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(2007年9月…388-400) 中段は20字紹介。価格は本体価格(税別)。 もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  もっと新しい記録
2007年9月の総評
今月の読了冊数は13です。やたらとラノベを読んで数を稼いでしまいました。
内訳は長編3、エッセイ・一般書3、ライトノベル7。
コンプ計画中の著者の読了数は宮部みゆき1、時雨沢恵一1、結城光流3、壁井ユカコ2です。

さて2007年9月の菜の花的ベストは…

 「武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新」 磯田道史 (評定4.0)
 「ダヴィンチ・コード(上)(下)」       Brown, D (評定4.0)

2作が同点です。

「武士の家計簿」は、研究者による一般向け教養書。
代々、加賀藩御算用者であった猪山家に伝わる古文書を読み解き、
近代日本の実際を透かし見るという斬新な切り口の歴史系教養書。
これが意外にも、現代に通じるものがあるのです。
もしかすると現代社会を行きて行く上での素晴らしい参考書たりうるかも…?

「ダヴィンチ・コード」は、ダン・ブラウンのヒット作。
ルーブル美術館長が殺され、謎の暗号を残すという衝撃的な幕開けで、
宗教象徴学が専門のロバート・ラングドンと、
館長の孫であり、暗号解読官であるソフィーの、
暗号を解読して謎に迫りながらの逃避行を中心に、
それらに関わる様々な人々の思惑と動きを追います。
ボリュームも、エンターテイメント性も豊かな長編。


以下、高評価順(同評価の場合は読了日順)に簡単に作品紹介します。

 「キーリVIII 死者たちは荒野に永眠る(上)」 壁井ユカコ(評点3.5)
 「ドリームバスター2」            宮部みゆき(評点3.5)
 「博士の愛した数式」             小川 洋子(評点3.5)

「キーリVIII」は、ライトノベルのキーリシリーズ第8巻。
いよいよ最終章です。この次の下巻で完結なので、
シリーズの総まとめに入っているという感じです。
今まで、明らかになっていなかった各キャラの詳細も、
順次明かされつつ、フィナーレに向かっていきます。

「ドリームバスター2」は宮部みゆきの現代SFファンタジー。
前作以上に主人公であるドリーム・バスターの少年・シェンに
スポットが当たり、その過去と葛藤を描きつつ、
現代社会の問題にも切り込んできます。
更に謎が深まりつつある、続きものです。

「博士の愛した数式」は小川洋子の長編小説。
映画化もされ、各所で取り上げられた話題作です。
80分しか記憶のもたない数学者と、
家政婦の「私」、私の息子の「ルート」の心の交流を描く、
温かく、でも淋しい、何とも味のある物語です。


 「少年陰陽師 六花に抱かれて眠れ」    結城光流 (評点3.0)
 「テクノ図解 ナノテクノロジー」     小林直哉 (評点3.0)
 「キーリVII 幽谷の風は吠きながら」    壁井ユカコ(評点3.0)
 「リリアとトレイズV,VI(上)(下)」   時雨沢恵一(評点3.0)

「六花に抱かれて眠れ」は結城光流のライトノベルで、
少年陰陽師シリーズ第5巻。風音編の第2作です。
雪の降りしきる世界での悪夢に悩まされる物語。
少し、淋しい感じが漂います。

「ナノテクノロジー」は小林直哉の教養書。
ナノテクって何なのか!?から、ナノテクが社会に与える影響まで。
内容は、技術よりも社会寄りです。
一般の人がナノテクを基礎の基礎から斜め読みして、
この手のニュースを読めるようになるには絶好の入門書でしょう。

「キーリVII」は壁井ユカコのライトノベルで、キーリシリーズ第7巻。
完結まであと1作を残すところで、終幕へのプレリュードというイメージ。
再び旅ものに戻り、列車の旅です。変わりたくない、という気持ちと、
それでも時は容赦なく流れ、何もかもが変わっていく…、
そんな不安な気持ちがいっぱいに詰まった巻です。

「リリアとトレイズV, VI」は時雨沢恵一のライトノベルで、
シリーズ第5・6巻。内容としては第3作にあたります。
リリアの春休みの「陰謀の列車旅行」を描く、シリーズ完結作。


 「少年陰陽師 焔の刃を研ぎ澄ませ」    結城光流  (評点2.5)
 「エヴァンゲリオン完全解体全書」     特務機関調…(評点2.5)

「焔の刃を研ぎ澄ませ」は結城光流のライトノベルで、
少年陰陽師シリーズ第7巻。風音編の第4作、完結編です。
敵にすべてを乗っ取られてしまった紅蓮。
選択肢は倒すか、倒されるかかしかない状況での、
主人公・昌浩の葛藤と戦いを描きます。

「エヴァンゲリオン完全解体全書」はアニメ・エヴァのファンが、
徹底的にエヴァを考えてやるー!という気概で書いているように見える、
研究本(というか、自分的見解本)。
学術的にはどうかと思う内容ですが、エヴァへの愛は誰もが認めるところ。
エヴァ好き同士の連帯感を味わいたい方は是非どうぞ。


 「少年陰陽師 黄泉に誘う風を追え」    結城光流  (評点2.0)
 「らき☆すた らき☆すた殺人事件」    竹井10日他(評点2.0)

「焔の刃を研ぎ澄ませ」は結城光流のライトノベルで、
少年陰陽師シリーズ第6巻。風音編の第3作です。
幼い内親王の淋しさが事件を招く、悲しい物語です。

「らき☆すた殺人事件」は、4コマ漫画の「らき☆すた」の小説。
いつもの日常の中に迫る非日常!?
次々とキャラたちが倒れていく…!
この連続殺人事件、一体どうなってしまうのか!?
…というミステリ系ライトノベル。


以上、今月の読書の俯瞰でした。








388. 「少年陰陽師 六花に抱かれて眠れ」     結城 光流
2007.09.02 ライトノベル 249P 457円 2003年2月発行 角川ビーンズ文庫 ★★★★★
安倍晴明の孫・昌浩の活躍!シリーズ第5作


