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(2007年10月…400-408) 中段は20字紹介。価格は本体価格(税別)。 もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  もっと新しい記録
2007年10月の総評
今月の読了冊数は8でした。
内訳は長編3、エッセイ1、ライトノベル4。
コンプ計画中の著者の読了数は森博嗣2、結城光流3、壁井ユカコ1です。
殆どイレギュラーなものは読んでいないということですか…。
もう少し、新しい空気を入れた方がいいですね。

さて2007年10月の菜の花的ベストは…

 「グレイヴディッガー」            高野和明 (評定4.0)
 「千里眼」                  松岡圭祐 (評定4.0)
 「真紅の空を翔けあがれ」           結城光流 (評定4.0)

何と3作が同点。

「グレイヴディッガー」は高野和明の長編サスペンス。
骨髄提供のための入院を控えている元悪党が、
命の危険を感じ、それでも何とかドナーとしての役目をまっとうしようと
タイムリミットまでに逃避行をしながら病院を目指します。
彼を追いかけてくるのは謎の一団と、謎の殺人鬼と、警察。
追いかける側と追いかけられる側の様々な視点が入り乱れ、
息つく間もないスピード感で駆け抜ける、ミステリ仕立てのサスペンスです。

「千里眼」は松岡圭祐の長編サスペンス。
主に子供を受け持つカウンセラーであり、元自衛官でもある
岬美由紀が主人公。エンターテイメント性が豊かで、
とにかく、面白ければ何でもいいから放り込んでおこう!という
ごった煮的雰囲気ですが、それで実際面白いという作品。

「真紅の空を翔けあがれ」は結城光流のライトノベルで、
少年陰陽師シリーズ第9巻。天孤編の第1作です。
前半は悲しみスパイラルが存分に楽しめます(?)。
全体にまとまりがあり、笑いどころも多い巻です。


以下、高評価順(同評価の場合は読了日順)に簡単に作品紹介します。

 「少年陰陽師 うつつの夢に鎮めの歌を」  結城光流 (評点3.0)
 「キーリIX 死者たちは荒野に永眠る(下)」壁井ユカコ(評点3.0)
 「モリログ・アカデミィ5」        森博嗣  (評点3.0)
 「少年陰陽師 光の導を指し示せ」     結城光流 (評点3.0)
 「イナイ×イナイ」            森博嗣  (評点3.0)

「うつつの夢に鎮めの歌を」は結城光流のライトノベルで、
少年陰陽師シリーズ第8巻。番外短編です。
もっくんとの出会いや、成親の馴れ初め話など、
ファン必見の4つの短編を収録しています。

「キーリIX」は壁井ユカコのライトノベルで、
キーリシリーズ第9巻にして最終作。これで収束。
すべてのキャラに結末を、そして場合によっては始まりを。
思わず、しばらく余韻に浸りたくなります。

「モリログ・アカデミィ5」は森博嗣のブログを再編成したエッセイ。
「WEBダ・ヴィンチ」連載の森博嗣のブログ日記、
「MORI LOG ACADEMY」の文庫化第5巻です。
2006年10−12月の秋から冬にかけての日常です。

「光の導を指し示せ」は結城光流のライトノベルで、
少年陰陽師シリーズ第10巻。天孤編第2作です。
彰子の身代わりで中宮になった章子が登場、
そんな中、晴明が倒れるという事件が…な巻です。

「イナイ×イナイ」は、森博嗣のXシリーズ第1作。
美人双子姉妹に、広大なお屋敷に、更に地下牢まで出てきて、
密室殺人事件!…という何ともトラディショナルな雰囲気のミステリ。
しかし、読み終わってみるとやっぱり森博嗣だった…!という作品。


以上、今月の読書の俯瞰でした。








401. 「少年陰陽師 うつつの夢に鎮めの歌を」     結城 光流
2007.10.01 ライトノベル 255P 457円 2003年10月発行 角川ビーンズ文庫 ★★★★★
安倍晴明の孫・昌浩の活躍!シリーズ第8作


