よみもののきろく

(2007年11月…409-417) 中段は20字紹介。価格は本体価格(税別)。 もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  <もっと新しい記録
2007年11月の総評
今月の読了冊数は9です。
内訳は長編2、エッセイ・一般書4、ライトノベル・絵本3。
コンプ計画中の著者の読了数は森博嗣3、結城光流2です。
まあまあバランスはいい…かな。

さて2007年11月の菜の花的ベストは…

 「使えるレファ本150選」         日垣 隆 (評定4.5)


「使えるレファ本150選」は、参考図書の書評集。
1タイトルにつき1〜2Pを割いて紹介しています。
紹介文が魅力的で、淡々と内容を語るだけでなく、
ちょっと楽しく、ユーモアも交えつつ「読ませる」ものになっています。
是非、傍らにおいて参考にしたい参考図書の参考書。


以下、高評価順(同評価の場合は読了日順)に簡単に作品紹介します。

 「ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法」   福田和也 (評定4.0)

「ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法」は、
批評家や作家として活躍している福田和也の
「わたしはこうしています」な方法を語るエッセイ。
情報収集、整理などのインプットと、文章上達法などの
アウトプットの両方について自分の方法を公開しています。


 「迷路館の殺人」              綾辻行人 (評点3.5)
 「クレィドゥ・ザ・スカイ」         森 博嗣 (評点3.5)

「迷路館の殺人」は綾辻行人の「館」シリーズ第3作。
いわゆる新本格派のミステリ長編です。
4人の推理作家が「迷路館」に招待され、競作を書きます。
全体が作中作になりつつ、更に作中作が登場する複雑な構成。
本作は本流よりも、サイドの謎の方が面白いので、
「先が見えてしまった…」と思っても、是非最後まで読みましょう。

「クレィドゥ・ザ・スカイ」は森博嗣の
「スカイ・クロラ」シリーズ第5弾であり完結編です。
ただし、時系列的には第1作の「スカイ・クロラ」が最後。
空へ戻ることを切望する「僕」の姿を描きます。
完結したのに、未だに色々と多くの謎を残した作品。


 「少年陰陽師 羅刹の腕を振りほどけ」    結城光流 (評点3.0)
 「モリログ・アカデミィ6」         森 博嗣 (評点3.0)

「羅刹の腕を振りほどけ」は結城光流のライトノベルで、
少年陰陽師シリーズ第12巻。天孤編の第4作です。
自らの運命を受け入れていたはずの少女が、
恋心と嫉妬から心に闇を抱いてしまい…。
クライマックスまであと少し、というところです。

「モリログ・アカデミィ6」は森博嗣のブログを再編成したエッセイ。
「WEBダ・ヴィンチ」連載の森博嗣のブログ日記、
「MORI LOG ACADEMY」の文庫化第6巻です。
2007年1−3月の冬から春にかけての日常です。


 「Day&Night 昼も夜も」      森博嗣他 (評点2.0)
 「少年陰陽師 冥夜の帳を切り開け」     結城光流 (評点2.0)

「Day&Night 昼も夜も」は
森博嗣とささきすばるによる夫婦共作の絵本。
4部構成でうち2つが漫画形式。
具体と抽象が両方詰め込まれた大人の絵本です。

「冥夜の帳を切り開け」は結城光流のライトノベルで、
少年陰陽師シリーズ第11巻。天孤編の第3作です。
命の刻限の迫る晴明を救うため、おじいちゃんっ子の
昌浩が必死で考えたり動いたりします。


 「かたづけ学」               加藤博司他 (評点1.5)

「かたづけ学」は、モノだけでなく情報や、
時間、仕事にはては人生までを、
どうやったら片付けられるかを語ります。
もはや一般に言う「かたづけ」の範疇は超えていますが、
この「かたづけ理論」が本書の主眼となっています。


以上、今月の読書の俯瞰でした。








409. 「かたづけ学」     加藤 博司、世古 真一
2007.11.04 ハウツー本 202P 700円 2004年12月発行 青春出版社 ★+★★★
ちらかっているのは何?かたづけの為の理論


【100字紹介】
 いつか、どこかで役立つだろう…そうやって溜め込んできたあなたへ、
 モノ、コト、時間、仕事、人生…ちらかっているものを、
 周期、5W1Hでまとめ、順位をつけて
 「かた、片、形、型、方」で問題解決するための講座