【100字紹介】
 時は平安。13歳の昌浩は、稀代の陰陽師・安倍晴明の末の孫。
 相棒は物の怪のもっくん。最近、漠然とした悪夢に悩まされる昌浩は、
 さ迷うか弱い魂と、それを追いかける嫌な感じの
 百鬼夜行に出くわす…シリーズ第5作


最初3作続いた「窮奇」編が完結し、
未だ詳細不明の「風音編」に入って2作目です。

今回は、雪の降りしきる世界での悪夢に悩まされる物語…。

また貴船の神様がどーんと登場する冒頭ですが、
その翌朝に起こる出来事に大笑いしていました、
いや、あれを吉昌視点で書くとは、うまい!
しかも吉昌のキャラが、素敵すぎです。

全体的にあまり大きなバトルがありません。
が、あとがきにて判明したことによると
担当編集者さんが「バトルが足りない!」と駄目だしして、
これでも追加されたようですよ。
あの、もしかして今まで昌浩がずたぼろで戦わされていたのは、
この担当編集者さんの趣味…いや、功績だったのでありましょうか(笑)。

そうやってあとから入れたのかせいなのか、
いまいち作品全体のまとまりはよくないですね。
楽しく読ませて頂きましたけど、
あちこちの文章の出来具合に波があるようにも感じますし、
全体としてのまとまり・流れはいまいちかなあと思います。

ま、楽しく読めているんだから細かいことはどうでもいいか。
…ということで。

ラストは恒例の、昌浩っていい子やねー、ほろり…系で、
またかよ!と思いつつもやっぱり、いい子やねー、
と乗せられてしまった菜の花なのでした。
あ、でも涙なくしては読めない、あの第2作のときより、
ちょっと文章が巧くなったのでは!?と思いましたよ。
ますますパワーアップして帰ってきた!?ですね。

巻頭の人物紹介では、十二神将で更に太陰が追加されました。
次回は誰が追加されるのでしょうか!?どきどきです。



菜の花の一押しキャラ…安倍 昌浩 「お前は、どうして今も、俺に笑いかけることができるんだろうなぁ…」(紅蓮)
主人公 : 安倍 昌浩
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 歴史オカルト
結 末 : 一件落着、続く
イラスト : あさぎ桜
デザイン : micro fish

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★+★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
結城光流の著作リスト よみもののきろくTOP
389. 「テクノ図解 ナノテクノロジー」     小林 直哉
2007.09.02 一般書 149P 1500円 2001年8月発行 東洋経済新報社 ★★★★★
ナノテクについて技術動向から影響まで解説


【100字紹介】
 ますます注目集まるナノテク。
 この新時代のキーワードの技術動向から社会・
 政治経済・産業へのインパクトまで、平易に解説。
 図表を多用し、10億分の1の世界を操作できる
 この夢のテクノロジーを一般向けに紹介する


ナノとは。10のマイナス9乗のこと。
どれくらいのサイズかはなかなかぴんとこないかも。
原子のサイズのレベルですが、そうですね…秒で考えるならば、
最近流行りの1ギガヘルツ。あれは1秒間に10の9乗回、
振動しているという意味なのであれの逆数をとったくらい。
つまり1ギガヘルツの振動をしているものの1回の振動は1ナノ秒くらいです。
…って、ますます分からない?

そんなとっても小さなレンジで、加工や測定をしようというのだから、
研究者は楽しいでしょうねえ…じゃなかった、いつも先を見据え、
誰よりも速く、小さい世界を夢見ているのですね。
でも。ナノテクに夢を見るのは研究者だけじゃない、ということ。

本書の主な構成は以下の通り。

最初に基礎を3章。
第1章で「ナノテクノロジーって何?」(ナノテクを知るための基礎知識)(1−4)
第2章で「ナノテク研究最前線」(ナノテク研究の基礎)(5−7)
第3章で「ナノテクノロジーが拓く新しい世界」(ナノテクの基本技術解説)(8−23)

次にナノテクが社会に与えていくであろう影響の章。
第4章で「ナノテクは経済・社会にどんなインパクトを与えるか?」(24−33)

そして世界の政治的な動きの章。
第5章「検証 ナノテクノロジーをめぐる世界の動き」(34−36)

最後は日本の動向と将来を私見を交えて語る2章。
第6章「日本が取るべきナノテク戦略とは?」(37−39)
第7章「ナノテク産業の将来はどうなるか」(40−31)

…となっています。
後ろの数字は項目番号。
各章はこれらの項目を含んでいます。
1項目は基本的に見開き2ページ。
例外として4ページの場合と6ページの場合がありますが、
とにかく見開きで構成されるように作られています。
しかも左ページは殆どが図表となっており、
「図解」というタイトルのゆえんとなっています。
そのために文章量が少なめで、かなり一般の方でもとっつきやすくなっていますね。

ただこの図解、あまり意味がない図は多いです。
本文と同じことが単に四角の中に書いてあるだけだったり、
あまり「図」であることの意義を活かせていないなあという印象。
無理矢理「図解」の名を冠するために、プレゼン資料のページを
えいや!と切り抜いてきたような感じです。
もう少し、「図」の特徴を活かしているとなお分かりやすいのに、と思います。

解説文の方は、入門書ということで平易に書くために、
あまり突っ込んで書かれてはいません。
全体の概要を掴み、その後のステップアップは他書に譲る、というところか。
入門書ですから正しい姿勢と言えますね。
ただ、あまりに表層的なので、折角「図」を多用するなら
もう少し図か文章か、どちらかで深い話をしてもいいのにな、とは思いました。
両者が完全にかぶってしまっていて両方あっても
相乗効果のようなものが出ているとは感じられないのがマイナス・ポイント。

全体的には、技術よりも社会に寄っている感じです。
あまり技術に詳しそうなイメージがありません。
嘘は言っていないかもしれないけれど、ちょっと嘘に近いのでは?と
あやしい記述もなきにしもあらずですから…。
著者は企業の研究員とのことですが、
技術研究よりも、研究のオーガナイズをしている人ですね、きっと。
…と、経歴を読みましたけど、
「事業動向、市場調査に従事」とのことですので、大体当たりかな。