【100字紹介】
 時は平安。13歳の昌浩は、
 稀代の陰陽師・安倍晴明の末の孫でありながら
 見鬼の才が全くない。都外れで打ちひしがれていると、
 目の前にぼとっと白い物の怪が落ちてきた!?
 4つの番外短編を収録した、シリーズ第8作


今回は番外編。
時間軸もばらばらです。

●「霧の籬を吹き払え」
 安倍晴明の孫でありながら、見鬼の才が全くない昌浩。
 何とかして別の道を模索しようとするも何の道にも才能が見出せない。
  打ちひしがれていると、目の前にぼとっと白い物の怪が落ちてきた…。
  
 <感想>
 時間軸としては、今までの作品の中で一番過去となります。
  まだ昌浩が陰陽師見習いにすらなっていない、最弱の頃。
 もっくんとの出会い(と昌浩は思っている)の場面でした。
 アニメでは確か、冒頭に配されていました。
 よわよわの昌浩もなかなか…。
  
 評定:★★★★★


●「朧の轍をたどれ」
 近頃都にはやるもの。謎の暴走車。
 加冠役で後見人である藤原行成がこの車の化け物に襲われたと聞き、
 お見舞いに向かった昌浩。その帰りに当の妖と鉢合わせになった。
  
 <感想>
 時間軸としては、3巻と4巻の間。窮奇編が完結した後。
 昌浩って、こんなに気が強かったのですねー。
  確かにそういうところありましたけど、ここまで一直線だっけ?
 驚きの一面、ということで。
  
 評定:★★+★★


●「うつつの夢に鎮めの歌を」
 人が行き交い、役人が走り回る年の瀬。
 来客から身を隠すため、急遽安倍邸から無人の邸へ移った藤原彰子。
 しかしこの邸には、さる姫君と笛師との、哀しい因縁が眠っていた…。
  
 <感想>
 時間軸としては、5巻と6巻の間。風音編が真っ只中。
 彰子がようやく活躍します。こうしてみるとこの子、
 昌浩に会いさえしなければもっと賑やかに生きられたのでは…と
  思ったりしますけれど、この穏やかな性格だとやっぱりこちらの方が
  あっているのかもしれないねーと、複雑な気持ちに。
 小事件ですし、結構ベタかもしれませんが、陰陽師らしい作品かな。
  
 評定:★★+★★


●「玉箒は愁いを祓う」
 新雪の静謐な貴船の聖域に踏み込んで来たものがいる。
 良い酒を携えてやってきたこの男、安倍晴明。
  神と陰陽師の、静かな酒宴。
  
 <感想>
 10ページにも満たないサイドストーリー。
 こういう断片的なストーリーを積み上げるのって、
 作者も結構楽しいんじゃないかなーといつも思いますね。
 昌浩ももっくんもいない、見守り役の酒宴というのも
 なかなかに乙なもの。
  
 評定:★★★★★


菜の花の一押しキャラ…安倍 昌浩 「お前もそろそろ、己れを人だと空音を吐くのをやめたほうがよさそうだな」(高※神) ※雨冠に下が龍
主人公 : 安倍 昌浩
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 歴史オカルト
結 末 : 一件落着、続く
イラスト : あさぎ桜
デザイン : micro fish

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★+★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
結城光流の著作リスト よみもののきろくTOP
402. 「キーリIX 死者たちは荒野に永眠る(下)」     壁井 ユカコ
2007.10.03 ライトノベル 281P 550円 2006年4月発行 電撃文庫 ★★★★★
すべての人に結末を…シリーズ最終作第9巻


【100字紹介】
 …もう少し、もう少しだけこっち側にいてもいいかな。
 もう少しだけ、キーリと一緒にいてもいいかな…。
 首都の騒動は、様々な人々の悲しみと安堵、
 終わりと始まりをはらみつつ収束した。
 シリーズ第9巻にして、最終作

「キーリ」の最終巻です。そうか、ついに終わりか。
何と言うか…、らしい、と言えばそうですし、
最初の巻を読んだときに予想できたか?と言えば
いやまさかそんな、こんな終わり方になるとは
予想だにしなかった、とも言えます。