ものって何故か、ちらかっていくのですよね。
まあ、世の中にはエントロピー増大則という、逆らいがたい物理法則が
存在しているので仕方ないといえば仕方ないのですが…、
それに逆らうことこそが生物の本質、本懐である…!
…という気もしないでもないので、何とか収拾をつけてとりまとめ、
かたづけていきたい!という欲求があるわけです。

そのための講座が本書。著者たちが「開発」したという「かたづけ学」について、
基本的にな「理論」と、Q&A形式にとりまとめた「実践」で説明していきます。
第1章でプロローグ、第2章で「基本理論」をやったあと

第3章 衣類のかたづけ学
第4章 食事のかたづけ学
第5章 住居のかたづけ学
第6章 情報のかたづけ学
第7章 お金のかたづけ学
第8章 仕事と時間のかたづけ学
第9章 心のかたづけ学

…と、かたづける対象ごとに説明。
この著者達のいう「かたづけ」が必要な範囲は、定義が大変広いらしいですね…。
衣類や住居のかたづけは分かりますけど、情報とかお金、時間に心って…。
もはや一般に言う「かたづけ」の範疇は超えています。
しかもそちらがどうやら主眼のように見える書かれ方。

かたづけることの定義自体、何だか違っているようで、
そうですね、この本を手に取った人の9割は、
タイトルから期待しているのと違う内容に戸惑う気がします。
このあと「そうか、こういう方法があるんだ!」と思う人と、
「騙された」と思う人の割合は後者の方が圧倒的に多そうですけれど。

問題は、この本の内容かな。構成はまとまりもあってよいと思います。
文章の出来として、一面的過ぎること、決め付けが多すぎること、
押し付けがましいことなどが、読んでいて菜の花の中で強く印象に残ったことでしょうか。
まあ、あくまで菜の花の個人的な印象です。

確かに一理あったり、参考になったりする部分もあります。
きっと著者はこの方法で非常にうまくいっているのでしょう。
しかし、誰かが大根を食べて長生きしたとしても、
大根を食べれば誰でも長生きできるというわけではない、というやつです。
人によってはまったく役に立たない、参考にもならない部分や、
単なる著者の自己満足ではないのか?と思われる箇所が非常に多いので、
読後感的には★1つ、構成のよさなどを考慮して★1.5くらいで。

たまたま菜の花には殆ど読むだけ時間の無駄だった本ですが、
はまる人には、非常によい本かもしれません。

ちなみに。これを講習会などでプレゼンされたら、恐らく非常によい印象を持ちそうです。
多分、この感じで本に出来る人なら、著者のプレゼン能力は相当高いと思われます。
ただ、ちょっと、菜の花には合わないだけ。



テーマ : かたづけ
語り口 : 講座
ジャンル : ハウツー本
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 講習会
カバー写真 : IPS

文章・描写 : ★+★★★
展開・結末 : ★★★★★
簡 潔 性 : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★+★★★
よみもののきろくTOP
410. 「迷路館の殺人」     綾辻 行人
2007.11.06 長編 378P 590円 1988年9月講談社ノベルス
1992年9月発行
講談社文庫 ★★★+
4人の推理作家の競作は…館シリーズ第3作


【100字紹介】
 大作家の奇怪な迷路の館に集合した4人の作家が、
 館を舞台にした推理小説の競作を始めた途端、
 現実に惨劇が起こった。地上と隔絶された地下の館で発生する連続殺人事件。
 逆転につぐ逆転に翻弄される館シリーズ第3作


「十角館」「水車館」に続く、綾辻行人の館シリーズ第3作です。
新本格派の旗手らしい、やたらミステリらしいミステリ。
全体が作中作になりつつ、更に作中作が登場するということで、
構成も結構複雑ですが、謎の方もくるみ式というか、何と言うか。
正直、謎解きが始まるまで謎に気付かなかったという菜の花は、
ミステリ好きを標榜は出来ないな!という感じです…。
そう、油断のならない作品ですよ、これは。

内容は。島田さんに送られてきた1冊の本から始まります。
それは著者謹呈本で、作中にはおなじみの島田潔も登場する「実話を基にした」ミステリ。
早速読み始めるのですが、この作中作がとても凝っていて、
標題紙もあるし、独自の目次もあるし、あとがきに奥付まである!(笑)
個人的には端っこに小さな字で「この頁は乱丁ではありません」と書いてあるところに
密やかに受けました…。確かに、中身を読まないでぱらぱら〜っと見た人だと、
この頁にはびっくりするかもしれません。