まあ、この偏りも、考えてみれば一般向けなのですから
この方がよいのかなーと思います。
一般の方にとっては技術の実際よりも、結局それが自分の生活に
どう繋がってくるのか、の方が重要なのでしょう。
それだけだと、ブラックボックス過ぎて、ちょっと淋しくないのかな、
とは思いますけれど、世の中の多くの人は原理には興味がないのかもしれません。


「ナノテク」を基礎の基礎から斜め読みして、
この手のニュースを読めるようになるのにいい入門書と言えるでしょう。



テーマ : ナノテクノロジー
語り口 : 解説書
ジャンル : 一般書
対 象 : 一般向け
カバーデザイン : 田中円

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★+
簡 潔 性 : ★★★+
独 自 性 : ★★+★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
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390. 「キーリVII 幽谷の風は吠きながら」     壁井 ユカコ
2007.09.03 ライトノベル 314P 570円 2005年8月発行 電撃文庫 ★★★★★
変わらないものは何もない…シリーズ第6作


【100字紹介】
 行方不明のベアトリクスを探しているある日、
 様子がおかしいラジオを修理屋に持ち込むと、
 そろそろ寿命かもしれないと言われる。
 ハーヴェイの核にも異変が…。
 大切なものが少しずつ剥がれ落ちていく不安を描く第6作

「キーリ」第6作。
7巻ですが、5・6巻が上下巻で続きものだったため。

第4巻ではぐれてしまったベアトリクスですが、
5・6巻では結局、違う事件に巻き込まれて見つけられず。
この7巻でもまだ探しています。
探していますが…、とりあえずは平和な日々からスタート。

居候させてもらっているあのバー…、
アドルフ・サックス亭のマスターのエピソードからスタート。
どうでもいいですけど、この名前、
サキソフォンの発明者の名前そのまま…。
しかもかの人の故郷とかいうまちがあの「世界の車窓から」で
紹介されていたのですが、その翌日に取り上げられていたのは
ベルトリックスだか何とか、そういう名前の土地でした。
べ・・・ベアトリクス!?
何というか、もしかしてもしかすると…みたいな。
いや、余談でした。

あと1作で終了ということで、著者自身も
「久々に旅ものを」と思ったそうで、今回はまた旅です。
久々の列車旅。懐かしいですね。
でも…変わってしまいました。そしてこれからも、変わっていきます。
「変わりたくない!」と思ってしまうのは、
読者のわがままなのかしら…と思ったら、
著者も同じような気持ちに駆られたようで、
お陰様で本作は「変わりたくない」の気持ちがあふれる作品になっています。

変化し、そしてどんなものもいつかは失われてゆく…。
とても悲しくて、切なくて、耐え難いくらい辛いこと。
ですけど、時は無常で、世界は無情なのです。

前作も切ないお話でしたが、本作はまた、種類の違う切なさ。
失ってしまったものの話と、失いつつあるものの話と。
最終巻に向かって、加速的に堕ちてゆくイメージです。
特にキーリは、もう後戻り出来なさそうですね。
まさかこんなに頑ななキャラに育とうとは、正直思ってもみませんでした。
彼女の初期のキャラは、いまいち確立されていなくて、
未知数ではあったのですけれど。確立されてしまってみると、
なかなか困ったさんだったことが判明しました。
いや、普通の人というか。そう、よくも悪くも…。


さて、次回は最終巻です。
この結末、どうなるのか…とても不安ですけれど、
最後まで読み通しましょう。



菜の花の一押しキャラ…ハーヴェイ 「…まったく、だからどこにも行きゃしねえってばよ。俺ゃ貴様らの保護者だぞ?」(兵長)
主人公 : キーリ/ハーヴェイ
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 暗め、幻想、退廃的
結 末 : つづく
イラスト : 田上 俊介
デザイン : Yoshihiko Kamabe

文章・描写 : ★★★+
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★+
独 自 性 : ★★★+
読 後 感 : ★★+★★

総合評価 : ★★★★★
壁井ユカコの著作リスト よみもののきろくTOP
391. 「少年陰陽師 黄泉に誘う風を追え」     結城 光流
2007.09.07 ライトノベル 254P 457円 2003年5月発行 角川ビーンズ文庫 ★★★★★
安倍晴明の孫・昌浩の活躍!シリーズ第6作


【100字紹介】
 時は平安。14歳の昌浩は、稀代の陰陽師・安倍晴明の末の孫。
 相棒は物の怪のもっくん。帝を呪詛し黄泉への扉を開こうとする敵。
 北辰が翳り瘴気が吹き荒れる中、奔走する昌浩に
 「失せものの相」が…?シリーズ第6作


「風音編」の第3作目です。

前回に引き続き、風音が暗躍していますが、
ついに核心に迫りだしたというところでしょうか。
前作は、シリーズの中にありながらも閑話休題的な
印象がありましたからね。
今回はちゃんとストーリーが前に進みます。

渦中の人は、内親王…でしょうか。
でもこのキャラ、描きたいことはよく分かりますけれど、
それほど巧いこと描かれた感じがしなくて残念。
ちょっとステレオタイプというか、ありがちというか。
いや、ありがちでもいいのですけれど、
正直これを表現するには、ちょっと筆力が足りないかな、と感じました。
どんなことでも、巧く描けば共感は得られるでしょうけれど、
これはちょっと題材が難しかったのでは、と。

今回も流血沙汰が。しかも、虫の息レベル。
あの担当さんの陰謀ですね!(前作あとがきを参照のこと)
いや絶対、著者自身の趣味も入っているかと思うのですけれど。
「どんな重傷でもけなげに行動するキャラ」萌えっていうのが、
最近、流行ってるらしいですよ?(何だか危険な香りが…(^ ^;)。)
包帯萌えとか…(とってもやばそうな雰囲気が…(- -;)。)
とりあえずあとがきによると

今回はもっとぼろぼろにしようと思ったんですが、 あれ以上やったらほんとに死んでしまうのでやめました(苦笑)。
ということですので、よかったね、昌浩君。 …いや、でもすでにふつーなら死んでるレベルですけど! やはり著者の趣味だったか…。 巻頭の人物紹介での恒例、1回につき十二神将1名追加!…は、 「勾陣」でした。クールなおねえさまでした。 でもアニメでも結構活躍していたので顔覚えてますよー。 ああ、やっと出てきたな!といったところか。 次回は誰が追加されるのでしょうか。乞うご期待。
菜の花の一押しキャラ…安倍 昌浩 「戦闘は専門外だ」(玄武)
主人公 : 安倍 昌浩
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 歴史オカルト
結 末 : 完結せず、続く
イラスト : あさぎ桜
デザイン : micro fish

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★+★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★+★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
結城光流の著作リスト よみもののきろくTOP
392. 「武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新」     磯田 道史
2007.09.08 一般書 224P 680円 2003年4月発行 新潮新書 ★★★★
「猪山家文書」から近代日本が見えてくる!