最終巻なので、それぞれのキャラに結末が用意されています。
つまりは「終わり」、人によってはこれからの希望というか、
予感というか、そう「始まり」も。

ユリウスやシグリ、神官さんなどの「ふつーの人たち」には勿論、
ベアトリクスやユド、そしてキーリとハーヴェイ、兵長にも。

兵長は、順当に。勿論、悲しいことは悲しいですが。
ユドに関しても、うん、これはありだよね、という予想の範疇かも。
ベアトリクスは…いや、前巻の書きっぷりを見て、もしかしたら、
という覚悟はありましたけどー、何と言うかですね、
予想の下限をいかれてしまった…、という感じです。
他の結末も見てみたかったな、とも。

キーリとハーヴェイは、最終的にそういう結末を選んだんですね、という感じ。
きっと他のどんな落とし方をしても、誰かが「えー」と言いそうですから、
本当の最後を読者に委ねるような終わり方は、うまいかも。
そう来たかー、でももっと読みたい!という気持ちもありますが、
書ききられてしまったらそれはそれできっと不満だった気がするので。


ところで途中で幻想小説になっていてびっくりしていましたよ。
雰囲気変えてきたなーって。絶対著者の趣味の世界が入っている、というような。
そのあとの収束部分に関しては、ちょっと素人っぽい感じが。
書きたいところは分かりますけど、微妙。
個人を中心にしたストーリーテリングに関してはレベル高いなーと思いますが、
どうも組織とか、世間一般とか、人の集合体に関しては、
やや甘いというか、個人プレイっぽくなりがちなイメージが…。
著者さんの今後の課題かもしれないなー、と個人的には思います。
ああ、でもこの方、このシリーズがデビュー作ですよね。
出てきていきなりこれですものね。将来、めちゃめちゃ楽しみですね。


というわけで、シリーズ終了。何だかとても淋しいです。
しばらくは余韻に浸りたいですね、これ。


菜の花の一押しキャラ…ハーヴェイ 「…−リと…会えてよかった。…今の時代に生きててよかった。」(ハーヴェイ) いい言葉だー(T-T)。ま、実際は生きてないんですけどね。
主人公 : キーリ/ハーヴェイ他
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 暗め、幻想、退廃的
結 末 : 淋しい感じ、でも明るめか?
イラスト : 田上 俊介
デザイン : Yoshihiko Kamabe

文章・描写 : ★★★+
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
壁井ユカコの著作リスト よみもののきろくTOP
403. 「グレイヴディッガー」     高野 和明
2007.10.08 長編 470P 667円 2002年7月講談社
2005年6月発行
講談社文庫 ★★★★
連続猟奇殺人事件と、決死の逃走・追跡劇!


【100字紹介】
 骨髄ドナーとして移植を控える、改心した悪党・八神は
 連続猟奇殺人事件に巻き込まれる。
 患者を救うべく命がけの逃走を開始した八神を追う者たちと、
 更にそれを追う謎の殺戮者。
 首都全域で繰り広げられる決死の追跡劇


これは…凄いスピード感ですね。
著者は高野和明氏。以前にデビュー作「13階段」を拝読しましたが、
重くて、やりきれなさがある一方、非常に重厚で素晴らしい傑作でした。
本作は、「13階段」よりは少しだけ明るい道が見えていますが、
でも読んでいる途中のこの息苦しさは共通するものがあるかもしれません。

そう、読むほどに苦しいんですよね、この作品は。
様々な視点から話が進むタイプのものですが、
基本は逃げる八神視点、それから刑事視点。
これが綺麗に、逃走者と追跡者だと言うなら単純なのですが、
追跡者はそれだけではなくて…、というところが複雑、かつ
様々な謎を投げかけてくれているのです。
八神…を追いかける謎の一団…を追いかけている何者か…というのを
知らずに更に追いかけている警察、というところでしょうか。
複雑です。視点は端っこと端っこだけなので、
間が分からない分からない。
お陰で単なる追跡劇に留まらず、ミステリとしても非常に面白いのです。