作中作の中では、4人のミステリ作家と、評論家に編集者にミステリ・マニアが、
大推理小説作家の邸「迷路館」に招待され、その中で事件が起こります、
というとてもオーソドックスなもの。

まあ、舞台が中村青司の館ということで、密室などについては
シリーズ読者なら「どうせ…」と読めてしまうのでしょうけれど、
雰囲気は、「あー!これぞ古きよきミステリ!」とわくわくは出来る…かな。
しかし「なんだ、先は読めた」と思っても、思わぬところで足をすくわれるかも…。
本作は本流よりも、サイドの謎の方が面白いので、
「先が見えて面白くない」と思っても、最後まで読むことをお勧めしますね。

まあ、菜の花的には…「真相」の1つは「どうなのかなー」と、
思わなくもなかったですが…、でももうひとつは、騙されたなあ…。
もしかして菜の花、読めなさすぎ?



菜の花の一押しキャラ…特になし 「泥酔すると、宇多山さん、芋虫になっちゃうんですよ。    場所がどこだろうと、床に這いつくばって、僕は芋虫だぁ、  原始の時代に帰るのだぁって、殆どわけが分らない」    (舟丘 まどか) 確かにそれはわけが分からない。
主人公 : 宇多山英幸 他
語り口 : 3人称
ジャンル : ミステリ(クローズド・サークル)
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 作中作あり。新本格
結 末 : 事件解決
カバーデザイン : 辰巳 四郎
デザイン : 菊池 信義
解 説 : 相澤 啓三

文章・描写 : ★★★+
展開・結末 : ★★★+
キャラクタ : ★★★★★
独自性 : ★★★★★
読後感 : ★★+★★

総合評価 : ★★★+
よみもののきろくTOP
411. 「Day&Night 昼も夜も」     森 博嗣、ささきすばる
2007.11.07 絵本 62P 1500円 2007年4月発行 中央公論新社 ★★★★★
森夫妻の共作絵本、第4弾。詩と絵と漫画。


【100字紹介】
 森博嗣とささきすばるの夫婦共作。
 「BY DAY」「ONE MORE EGG」
 「蜥蜴」「BY NIGHT」の全4章構成で、中の2つは漫画形式。
 白い王子と猫と白いたまごの物語と、蜥蜴と蠍と蛇の愛の形を描く


「悪戯王子と猫の物語」「蜥蜴」「蛟竜」に続く森夫妻の共作。
相変わらず、謎が多いです…菜の花には読み解きがたいかも。
全4章ですが、特に1つめと4つめが抽象的。
森博嗣らしいというか…。
抽象的なものは、具体的なものより包容力があって、
より上位であると思うのですが、まったく具体例を持たない状況では
共感はしえない感じです。多分、そういう方向性の思考を、
菜の花がしたことがないので読み解けないのでしょう。
近しい感じ方・考え方をしたことのある人には、
何も難しくはないのかもしれません。

2つめと3つめはとても具体的。
漫画形式になっていて、セリフがあって、説明がなされます。
分かりやすいけど…、どうでしょう。
具体と抽象、どちらが好みかは人によるかもしれませんね。

そんなおもむきの異なる4章で構成される、大人の絵本。


主人公 : -
語り口 : 絵本、漫画
ジャンル : 絵本
対 象 : 一般向け…?
雰囲気 : 大人?
Book Disign : しいばみつお(伸童舎)
DTP : ハンズ・ミケ

文章・描写 : ★★+★★
展開・結末 : ★★+★★
キャラクタ : ★★★★
独 自 性 : ★★★+
読 後 感 : ★+★★★

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP 森博嗣の著作リスト
412. 「クレィドゥ・ザ・スカイ Cradle the Sky」     森 博嗣
2007.11.11 長編 314P 1800円 2005年6月発行 中央公論新社 ★★★+
「スカイ・クロラ」シリーズ第5弾、完結編


【100字紹介】
 僕は病院を逃げ出した。
 何となく連絡をとり、何となく頼り、何となく一緒に旅立って。
 そして草薙に殺される、そんな夢。
 空へ戻ることを切望しつつ逃避行を続ける僕、
 追いかけてくる草薙の影。シリーズ第5弾、完結編