【100字紹介】
 「金沢藩士猪山家文書」に、37年にも及ぶ
 「家計簿」が発見された!金融破綻、地価下落、
 リストラ、教育問題、利権と収賄、報道被害など、
 現在我々が直面している問題を経験してきた
 猪山家の記録に、近代日本を見る


「金沢藩士猪山家文書」が研究者の手に取られ、
読み解かれた結果を一般向けにまとめられたのが本作です。

そもそも武士にとって算術は賤しいと考えられる傾向があり、
あまり得意な人材がいなかったらしいのですが、
この猪山家はその中にあって、算術によって身を立てた、
いわば会計のプロ。元々は陪臣であったものを、
加賀藩で「御算用者」に採用され直参になったのです。

が、直参になったあと出世もしましたが借金も増えて…
ついに首が回らなくなり、借金整理をして同時に
「家計簿」をつけようと決意をするのです。
こうして37年にもわたる長期の家計簿が残されました。

それにしても猪山家の人々は、恐ろしく「マメ」なのです。
何しろ料理の食材の費目まで残しているのですから!
「小鯛」だの「なし」だの「たらこ」だの「ひじき」だの!
現代の主婦でも、一体どれくらいの人がここまで細かくつけていることか…。
これをお仕事が会計係とはいえ、一家の大黒柱がちまちまと
つけていたかと思うと、微笑ましいというより恐ろしいですねー。
他にも、お産の準備だって
「湯揚木綿小紋 九尺」「たすき小紋 六尺」「生湯たらい輸入」
「晒木綿 一丈」「手拭 一筋」「車草の粉 五文」「よもぎの粉 五文」
「安神散 50文」「安神丸 100文」などなどなど…。
とにかく、細かい!

この本は一般向けであって、それぞれの解説・検討・解析をするための
学術書ではないので、細かい費目についてはあまり言及はありませんが、
それでもこれくらいは思わず本文に出てくるくらい細かいらしいのです。
うーん、これは確かに、凄い資料なのではないでしょうか。
当時の風俗・習慣がよくよく見えるものでしょう。

また、明治初年の分は、家族の書簡や日記も資料内にあるそうで、
ますます多角的に状況を見ることが出来るようです。

本書はそのような資料を利用しつつ、江戸時代から明治にかけての
激動の時代を追いかけ、その当時の武士のありのままの姿を
浮かび上がらせています。勿論、想像によって補完されて
描かれた部分も多いでしょうが、
とにかく見ていてリアルで面白いのです。

借金で首が回らなくなり、家財道具を売り払い、
細かい部分で何とか切り詰めて生活し、
子供達に英才教育を施して何とか「御算用者」に採用されるよう努力し…。

特に示唆的なのはこの「教育」ですね。
お金がなくて、本当に困っているときにも、
猪山家はひたすらその子弟の教育に力を注いでいます。
結果、財政破綻しそうな場面も、少しでも早く
「御算用者」の就職試験に子供を通らせて給料を稼がせ、
また出世を早くすることが出来ていますし、
明治維新の混乱期にこの「算術」の技術によって職を得て、
何とか荒波を乗り越えて行くのです。
「由緒」や「家格」にしがみつき、安穏としていた
周りの武士達がリストラの憂き目にあい、没落して行く中でも。

「算術」は他の才能に比べて、血筋よりも
本人がどれだけ努力したかという個人の資質によるものが大きいため、
元々かなり自由に人材登用されていた、ということと、
明治維新の際も、主に海軍などで算術に優れた人材が
喉から手が出るほど欲しいにも関わらず殆ど育っていなかった、
ということがうまく作用したということ。

そういえば、うろ覚えなのですけれど、
アメリカでは大学で「数学」を学んだ学生と学ばなかった学生で、
将来得られる賃金の期待値が前者の方が圧倒的に有利だという
研究結果が出たとか、何かの本で読んだことがあります。

中学生や高校生くらいだとよく「数学なんて勉強しても役に立たない」と
言い切る学生さんがいるものですが、
実際は世の中に出て数学を使わないとは言い切れないのです。
菜の花は知らなかったのですが、江戸時代の加賀藩の数学者は、
すでにサイン・コサイン・タンジェントの数表を作っていたとか。
やはり単なる趣味で作ったわけではないでしょう。
きっと何か実用になることがあったはず。


まあ、そんなわけで。
困ったときに身を助けるのは学問、そして技術ですよ、と。
頑張って手に職つけましょうね、ってことでしょうか。
あれ?そんな話だっけ、この作品?(^ ^;)。



テーマ : 歴史(近代)
語り口 : 時代順配列
ジャンル : 一般書
対 象 : 一般向け

文章・描写 : ★★★+
展開・結末 : ★★★★
簡 潔 性 : ★★★★
独 自 性 : ★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★
よみもののきろくTOP
393. 「少年陰陽師 焔の刃を研ぎ澄ませ」     結城 光流
2007.09.09 ライトノベル 254P 457円 2003年8月発行 角川ビーンズ文庫 ★★+★★
安倍晴明の孫・昌浩の活躍!シリーズ第7作


【100字紹介】
 時は平安。14歳の昌浩は、稀代の陰陽師・安倍晴明の末の孫。
 黄泉への封印を解く鍵として、相棒・紅蓮の魂が屍鬼に取り込まれてしまった。
 封印を守るために紅蓮を殺すかそれとも…「風音編」最終章のシリーズ第7作


風音編第4作にして最終章の、シリーズ通巻7作目。
6作が1冊で完結していなかったので、
内容としては前作とあわせて上下巻といったところ。

6巻では、紅蓮が乗っ取られてしまって、
もう引き離せないよ、と神様に通告されてしまった昌浩ですが、
そこで終わっていたんですよね。
選択肢は「紅蓮を殺す」「放置して世界が滅ぶのを見る」。
はあ…そりゃ大変。