追跡者達は待ってはくれず、息つく間もなく首都を駆け抜ける八神、
同時進行で事件の核心に迫っていく刑事たち。
八神は逃げ切れるのか…!?刑事は事件の全貌をつかむことが出来るのか!?
そして、この事件の真相って一体、何なんだ…!!
途中で読みやめていられないほどに読者はひきこまれ、
そして胸を痛めつつも読み進めずにはいられない、
そんなスピード感と緊張感の持続する作品でした。


それにしても解説には驚かされましたよ。
この物語の中で重要な役割を果たしている「グレイヴディッガー」の話、
これがまさか作者の創作だったなんて…。菜の花、てっきり史実かと…。
最後の最後で大どんでん返しをお見舞いされた気分でした。
本当に凄い作家さんは、読者が騙されたのに気付かないうちに
騙してくれるものなのですね…あー。



菜の花の一押しキャラ…越智警視 「昼間に夜逃げするなんて不可能でしょ?」(岡田 涼子) つっこみ、ごもっとも。
主人公 : 八神 俊彦ほか
語り口 : 3人称
ジャンル : サスペンス
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 逃亡系+刑事モノ
結 末 : 一件落着
解 説 : 西上心太
カバー装画 : 西口司郎
カバーデザイン : 多田和博

文章・描写 : ★★★+
展開・結末 : ★★★★
キャラクタ : ★★★+
独 自 性 : ★★★+
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★
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404. 「千里眼」     松岡 圭祐
2007.10.13 長編 573P 657円 1999年5月小学館
2000年4月加筆発行
小学館文庫 ★★★★
謎の新興宗教団体のテロと催眠を武器に戦う


【100字紹介】
 謎の新興宗教団体のテロにより、
 横須賀基地からミサイルが政治の中枢へ発射される!?
 解除パスワード解読を依頼されたカウンセラー岬美由紀は、
 自分の患者がこの団体に関係しているらしいことを知り、捜査に乗り出す


大作ですね、これは。
この著者の作品で菜の花が既読なのは「催眠」です。
あれは面白かったですね。特に巧さは感じないのに、面白いのです。
本作も、その点では同じかも。凄くここが巧い、という点はないのに、
全体として読みやめられない面白さがあります。
どうやらそういう作風らしいですね。

主人公は岬美由紀。主に子供を受け持つカウンセラー…ですが、
なかなか凄い過去をお持ちのようで。何と、最初の事件で、
横須賀基地に行くことになるのですが、それは彼女の経歴が深く関わっています。
それは…、元自衛官。しかも防衛大出の成績優秀なエリートで、
航空自衛隊で戦闘機のパイロットをしていたというスーパーな前職。
この前職で学んだことは、物語のあちこちで生かされています。
あの場面でも、その場面でも、それにラストも!
この経歴なしであの超アクションな、
クライマックス・エピソードはなかったでしょうね。

それにしても、エンターテイメント性豊かです。
ジャンルなんか知ったことかくらいの縦横無尽な展開。
あるときは専門書なみに心理について語り、
またあるときはミステリ小説顔負けの推理を披露し、
そしてまたあるときはどこのファンタジーですか!くらいのアクションを…。

加えて、人間関係も豊かに描かれます。
カウンセラーとして受け持つ子供達やその親との交流、
上司であり師である人との関係、
どうにもいけすかない雰囲気の刑事とのやりとり。
どんでん返しもありつつ、様々な色合いの関係が満載です。

とにかく、面白ければ何でもいいから放り込んでおこう!という
ごった煮的雰囲気ですが、それで実際に面白いのだからよいですね。
流石に、売れただけあります。
続編があるということなので、それを読むのが楽しみです。



菜の花の一押しキャラ…特になし 「わたしの人生はわたしが決めます!」(岬 美由紀)
主人公 : 岬 美由紀
語り口 : 3人称
ジャンル : サスペンス
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 推理あり、アクションあり
結 末 : 一件落着
カバー写真 : 魚住誠一
カバーデザイン : 宮川千春

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★
キャラクタ : ★★★+
独 自 性 : ★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★
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405. 「少年陰陽師 真紅の空を翔けあがれ」     結城 光流
2007.10.13 ライトノベル 254P 457円 2004年2月発行 角川ビーンズ文庫 ★★★★
安倍晴明の孫・昌浩の活躍!シリーズ第9作