本作は菜の花、解釈しきれず。うーん、難しい!
以下、シリーズ全般のネタバレを含みますのでご注意。

本作はスカイ・クロラのシリーズ完結編です。
と言っても、時系列的には第1作の「スカイ・クロラ」が最後であることが
本作の巻末の広告で判明。えーっ、そうだったのですか。
白状しましょう。菜の花は本作の途中まで、
これはスカイ・クロラの続編だと思っていました。
でも、途中で「あれ?」という壁に行き当たってしまって…。

シリーズの他の作品と同様、一人称「僕」で全編が綴られていきます。
「僕」が病院から逃げ出し、記憶が曖昧なままに逃避行を続けるという、
読者も主人公もまっさらの中に放り出されたような、手探り状態での展開。
自分の名前すら思い出せない主人公はしかし、空を飛ぶ感覚は覚えていて、
空を飛びたいという強い願いを持ち続けています。空に帰りたい、と。

一人称でかつ、読者と殆ど同様の分からなさでこの世界に存在する主人公は、
読み手が同一化するには絶好のターゲット。
その主人公がしきりに考えるのが空のこと。
気付くと自分も空を飛んでみたいな…という気持ちになっていきます。


本シリーズはすべて「僕」という一人称で書かれてきました。
いずれも物語の途中で主人公が分かる、という趣向。
1作目「スカイ・クロラ」カンナミ・ユーヒチが主人公ですが、
2作目もそうだろう、と思って読んでいくと途中で「あれ?」になります。
ここまでの4作で、主人公はカンナミ、クサナギ、クリタの3人が登場。
さて、本作は…と思ったら、分からなかったのですよね。
クリタらしいところもある。クサナギとしか思えないところも。
エピローグがカンナミであるのは間違いないのですが…。

それで菜の花、思わずググってしまいました。
あちこちのブログで、みなさま困っていらっしゃいました。
カンナミ=クリタ説が元々あったようですが、
今回はカンナミかクリタだと思っていた人がクサナギとしか思えない場面に突入、
ということで性別がかわっているのですよね。
それで多くの人が混乱をきたしているようでした。
ここでずばっと「こうこうです!」と読み解けるとかっこいいのでしょうが、残念!
菜の花には分かりません。
もしかすると…クリタ+クサナギ=カンナミかも…なんて思ったりもしているのですが。
最初は、わざわざエピソード1、2…と分けるなら、
その1つ1つで主人公が違うかもしれない、と思っていたのですが、
そういう感じはなくて。それで苦肉の策で思いついたのは、こんな案。

全体を通して主人公の身体はクリタ。
エピソード1は本物のクリタの物語。
2の始めの電話ボックスで撃たれたのはクリタの記憶。
クリタは実際に逃げて、撃たれた。
それでクリタの人格は死亡(身体は生きている)。
きっとクリタは満足してしまい、人格崩壊してしまったのではないかと想像。
この時点ではクサナギはまともだったと思うのですが、
何らかの事情でクサナギの記憶(または人格)がクリタに移植されることに。
エピソード2以降、または途中の撃たれたあとからも、身体的にはクリタが主人公。
でもクリタの記憶とクサナギの記憶がごっちゃになりながら浮上するのです。
その不安定さは薬で抑えていて、
サガラはそれを知っていたために、クリタをクサナギとして扱うのです。
ラストでクサナギの記憶がきちんと定着したのを見て「キルドレに戻った」と発言。
最終的に得られた人格は、実際はクサナギの中にいたもうひとつの人格であり、
クリタでもクサナギでもない、カンナミだった、と…。
カンナミはクサナギと「ダウン〜」で一度会っているわけですが、
あのときはちょっと違和感があったのですよね。
あれは現実の出来事ではなくて、
クサナギの中での別人格との出会いだったのでは?という気がしています。
カンナミはそもそも、クサナギの中にいたのです。…なんて。
うーん、駄目かなー。菜の花の読みって、いつもてきとーですからねー。

完結はしていますが、短編だか何かが出ると言う話もあるようですので、
それを楽しみにしましょう。



菜の花の一押しキャラ…特になし 「ブーメラン、飛んでいるか?」
主人公 : -
語り口 : 1人称
ジャンル : 異世界ファンタジー
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 暗め、飛行機、マニアック
表紙写真 : Yoichi Tsukioka
ブックデザイン : 鈴木成一デザイン室