そんなわけで、本作では前半に悩む昌浩の姿が描かれ、後半はバトル。
途中は風音中心に視点移動があって、もうひとりの主人公扱いです。
どちらも苦悩とか、淋しさとか、あとは人とのつながりとか…、
そういうものが前面に押し出された内容ですね。

本作、クライマックス!というだけあって、派手なシーンが多いでしょうか。
が、反面、キャラはちょっと地味な感じ。

文章は、叙情的なところと叙述的なところの組み合わせ方というか、
移行が巧いなあと思います。ただ、叙情的な部分に力が入りすぎて、
叙述部分でやや説明に欠けるというか、
読者の想像力に恃む部分があるというか、その辺りがちょっと不満かも。
古典文学などが慣れていない人に読みづらい理由は、
叙述的であって感情の表現が少なく、
感情の部分を読者の読み方に任せているところだと菜の花は思うのですよ。
ある意味、それはとても自由な読み方が出来て面白いと思うのですが、
本作の場合は逆かな。叙情的な部分の書き込みが多く、
事実や状況の説明が不十分なところがあるために、
気付くと置いていかれていることがある感じ。
はっ…まさか、菜の花が鈍いのか!?

それにしても清明のキャラがいまいち謎。
他巻での言動と、一致していないというか、
何か一貫したものを感じないというか…、
どうしてあのときあんなことをした人が、ここでこういうことをする?
みたいな謎が結構あります。うーん、どうなっているのだ!


巻頭の人物紹介では最近、十二神将が1人ずつ追加されていくのを
楽しみにしていたのですが、今回は追加なしでした。がーん。
次回に期待。

…にしても気になるのは、どうやら某キャラの状態が、
結局最初に戻る、にならなかったらしいところかな。
次回以降、元の状態に戻れるのでしょうか!?
気になるところです。



菜の花の一押しキャラ…安倍 昌浩 「過信だ」(玄武) つ…つめたーい…(- -;)。
主人公 : 安倍 昌浩
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 歴史オカルト
結 末 : 一件落着、続く
イラスト : あさぎ桜
デザイン : micro fish

文章・描写 : ★★+★★
展開・結末 : ★★+★★
キャラクタ : ★★+★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★+★★

総合評価 : ★★+★★
結城光流の著作リスト よみもののきろくTOP
394. 「ダヴィンチ・コード(上)(下)」     ダン・ブラウン 越前 敏弥訳
2007.09.16 長編 334P
318P
各1800円 2004年5月発行 角川書店 ★★★★
ヨーロッパ史上、最大最高の謎に挑む問題作


【100字紹介】
 ルーヴル美術館館長が殺害された。
 当夜に面会予定だったハーバード大教授ラングドンは、
 警察より捜査協力を求められる。
 館長の孫娘で暗号解読官ソフィーとの暗号解読とともに、
 キリスト教の歴史を塗り替える謎に挑む


 --オリジナル・データ-------------------
  THE DA VINCI CODE
  By Dan Brown

  © 2003 by Dan Brown
 ---------------------------------------


言わずと知れた、超有名作品です。ようやく手が出せました。

主人公は米国ハーバード大教授で、宗教象徴学が専門のロバート・ラングドン。
講演でフランスを訪れた彼はその夜、ルーヴル美術館館長ソニエールと
会う約束があったのに、ソニエールは現れませんでした。
その頃、ソニエールは美術館内で殺されていたのです。
しかも、遺体はダ・ヴィンチの有名な素描「ウィトルウィウス的人体図」を
模した形で横たわり、その周りには謎のダイイング・メッセージが…。
いや、言っていいですか?その…このダイイング・メッセージは、
あんまりですよー、ソニエール館長!疑われるじゃないですか〜。
まあ、内容は本書の中をご確認下さい、ええ。

謎が混在しています。
でもまとめてみると数こそ多く見えますが、
大して絡まりあっているわけではないかも。
何しろミステリと言いつつ、殺人事件自体に関しては
殆ど謎が残っていません。何故なら、倒叙式部分が入っているから。
つまり、犯人視点が物語の中に混じっています。

そうですね、謎が混在しているというよりも、
視点が混在しているのが本作を複雑にしている主要因かもしれません。
あちこちからアプローチがあるのです。
ソニエール殺害犯の視点、ラングドンの視点。
それにオプス・デイズ代表・アリンガローサ司教の視点。
それが現在進行形で、かなりの短い章で入れ替わります。
10Pに満たないくらいの間隔でしょうか。

そもそも本書は上下巻でかなりの分量があるように見えますが、
物語内の時間の進行を見ると、深夜からスタートし、
夜明けを迎えて、その昼頃には殆ど終焉している感じなのです。
僅か半日程度の時間を、これだけの文章で綴っているのは、
ただ1人の視点で追いかけるのではなく、あちこちで起こった
複数の視点が体験したこと、考えたこと、かつての思い出などを
織り交ぜながら進行しているから。
それにより、物語に客観性が出て、深みを増すという手法でしょうか。

全編をダ・ヴィンチの有名作品が彩り、
キリスト教にまつわる幾つもの歴史的な解説がなされ、
その中で沢山の人々が、自分の思惑で動き回ります。
謎だらけの動きをしているような人もいますが…、
それぞれに、それぞれの事情があるようです。
物語の進行のために役割を与えられているのではなく、
自分の思惑のために動いている、という感じで作品を綴るのは、
素人には出来ない芸当です。これがデビュー作らしいですが、凄いですね。