【100字紹介】
 時は平安。14歳の昌浩は、稀代の陰陽師・安倍晴明の末の孫。
 現世へ舞い戻ってきた昌浩は、命の代わりに「眼」を失っていた。
 兄とともに異常事態が起きている村へ派遣されるが、
  苦戦を強いられる…シリーズ第9巻。


前作は短編集で番外編だったのでおくとして、
第7巻で非情な決意をかため、三途の川まで行ってしまった昌浩、
戻ってきたら色々と失って、失意の底に沈むことになってしまいました…な9巻。

大切な相棒は記憶を失っていて昌浩に冷たく当たるわ、
陰陽師として必要不可欠な見鬼の才は失っているわで散々です。
まあ、前者の原因は思いっきり昌浩なので、自業自得であるのですが。
それゆえにますます追い詰められる昌浩…というマイナス・スパイラルが
存分に楽しめる前半…って、いや楽しみたくないですけど!

それにしても紅蓮、やってくれすぎ。
何もなければこういうキャラだったのですね、元々。
よかったねえ、昌浩がいてくれて、と言ってあげたいところです。
紅蓮の幸せのためにもね。

それにしても十二神将たちはすっかり、昌浩になじんで…。
菜の花は嬉しいですよっ。きっと多くのファンのみなさまも
同じ気持ちに違いない!ほんと。色々辛いこともあるけれど、
いいこともあるぞっ、昌浩!頑張れ!って感じです。

そういうわけで前半はとにかくひたすら悲しみスパイラルですが、
成親にーちゃん(昌浩の上の兄)登場で一転。にーちゃん、やりますね!
このキャラ、昌浩父にも似たような…でも更に素敵。素敵すぎ。
にーちゃん登場後はともに事件解決に向かいますが、
前半でページを使ってしまっていますのでいつもよりは短め。
短めだからこそというべきか、結構まとまっていますけれど。

そう、本作はなかなかまとまりがあっていい感じです。
うまく描写されていますし!
ということで、このシリーズで初の★4つをつけてしまいました!
いや、この直前に読んだ本がたまたま★4つ連続だったため、
余計にそういう気分になった可能性も高いのですが。
ま、こっそり登場の謎の新キャラなんかもいますし、
新シリーズへの期待もこめて、ということで。

それにしても…、晴明の親ばか…じゃない、爺ばかっぷりには
微笑ましいを通り越して思わず爆笑でした。
あとは、ところどころで登場する十二神将のお茶目キャラにも。
色々と笑いどころ(?)のある第9巻。



菜の花の一押しキャラ…安倍 昌浩 「いいか、昌浩。あれは紅蓮じゃ、紅蓮」           「おいおい、だからまだ無理だろうて」            「お前はいいから黙らっしゃい。紅蓮、紅蓮。紅蓮だぞ、昌浩」 (安倍晴明、紅蓮) 昌浩が赤ん坊時代の晴明&紅蓮…お、親ばか?
主人公 : 安倍 昌浩
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 歴史オカルト
結 末 : ハッピーエンド、続く
イラスト : あさぎ桜
デザイン : micro fish

文章・描写 : ★★★★
展開・結末 : ★★★+
キャラクタ : ★★★★
独 自 性 : ★★★+
読 後 感 : ★★★★+

総合評価 : ★★★★
結城光流の著作リスト よみもののきろくTOP
406. 「MORI LOG ACADEMY5 モリログ・アカデミィ5 なんとなくクリスマス」     森 博嗣
2007.10.26 エッセイ 356P 670円 2006年12月発行 メディアファクトリー ★★★★★
ブログを再編成した、森博嗣のシリーズ5


【100字紹介】
 「WEBダ・ヴィンチ」連載の森博嗣のブログ日記
  「MORI LOG ACADEMY」の文庫化。
 リフォームすばる氏とともに歩む2006年秋。
  5回にわたる特別講義は、薬剤師で、メフィスト賞作家の高田祟史氏。
             
