだろうと。

だからと言って、この作品にオリジナリティがないというわけでもありません。
内容や筋には、王道が沢山使われていますけれども、
この作品を書けたのは森博嗣をおいて他にないでしょう。
文章が、森博嗣。もう思いっきり、森博嗣。
必ずしも本筋に影響しないような細かなキャラのセリフまで森博嗣。
そういうもの。

そういえば、別のシリーズ作品で出てきたキャラが、ふっと登場しています。
んー、他の世界ともリンクしているということでしょうか。
いつか繋がることも、あるかもしれない?
シリーズで森博嗣作品を読んでいる人なら、これも一応、
チェックしておいた方がいいかもしれません。


菜の花の一押しキャラ…水谷 優衣 「新しいものを見つけるより簡単だ。一度発見して忘れていたものを探す方がね。」
法輪 清治郎
主人公 : 頸城 悦夫
語り口 : 1人称
ジャンル : ミステリ
対 象 : 一般向け
雰囲気 : ハードボイルド系
装丁 : 岩瀬 聡

文章・描写 : ★★★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★+
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★+
よみもののきろくTOP 森博嗣の著作リスト
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