謎について後回しになってしまいました。
基本的には解くべき謎は、ひとつだけです。
ソニエールの残した暗号解読。
これに逃避行だの他の人々の思惑などがかぶるので、
非常に複雑に見えますが、謎解きの骨格はこれだけ。
殺人事件を解く必要は有りませんし(何しろソニエール以外の被害者なんて、
名前すら出てこなかったりする人が3人もいる!)、
キリスト教についての謎を、少しは考えることはしますけれど、
基本的には解いてやろう、ということはありません。
ソニエールの暗号を解くことで、きっと解けるのでは、
という期待感はありますけれど、それを目的にしているわけでは決してないでですね。
キリスト教に関連する事象については、すでに分かっている事実や、
公表されている仮説・定説を解説することに終始しています。
その意味では…、結果的にキリスト教の謎に肉薄はしていこうと
しているようですが、あおり文句ほどに「歴史を塗り替える」作品、
というわけでもないような気がします。
まあ、これを小説の形にして世間に広めた、ということが
世間への影響力が大きく、反発も招ねく結果になったのだろうな、と。


翻訳は巧くしているのではないかと思います。
でも、文章を楽しめる、というほどでもなかったかな。
やはり、物語よりも文章が楽しめる、という意味では
日本語オリジナル作品の方が菜の花の好みですが、
こういう物語の内容だけで読ませてしまう作品も、決して嫌いではありません。
さすがにベストセラーだけあって、噂にたがわぬ面白さはあったと思います。
続編も、是非読みたいかな。



菜の花の一押しキャラ…ガイドの青年 「シラス…わたしから学ぶことが何もなかったとしても…これだけは覚えておきなさい」 (マヌエル・アリンガローサ)
主人公 : ロバート・ラングドン
語り口 : 3人称
ジャンル : ミステリ
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 歴史ミステリ
結 末 : 大体ハッピーエンド
装 画 : Leonardo Da Vinci
La Gioconda (Mana Lisa)
解 説 : 荒俣 宏

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★+
キャラクタ : ★★★+
独 自 性 : ★★★★
読 後 感 : ★★★+

総合評価 : ★★★★
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395. 「らき☆すた らき☆すた殺人事件」     原作/美水かがみ 著/竹井10日
2007.09.16 ライトノベル 192P 457円 2007年9月発行 角川スニーカー文庫 ★★★★★
4コマ漫画が、殺人事件?小説になって登場


【100字紹介】
 4コマ漫画「らき☆すた」のキャラたちの、
 いつもの日常…が殺人事件モードに!
 学校帰りに立ち寄った書店で、第1の事件が…。
 捜査を開始するこなたたち…だが、仲間が次々と殺されていく!?
 ライトノベル・ミステリ


4コマ漫画であり、深夜アニメにもなった「らき☆すた」の小説。
しかもいきなり殺人事件!?
まあ、いつものノリをノベライズしても、
漫画ほどの面白さは見込めない、という判断かなと思います。

多分、正しい。

かくいう菜の花は、漫画は読んでませんけどね(アニメは見た)。
この漫画には何だか熱狂的なファンがいるらしく、その辺は少しひきますけど
(同類じゃない同類じゃない同類じゃない…!と、
 心の中で叫んでみる菜の花は、もしかしたら僅かながら同類なのかもしれない)、
お話自体は「女子高生のゆるーい日常」を描いていると言われ、
「あー、それっ、あるあるある〜」という感じの、思わずにやり系漫画(アニメ)です。

さて、本作では冒頭は…、いつもの日常というか、
何というか…多分著者の趣味のお遊びがあって、
それから日常に突入。でも…うーん、多分同じことをしても、
アニメの方が面白いです。というのも、文章がいまいち。
ラノベに文章の巧さを求めてはいけないのかもしれませんけど。
でも最近はラノベと言いつつ、筆力の高い作家さんも多いですからねー。

それから殺人事件に移行。事件自体は…まあ、シリアスか?
ひっかかり点は多いです。結末は、予想通りの落ちでうまくまとめています。

全体的にお遊びだと思えば、なかなか楽しい1冊。
決して、本を読むぞ!というつもりで読んではいけない…かな。
普段は見られない、でもきっとこうなるだろうなあ、というキャラの反応を
楽しむための作品、かな。
よくよく考えてみると、これだけやっても世界観を壊していない、
というのは特筆に価する資質かもしれません。
それだけ、原作のキャラの確立性が高いとも言えますね。



菜の花の一押しキャラ…田村 ひより 「うん…サンキュー、かがみ。危うく、腕3本持っていかれるところだったよ」 「あばらだろっ、それを言うならっ!アンタは腕が3本もあるのかっ!?」   (泉こなた・柊かがみ)
主人公 : 柊 かがみ
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : マニア向け!?
雰囲気 : 漫画・アニメの仲間
結 末 : ハッピーエンド
イラスト : 美水 かがみ
デザイン : On Graphics

文章・描写 : ★+★★★
展開・結末 : ★★+★★
キャラクタ : ★★★★
独 自 性 : ★★+★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
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396. 「キーリVIII 死者たちは荒野に永眠る(上)」     壁井 ユカコ
2007.09.17 ライトノベル 289P 550円 2006年2月発行 電撃文庫 ★★★+
最終章への扉は開かれた…シリーズ第8巻。


【100字紹介】
 首都治安部隊に捕まったキーリたち。
 キーリの実の父親が首都に招聘しているという。
 監視付きで首都へ向かうキーリたちに、
 ヨアヒムまで同行してきた。
 敵地と思い乗り込んだ教会本部で、
 キーリの過去が明らかになる…

「キーリ」第7作。巻としては第8巻。
本来なら上下巻なので、下巻とまとめて書きたいところですが、
入手の都合上、今回は1冊で。

さて、ついに最終章です。
前作は、最終章へのプレリュード的な感じで、
事態がどんどん悪化して行く方向に進んでいた気がしますが
(まあ、最後は何とか持ち直しました…というか持ち直さないと、
 あのまま全滅で最終回くらいの勢いでしたけど)、
今回はもう最終章ですから、いけるところまでいってやれー状態。
唐突に最初からヨアヒムが登場しますし、
ベアトリクスも大活躍!です。もちろん、ハーヴェイも。

最後の最後でまた旅ものを、ということか、
第一章は再び列車の旅。でもなかなか、幸せにはなれないようです。
本作はこれまでの縮小版のように、色々あったことを
とにかくまとめにかかりながら規模を小さくしてリプレイ、という感じ。