文章・描写 : ★★★★+
展開・結末 : ★★★★
キャラクタ : ★★★+
独 自 性 : ★★★★+
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★+
よみもののきろくTOP 森博嗣の著作リスト
413. 「使えるレファ本150選」     日垣 隆
2007.11.17 一般 262P 780円 2006年1月発行 筑摩書房 ★★★★+
経済から文学まで、役立つレファ本教えます


【100字紹介】
 メールやブログなど、誰もが「書く」時代だからこそ、
 書きもの調べものには欠かせない辞書、事典、年鑑、
 白書、教科書といった参考図書(レファ本)を傍らに置こう。
 あらゆるジャンルを網羅した、ネット時代の必需品

本作は一言で表すなら、図書紹介、または書評集です。
でも、レファ本(参考図書)の紹介集は、見たことがないかも。

今の時代、ネットで検索すれば色々なことが立ちどころに分かります。
分かりますけれど、それは本当に正しいの?
全体を見通していて、分かりやすいでしょうか?
網羅的で、調べたことプラスアルファが分かりますか?
そんなときに登場してくるのが参考図書。
ネット時代の今どき、そんなアナログな、なんて侮ることなかれ。
これが結構、役に立つのですよ…というところからスタートします。

名は体を表すの言葉どおり、本作は「使えるレファ本」を150タイトル選び、
それを1タイトルにつき1〜2Pを割いて紹介しています。
全体を分野ごとに14に分けてそれぞれに数タイトルが入っている形。
紹介されている中身といえば…、
「日本国語大辞典」や「理科年表」なんてレファ本の超定番から、
「韓流ドラマ館」や「ペット六法」なんて、聞いたこと無いけど
引いてみたい人もいるだろうなーというレファ本まで。
硬軟さまざま、分野もかなり網羅。
(個人的には物理系がないぞ!…と思いましたけど、
きっと一般の人がそんなものをひく機会こそがないぞ!とも思う…)

感想としては。これは…使える!確かに。きっと。多分。
知っている本も多いですが、知らない本も結構ありました。
これは是非、この本をレファ本として、それらの本を読みたい!読んでみたい!
思わずそう言いだしたくなるくらい、紹介文が魅力的です。
紹介、と言いつつ、淡々と内容を語るだけでなく、
ちょっと楽しく、ユーモアも交えつつ「読ませる」紹介文になっています。
あー、菜の花もこういう「よみもののきろく」を目指すと、
世のためになるのかもしれません。これから心に留めておこう。

本作は、紹介をする本であって、これだけで完結するものではありません。
しかし、思わず他の本を「いざ!」と手に取らせてしまう力があるのです。
今回は図書館で借りてきて読んでいますが、出来れば購入して、
常に傍らに置いておきたい「レファ本」かもしれません。
どうせなら本作の最後に、この本を紹介しておいてもらいたかったくらい(笑)。



テーマ : 図書紹介(参考図書)
語り口 : 1作につき1〜2P
ジャンル : 一般(書評)
対 象 : 一般向け
雰囲気 : ちょっと面白、お役立ち

文章・描写 : ★★★★
展開・結末 : ★★★+
簡 潔 性 : ★★★★+
独 自 性 : ★★★★
読 後 感 : ★★★+

総合評価 : ★★★★+
よみもののきろくTOP
414. 「少年陰陽師 羅刹の腕を振りほどけ」     結城 光流
2007.11.19 ライトノベル 218P 457円 2005年1月発行 角川ビーンズ文庫 ★★★★★
安倍晴明の孫昌浩の活躍!シリーズ第12巻


【100字紹介】
 時は平安。14歳の昌浩は、稀代の陰陽師・安倍晴明の末の孫。
 いつしか昌浩へ想いを抱き、その隣に立つ彰子への嫉妬を
 つのらせる中宮章子の心の闇に、藤原氏に憎悪を抱く丞按が
 たくみに忍び寄る…シリーズ第12巻。


…菜の花、うっかり間違えて1巻飛ばして借りてきてしまいました。
ので、話が全然分からない…!な状況で読んでいます。
少年陰陽師シリーズは、前の巻とそれほど関わりないことも皆無ではないですが、
大抵は繋がっていますからね…かなり厳しい感じでした。