						  
第5巻です。
2006年10−12月の、3か月分の森博嗣の
ブログの内容を再編成しています。
カテゴリ分けはHR、国語、算数、理科、社会、図工、体育、特別講義。
いつも通り、内容量は圧倒的にHRが多いです。

今回は秋から冬にかけて。
数年前にインターネットで買った(え、そうだったの!?)
築30年の現在の森宅を、今回は水まわりを中心に改装です。
何でも、期間中に病気をしたすばる氏が、
快復後に人格が変わってリフォームに張り切り始めたらしいです。

その他は、ラジオやオーディオ工作を盛んにしていたり、
有名モデラの工房などを訪問したりといった特徴はありますが、
基本的には特に大きな事件もなく、ただ淡々と文章を書いて、
趣味に没頭し、生活する姿が描かれています。
いや、描いているだけで、実はこっそり大事件が
裏で勃発しているかもしれませんがそれは描かれないと。

特に、この巻はこうだった、という特記することはないですね。
この淡々とした、変わらなさが人気の秘訣かな。
あー、毎日に疲れちゃったな、というときに
ぼけーっと読むには、とてもいいです。
高揚されるわけでもなく、突き落とされるでもない、
でも何となく、頑張ろうかな〜という気持ちになれる作品。

特別講義は高田祟史氏。
かつて塾講師をクビになったらしいですが、
このブログにくると、一番先生らしい先生だったりして…。
かなり興味深かったです。



テーマ : 日々の雑感など
語り口 : 日記
ジャンル : エッセイ
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 普通の日記ブログ
装画イラスト : 羽海野チカ
扉イラスト : 笹沼 真人
ブックデザイン : 後藤 一敬、佐藤 弘子

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
簡 潔 性 : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP 森博嗣の著作リスト
407. 「少年陰陽師 光の導を指し示せ」     結城 光流
2007.10.28 ライトノベル 252P 457円 2004年6月発行 角川ビーンズ文庫 ★★★★★
安倍晴明の孫昌浩の活躍!シリーズ第10巻


【100字紹介】
 時は平安。14歳の昌浩は、稀代の陰陽師・安倍晴明の末の孫。
 相棒・もっくんと共にようやく都に戻った昌浩を待つのは、
 晴明が倒れたという衝撃の知らせだった。
 昌浩に、そして晴明に迫る命の危機…シリーズ第10巻


色々失った出雲行きでしたが、まだ完全復帰できないでいる第10巻。
しかも気付かない間に「天孤編」に突入していました。

事件としては、彰子の身代わりに中宮となった章子が、
病に臥せっていることでしょうか。
今回からのシリーズはきっと、彰子と章子がフューチャーされる予感ですね!

彰子と章子は藤原道長の娘として、同じ日に生まれた異母姉妹。
彰子が本妻の子として生まれて将来帝に嫁ぐべく育て上げられたのに対し、
章子は隠し子として誰にも知られず、ひっそりと育てられたという境遇の違い。
それが、彰子が入内できなくなったため、その運命が変わってしまった、
というのがシリーズ初期の方で起こった事件だったわけですが。
ついに章子の方も紙面に登場!です。
でも渦中の人のはずが、あまり登場せず。。。

今回はむしろ、何だか分からないけど天孤が大盤振る舞いで登場し、
しかも天孤の血縁が〜ということで大変な事態に陥ってました。
晴明も昌浩も危険です。さあ、どきどきして読みましょう!と。

でも今回は特に読みどころがないかも。
起承転結的にもいまいちで、シリーズの1巻分でありますよ、という感じ。
いや、もちろんふつーの漫画の連載よりもちゃんとオチは付けてくれていて、
まとまりがないとまでは言えませんけれども…、
それほど盛り上がらなかったかも。
いや、大変だったのは大変だったと思うんですけど!
初登場十二神将もいましたしねー。(←喜びポイントらしい)
今回は登場人物紹介では初キャラはなしでしたけど、
挿絵にいましたよ!初登場・天后!わー、ぱちぱちぱち。