最終章だから落ちをつけていかなくてはならない、
ということもあり、一人ずつ、書き足りなかったらしいところが
補強されて、最後への道筋を描き始めています。

特に、最初に結末が見えてくるのがヨアヒムかな。
彼の思い出は、5・6巻の「はじまりの白日の庭」でも
登場していますが、かなり表面的でした。
これまで何度も登場し、色々なことが分かっているのにも関わらず
本人の内面にはそれほど肉薄してきていないキャラ。
結局、彼にとっては思い出はあまり重要ではなかったのかも。
ハーヴェイは過去、思い出、記憶…の中から、
心に色々なものを得ましたが、ヨアヒムにはそういう描写が
殆ど登場しなかったし、そして必要なかったのだな、と気付きました。
彼は、自分を理解するために、過去を必要としていなかったわけです。
何というか、読んでいて十分リアリティがあったというか、
こういうキャラもありだな、と。結構書き辛いキャラではないか、
と菜の花は思ったのですが、あとがきによると

「微妙に狂ってるとことかが書きやすくて
 作者的にも非常にお気に入りのキャラでした」
  
ということです。か…書きやすい!?そうなんだー…。

ベアトリクスは、今回初めて「生きていた頃」の記憶が断片的に
登場してきました。やっぱり不死人は「生きていた頃」に
一番幸せだった時間が詰め込まれているのかな…と。
ああ、でもハーヴェイの「生きていた頃」って、
十分不幸でどうしようもない時間だったんだっけ…。
そう考えると、ベアトリクスは結構幸せな人だったのかな。
いや、でもそうとも言い切れないけれど…。
というか、ついにこの人にもそんな「過去」が思い出されてくるなんて
不吉な前触れですよ!このまま彼女まで退場なんてことに…。
と、不安になりつつ、本作でのキーリとベアトリクスの関係は、
ちょっと微笑ましくて、唯一のオアシスと言ってもいいくらい、
平和な感じがしました。タイトルも「いつか、彼女が幸せだったころ」って、
何となく泣かせるよーな、でもちょっとあったかい感じじゃないですか。

そしてキーリ(とセツリ)。運命に翻弄されていますね。
今回は父親との再会と、幼き頃の思い出など、情報は新たなものが押し寄せてきますが、
その割には彼女自身があまり印象に残らなかったです。
あまりに不死人たちの印象が強烈だったのか。
ハーヴェイだって、兵長を拾っているシーンなんか、
涙なくしては読めませんよ!(別に泣かずに読みましたけど)
ユリウスとのやりとりだって!うーん、主人公、頑張れ!

さて、次回は本当に本当の最終巻です。
これがどう落とされるのか…、何となく予想をしているのですが、
出来れば予想は外れてほしいなあと切に願っています。
どうなることか…菜の花の予想は外れるのか、それとも当たってしまうのか…、
それは次作読了後のお楽しみ。



菜の花の一押しキャラ…ハーヴェイ 「俺は、お前のそういう、自分なんかが本気で惑星を救えるなんて思ってるところは  ほんとに笑えると思うけど」                         「わ、悪かったなっ。そんなことで呼びとめるなっ」               「でも…そういうことを本気で信じられるお前は、素直にすげえと俺は思うよ」   (ハーヴェイ、ユリウス)
主人公 : キーリ/ハーヴェイ他
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 暗め、幻想、退廃的
結 末 : つづく
イラスト : 田上 俊介
デザイン : Yoshihiko Kamabe

文章・描写 : ★★★★
展開・結末 : ★★★+
キャラクタ : ★★★+
独 自 性 : ★★★+
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★+
壁井ユカコの著作リスト よみもののきろくTOP
397. 「リリアとトレイズV・VI 私の王子様(上)(下)」     時雨沢 恵一
2007.09.19 ライトノベル 249P
241P
各510円 2007年3月発行
2007年4月発行
メディアワークス
電撃文庫
★★★★★
王女様のお忍び旅行…狙われたのは?第3作


【100字紹介】
 トレイズは、20歳までに自分で結婚相手を決めなければ
 他国へ婿入りすることになっていた。
 その相手の観光案内役を務めるため列車に同乗したトレイズは、
 車内で旅行中のリリアと鉢合わせる。シリーズ第3弾、完結作


アリソンのシリーズを引き継いだリリアのシリーズ第3弾。
そして完結編。これでリリアのシリーズは終わりらしいです。

1作目が夏休み、2作目が冬休みときて、3作目は春休みです。
リリアには学校があるから、そうそう長期休み以外に
遠くへお出掛けできないってわけですね。
でも…、行く度にこれじゃあ、厳しいですね(苦笑)。

今回は、アリソンシリーズの最後と同じ、陰謀の列車旅行ですよ。
まさか親子2代の話で、最終話に似た舞台をまた選んでくるとは
思いもよりませんでした。もしかして著者は、列車にはまっているのか?
それとも、前シリーズで書ききれなかった何かが不満なのでしょうか。

冒頭でトレイズの秘密(?)が明らかになります。
20歳までに自分で相手を決められなければ、
彼は他国へ婿入りするお話になっていたのです、実は。
で、今回はその「お相手」がイクスにやってきたので、
彼は観光案内役を引き受け、帰ってゆくその「お相手」を
国境まで送るために一緒に特別列車に乗ります。
その警護は、トラヴァス少佐。

一方。アリソン&リリアの方は。
アリソンの策略?により、彼らが無事役目を果たした後に合流出来るような日程で、
同じように列車旅行に出掛けます。が、途中でトラブルがあって…。
気付くと陰謀に巻き込まれていた…!というお話です。

内容はこれですが、そうですね、感想は一言。
可もなく不可もなく。。。ってところかなー。

リリアのシリーズは、テンポ感が悪いというか、
ストーリーテリングいまいち、と1・2作目の両方の感想で
書いたような気がしますが…、今作はそんなことは特になく。
と言って、特筆するほど優れた点があったということでもなく。
気付いたら読み終わってたわーって感じ?
それは「読みやすさ」が売りでもあるライトノベルとしては、
ハイレベルってことかもしれません。
んー、でもこう、心に残るハイライト・シーンというものも
特になくて、ひたすら「そうかあ、終わったのかあ」みたいな…。
どうにも影が薄いぞ、最終話なのに!
いや、事件はそれほど平坦でもないですし、平穏でもないですし、
真ん中辺りのあの「逆転」は「あ、そっか!」って思えるでしょうし、
「私の王子様」が幾つかの場面で「あー、なるほどねー」と
思えたりもして、趣向は凝らされていると思うのですけれど。