というわけで、内容ですけど。
同じ日に生まれた異母姉妹である彰子と章子が
ますます話に絡んできている…のだろうか?(何故に疑問形?)
いや、それより何より、何だか知らない間にますます晴明じいさまが
危険な状態に陥っていますけれども。ついでに昌浩もふらふらですが、
昌浩の場合はふらふらがデフォルトだからOKでしょう(ひどい話だ)。

大きな話の一部だなあ、というのが最近とみに感じることですが、
そうですね、今回もこれ1冊での起承転結がはっきりとしているとか、
ストーリー性に富んでいる、ということはありません。
大局を見よってことかな。気分はすっかり連載漫画ですね。
でもまあ…、先がどうなるかなーとは思うからいいか。
こういうの、菜の花は嫌いじゃありませんよ。最後までちゃんと読みますとも。

大きく見たとき今回の「天孤編」は、特に対比が多いかも。
彰子と章子という、見た目はそっくり、運命が百八十度ひっくり返った、
というのも大きな対比ですが、他にも2つ。
謎の天孤・凌壽と晶霞もですね。同じ種族で性格の対比。
そして、運命の対比である昌浩と丞按…。
もしも丞按の立場に昌浩が置かれていたとしたら…。
そう考えるシーンが出てきますが、なかなか壮絶です。
自分だったら…そういうことを考え始めると、
悪役が悪役じゃなくなってくるから不思議です。
それが「自分の身になって考えてみなさい」って小学校の道徳で学ぶやつ?
道徳の授業も、もっと緊迫感と楽しさと、そして哀しさのある、
切迫した事例を取り上げてくれれば分かりやすいのに。
こういうライトノベルなんか使っちゃったりして…。戯言でした。



菜の花の一押しキャラ…安倍 昌浩 「…晴明は、けしからん奴だ」                    「そうだな。けしからん奴だよ」                   「まことにけしからん。…せめて抗議のひとつもさせるべきだ」     「ああ」                              「抗議というのは聞く者がいなければ意味がない。考えてもみろ、     返事がないのに延々抗議だけするといのは、実に不毛で建設的でない」 「そうだな」 「賢明な我は、そんな非建設的なことに時間を割くのは大変に不本意だ」                           (玄武、百虎)
主人公 : 安倍 昌浩
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 歴史オカルト
結 末 : ハッピーエンド、続く
イラスト : あさぎ桜
デザイン : micro fish

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★+★★
キャラクタ : ★★★+
独 自 性 : ★★★+
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
結城光流の著作リスト よみもののきろくTOP
415. 「MORI LOG ACADEMY6 モリログ・アカデミィ6 指揮者必衰のおことわり」     森 博嗣
2007.11.24 エッセイ 350P 670円 2007年6月発行 メディアファクトリー ★★★★★
ブログを再編成した、森博嗣のシリーズ6


【100字紹介】
 「WEBダ・ヴィンチ」連載の森博嗣のブログ日記
 「MORI LOG ACADEMY」の文庫化。
 アンプにはまり、確定申告を進め、リフォーム完了の
 2007年元日からの3ヶ月。
 特別企画は森博嗣×羽海野チカ対談
             
						  
第6巻です。
2007年1−3月の、3か月分の森博嗣の
ブログの内容を再編成しています。
カテゴリ分けはHR、国語、算数、理科、社会、図工、体育、特別企画対談。
いつも通り、内容量は圧倒的にHRが多いです。
今回は冬まっただなかから少しずつ寒さのゆるむ春にかけて。

前巻のすばる氏の風邪に端を発したリフォーム計画ですが、
今回は着々と工事が進み、どうやら完了した模様。
いいですね、リフォーム。菜の花の家はワンルームのアパートですから、
そういうことは出来ませんけれども、ちょっと住みかえを考えてしまいました。
巻末の特別企画の対談で、羽海野チカ氏が