まったりと読むには…ちょっとハードすぎるかもしれませんけど、
まったりと読み流す系かもしれない一作。
それにしても昌浩は強いのか強くないのか全然分からない。



菜の花の一押しキャラ…安倍 昌浩 「ほっほっ。それに、贅沢は敵贅沢は敵。                    慎ましやかにひっそりと、日々健やかに生活するが今年初めに掲げた我が抱負」 (安倍晴明)
主人公 : 安倍 昌浩
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 歴史オカルト
結 末 : ハッピーエンド、続く
イラスト : あさぎ桜
デザイン : micro fish

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★+★★
キャラクタ : ★★★+
独 自 性 : ★★★+
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
結城光流の著作リスト よみもののきろくTOP
408. 「イナイ×イナイ」     森 博嗣
2007.10.29 長編 298P 900円 2007年5月発行 講談社ノベルス ★★★★★
Xシリーズ開幕。双子姉妹と密室殺人事件。


【100字紹介】
 美術品鑑定業の椙田事務所を訪れた黒衣の美人・佐竹千鶴は、
 数十年来地下牢に閉じ込められているという兄・鎮夫の捜索を依頼。
 旧家の美人双子と血の繋がらない義母、密室殺人、
 自ら探偵を名乗る男…Xシリーズ第1作


新シリーズの第1作らしいです。シリーズ名は「Xシリーズ」。
どの辺りがXなのかは、菜の花には分かりかねますが…読みが甘いのか?

キャラ自体は、他の作品で既出の人が何人か。
「あの人」も、ちらっと登場!?
ということで、時間軸としてはGシリーズのすぐあと、くらいかな。
キャラの全貌は、残念ながらまだ見えていないですが、
何やら他のシリーズとつながりがあるのは確かなようです。
(他シリーズの既出キャラがいるわけで。)

さて、本作ですが。
用意された舞台や小道具のキーワードが、何てトラディショナル!
…と思わず叫びたくなるくらい、古典系のお約束って感じです(笑)。
都心にありつつ広大な土地の中に静かに佇むお屋敷。
その家には地下牢があって、死んだはずの長男が閉じ込められている…という話から始まり、
役者達は美人の双子、その血の繋がらない義母、
そして第1発見者として自ら「探偵」を名乗る男。
いやー、よくぞ用意したよ、みたいな。

対して、「椙田事務所」の面々は、これらの型にはまらないタイプが用意されています。
美術品鑑定業の椙田事務所ですが、探偵業も密やかにやっているらしい…。
肝心の椙田さんは殆ど登場せず。電話の中や、事件の後に出てきますけど。
他にこの事務所にいるのは、最近雇われた元やり手社長秘書の小川令子と、
特に給料を貰っているわけでもなく留守番をしている美大生の真鍋瞬一。
主な主役は彼ら。ただ、完全に何もかも見せてはくれず、
彼らにもそれぞれ、何か秘密がありそうな、そんな感じです。

舞台自体は古典にでもありそうなミステリですが、
読み終わってみると、やっぱり森博嗣だった、
最初から最後まで森博嗣だったよ…という感じです。
前にもどこかの作品で見たような、というデ・ジャ・ヴがあります。
これが、らしさかな、とも思いますが…。

そうですね、森博嗣氏の作風が好きな人にはとても楽しい読書となるでしょう。
新本格が好きな人にとっては…、意見が分かれるところかもしれません。



菜の花の一押しキャラ…特になし 「君ね、そういうこと、普通にさらっと言うでしょう?  なんか、将来、それで人間関係を破壊しながら、    ブルドーザみたいに進んでいく気がするなあ」    (小川 令子)
主人公 : 小川令子、真鍋瞬一
語り口 : 3人称
ジャンル : ミステリ
対 象 : 一般向け
雰囲気 : トラディショナルな謎
結 末 : 何となく決着
ブックデザイン : 熊谷 博人・釜津典之
カバーデザイン : 坂野 公一(welle disign)
フォントディレクション : 紺野 慎一(凸版印刷)

文章・描写 : ★★★+
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独自性 : ★★★★★
読後感 : ★★+★★

総合評価 : ★★★★★
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