「やりたいことっていっぱいあっても  やってはいけないような気にさせられる何かがあるんですが、  先生のおうちに来て「好きなことしていいんだ」ってわかった」
…と仰っていますが、菜の花もまさに。ああ、そうなの、そうなんです! と思わず本に向かって言いたくなりましたけど、その通りなんですよ。 常識があまりないもので、好き勝手に生きているように見える菜の花ですが (そうだったのか!)、意外に何かに縛られているのです。 そういうときに、森博嗣氏のエッセイなどを読んでいると、 ああ、こういうことをしている人もいて、それがもう楽しそうで、 ちょっと羨ましくって、そうだ、自分ももっとやりたいことをやってもいいじゃん、 誰の目を気にすることもなく、他者からの評価なんてどうでもよくって、 自分がやりたいことをやりたいようにやればいいじゃん、 …なんて思ったりもするのです。 別に森博嗣氏のやっていることをやりたいわけじゃなくて、 同じように生きたいわけでもなくて、ただ「自分の思うことをやってもいいかも」と 後押しされるような、そういう内容です、このシリーズは。 つまり個々の事象から何かを得られる、と期待して読むわけでなく、 そういう全体から漂う雰囲気が欲しくて、思わず読み続けているんだなあ、と 分析している菜の花です。自分に勢いがなくなった、型にはまってきた、と 思い始めたら、読んでみるとよい刺激になるかもしれない作品。
テーマ : 日々の雑感など
語り口 : 日記
ジャンル : エッセイ
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 普通の日記ブログ
装画イラスト : 羽海野チカ
扉イラスト : 笹沼 真人
ブックデザイン : 後藤 一敬、佐藤 弘子

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
簡 潔 性 : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP 森博嗣の著作リスト
416. 「ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法」     福田 和也
2007.11.25 ハウツー本
(エッセイ)
229P 1250円 2001年6月発行 PHP研究所 ★★★★
どう読み、どう書くか?プロの「私の方法」


【100字紹介】
 世にあふれる情報をいかに吟味し、集め、読み、
 整理し、アウトプットしていくか?
 更にその効率を上げるためには「自分なりのスタイル」が必要だ。
 プロの物書きの「私の方法」が、あなたの助けになるかもしれません。


これはもう、名は体を表すようなタイトルでした。
まったくその通りのことが書かれています。
ひと月百冊読み、三百枚書くという「福田和也」の方法を紹介するエッセイ。

最初にごめんなさい。菜の花、この著者名を存じ上げませんでした。
えっと、有名な方?でもひと月三百枚だなんて、
これだけの量を書く方なら、きっとあちこちでご活躍のことでしょう。

菜の花が好感を持てたポイントは、
これが「私の方法」であって、それを読者にもやりなさいよ、
という姿勢ではないところでしょうか。
「私はこれでうまくいってる、よかったら参考にして下さいな、うん」
という雰囲気が、押し付けがましくなくて、
「じゃ、この辺り拾わせてもらいますわー」
という素直な気持ちで読めました…って、もう、菜の花って天邪鬼さんなんだから。
(と可愛く言ってみた。)

内容としては、第I部「どう読むか」で本の効率的な読み方や、
普段自分がどのようにして本の情報をチェックしているか、
どう情報を収集しているか、を紹介。
立ち読みとか、抜書きとか、更には神保町の歩き方から、
取っていた新聞をやめたエピソードまで幅広く。
そして第II部で「どう書くか」として、取材の仕方、
インタビューの実際や、文章上達の「近道」、
そしてジャンルの幅を効率よく広げるための心がけなど。

読み方に関しては、非常に目新しいことが書いてあるわけではないですが、
そうか、この人はこうやっているんだ、という感じです。
文章がですね、読ませてしまうんですね。
一応ハウツー本としていますが、それよりはエッセイですね。
交えられるエピソードとの配分がよいらしく、
さくっと読めます。ちなみに菜の花にしては珍しく、
(時間がなかったせいもありますが)まとめて2時間で通読しました。
大抵、中断を入れて数日で読むのですけれど、
読みやすいため、中断の必要はなかったですね。

となると、ここで気になるのは第II部の文章上達の近道、でしょうか。
こういう文章を書くこの人の文章上達法とは何なのか。
それは、自分がよいと思う他者の文章の分析によって、
自分が何を「よし」とし、何を目指すべきかを定めること、だとか…。
これは結構、目からうろこでした。そうか、文章が巧くなりたい、と思いますけど、
具体的にどういう文章が巧いのだ?ということを意識する人は少ないかも。
菜の花も、ぼんやりと「あんな感じ?」という像はありましたが、
明確な目標を打ち出せてはいなかったなあ、と。
そしてこれを読んで気付いたのは、文章の巧さには「絶対」がないのかもしれない、ということ。
まあ、巧い人は巧いんですけど、何というかですね、
世界共通の、唯一目指すべき理想があるのではなくて、
自分が何を「よし」とするかが必要なんだってことでした。
まあ…気になったらですね、菜の花の感想を読んでいる暇があったら、
とにかく本書を紐解くことですね。それが一番「近道」です(笑)。

インタビューや取材の方法など、菜の花が今まで触れたことのない世界もありました。
これは…、社会科学系の人なら卒論なんかで応用できちゃうかもしれません。
ジャンルを広げようと何気なく手に取った本でしたが、意外に当たりだったかも。
ハウツー系は今まで、殆ど外ればかり引いてきましたが、今回は勝ったな…うん。

そうそう、書評家をやっている人のせいか、批評家のお役立ちポイントも書かれていました。
本もCDも、様々な作品が世にあふれかえっている昨今、その道のいいガイドを手に入れるのは
非常に有用な方法で、自分と感性のあう批評家をガイドさんに出来るといいね、というような。
最近は、プロではないブログ上の批評家も増えていますね。
菜の花もいつか、そういう「この人がそう言うなら…」と言ってもらえるような文章を
書けるようになるのを目指す!というのもありかも。。。
今は単なる独り言と化してますからね…。目標は必要か。
ちょっと考えてみますかねー、このブログやサイトの将来のことなど…。
(な、何をする気だ…!?)



テーマ : 情報収集と文章作成法
語り口 : エッセイ
ジャンル : ハウツー本(エッセイ)
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 私の場合
装丁・本文組版 : 石間 淳
表紙・本文写真 : 福田 和也

文章・描写 : ★★★★
展開・結末 : ★★★★
簡 潔 性 : ★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★

総合評価 : ★★★★
よみもののきろくTOP
417. 「少年陰陽師 冥夜の帳を切り開け」     結城 光流
2007.11.30 ライトノベル 248P 476円 2004年10月発行 角川ビーンズ文庫 ★★★★★
安倍晴明の孫昌浩の活躍!シリーズ第11巻


【100字紹介】
 時は平安。14歳の昌浩は、稀代の陰陽師・安倍晴明の末の孫。
 命の刻限の迫る祖父を助けようと懸命になる昌浩は、
 彰子と中宮・章子とともに二人の天狐の確執と
 怪僧丞按の攻撃に巻き込まれていく…シリーズ第11巻。


前回、うっかり12巻を先に読んでしまったので、
このあとの話を知ってしまっている菜の花です。ちょっとだけ、とほほ。
でもゴールは知っていても、何が起こるかなあ、どきどき、
の気持ちだけは何とか持ち続けようと努力はしましたとも。

さて、今回のあらすじですが。
晴明、あいかわらずふらふらですが、ちょっと頑張ってます。
でもその命は風前の灯火。口では色々言っていますが、やっぱりじい様っ子の昌浩は、
何とかその命を繋ごうと必死で考えたり動いたりします。
そんな中、丞按は中宮・章子を異空間へ連れ去って自分の目的を果たそうとし、、
天孤の凌壽は同じところへ彰子を連れ出して晴明を引っ張り出して、
それを利用して晶霞をおびきだそうなんて回りくどい手を使ってくるし。
ちょっとばかり話が交錯して複雑そうに見えますが、
まあそれほど難しくはありません。
この交錯の部分の描き様が、少々テンポが悪いかな、と感じました。
ちょっとばたばたしていて、流れがいまいち。もう一息。
逆に面白いなーな部分は、キャラもの書きって感じの部分かな。
比較的平和なところが、くすりと笑えるファニーな感じ。

動静と起伏は結構ありますが、これで綺麗に起承転結、というよりは、
大きな物語の一部、という感覚はずっと続いています。
この次の巻は先に読んでしまったので、その次はどうなるかなーということで。



菜の花の一押しキャラ…安倍 昌浩 「自覚ないだろうから教えてやるが、           お前いま考えてること全部口に出して言ってるからな」                     (もっくん)
主人公 : 安倍 昌浩
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 歴史オカルト
結 末 : 何とか解決、続く
イラスト : あさぎ桜
デザイン : micro fish

文章・描写 : ★★+★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
結城光流の著作リスト よみもののきろくTOP
もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  もっと新しい記録