…ああ、そっか!分かりました、あれです、主人公の影が薄いんだ。
リリアとトレイズなのに、アリソンや護衛隊の方が大活躍だし!
何より、犯人があまりにイっちゃったキャラ過ぎて、
そちらの方が目立って目立って仕方ない!
お陰でラストの大立ちまわりでは一応、リリアとトレイズが
犯人と対峙することになっていますけど、全然目立ってない!
キャラ、くわれちゃってますよ!
そうかあ、きっとこういうところが読み流されポイントなんですよ。
何というか、未だにリリアのキャラが読めませんもの。
主人公格をのみこむほどの脇役キャラというのは
とても貴重な存在ではありますけれど…、
そのせいでちょっと全体の話が沈んでいるのかもしれません。

ところでおまけは「小生意気なガキ」でしたが、
ついに主役を張りました、カルロ。
こちらの方が本編よりも主人公キャラが目立ってたりして…。


とりあえずこれで完結ですが、何となくこの世界観で次回作もありそうです。
今度は誰が出てくるのかなー?
本シリーズでちょくちょく登場しつつも、
全く本編に絡めなかったメリエル王女あたり、
そろそろ表舞台に立ったりするんじゃないか…
なんて思ったりもしているのですが、さて。



菜の花の一押しキャラ…アリソン 「おまえ、もうちょっと緊張感を持とうよ、勅語だよ」(ベネディクト)
主人公 : リリア・シュルツ
 トレイズ
語り口 : 3人称
ジャンル : 異世界ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 冒険もの
結 末 : ハッピーエンド
イラスト : 黒星 紅白

文章・描写 : ★★+★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★+★★

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP 時雨沢恵一の著作リスト
398. 「ドリームバスター2」     宮部みゆき
2007.09.21 長編 328P 1600円 2003年3月発行 徳間書店 ★★★+
悪夢を退治する現代SFファンタジー第2巻

【100字紹介】
 地球と別位相の惑星テーラで実験が失敗。
 この「大災厄」により、50人の死刑囚が
 意識だけの存在になり地球人の夢の中に逃げ込んだ。
 それらを捕獲するドリームバスター・シェンとマエストロの
 戦いと葛藤を描く第2弾


宮部みゆきのSF系ファンタジー第2巻です。
主人公は、地球とは別位相にある惑星・テーラの住人。
テーラは地球とは違う体制で国が成り立っています。
また、科学の発展も違うようで。
人類の不死を目指して、意識と肉体を自在に切り離す技術開発、
「プロジェクト・ナイトメア」なんてものがあったようです。
が、この実験が失敗、暴走。
被験者となっていた50人の死刑囚の意識体が、
テーラにあいてしまった地球への通り道を通り、
世界中に散らばってしまったのです。
この意識体は、通常の肉体として具現化は出来ず、
地球人の脳内の電気信号の中に潜み、夢の世界に登場する、という設定。
そんなわけで、地球人の夢に巣食う極悪犯たちを連れ戻すべく、
活躍しているのが免許制の「ドリーム・バスター」であって、
その最年少の資格者が主人公・シェンです。

前作「ドリームバスター」ではD・P(ドリーミング・パーソン)、
つまりごく普通の生活を送っている地球人の視点でスタートした物語でしたが、
どうやらそれはこの不可思議な世界観への滑らかな導入のためだったようです。
基本的にはD・B(ドリーム・バスター)のシェンが
全体を通じた主役ですね。彼の過去の話、抱えている心の問題などが
前回も少し出てきましたけれど、今回はより詳しくなっていきます。
それに、前回の最後に謎を残して消えた「彼」についても少しだけ。

今回は2人のD・Pが登場します。
どちらも社会問題に関係していますね。
しかも捕まえるべき死刑囚の側も、
ちょっと前回とは色合いの違う人のようで…。
こういう設定でやってくるところが、とても著者らしいです。
単なるSFでもファンタジーでもないところが。

今回は更に「消えた人」が増えて謎が増してしまいました。
まだまだ続きそうですね。


菜の花の一押しキャラ…マエストロ 「俺をつかまえたくなったら、"ホース・ラディッシュ"で乱闘を起こせばいいよ」(シェン) どんな連絡のつけ方だよ。
主人公 : シェン
語り口 : 3人称
ジャンル : SFファンタジー
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 少々ミステリ風味
結 末 : つづく
装 丁 : 多田 和博
装 画 : 山田 章博

文章・描写 : ★★★+
展開・結末 : ★★★+
キャラクタ : ★★★+
独 自 性 : ★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★+
宮部みゆき著作リスト よみもののきろくTOPへ
399. 「博士の愛した数式」     小川 洋子
2007.09.25 長編 292P 438円 2003年7月新潮社
2005年12月発行
新潮文庫 ★★★+
80分しか記憶がもたない「博士」との交流

【100字紹介】
 「ぼくの記憶は80分しかもたない」
 博士の背広の袖に留められた古いメモ。
 記憶力を失った博士と、常に”新しい”家政婦の私、
 私の10歳の息子。数字の言葉で交わされる、
 驚きと歓びと、悲しさを含んだ心のふれあい


何年か前の、話題作です。2003年刊ですか、ええと、4年前?
こういう文学っぽい作品を読むのは文系の人が多いかと思うのですが、
「数式」なんて言ってるじゃないですか、それなのに売れている、ということで、
どんな切り口で語られるのか?そして本当に面白いのか?と、
非常に期待して読み始めてみました。

主人公の「私」は30歳過ぎ、女手一つで10歳の息子を育てる家政婦。
家政婦の紹介組合から、とある老数学者のもとへ派遣されます。
大学を退職したその博士は、交通事故の後遺症により
80分しか記憶がもたないという人物でした。
当初は慣れずにぎこちなく接していた「私」ですが、
博士の主張により息子の「ルート」(博士のつけた愛称)が
この輪の中に飛び込んできてから、不思議な交流が始まったのです

博士にとっては、毎朝出勤してくる通いの家政婦である「私」は、
常に「新しい家政婦さん」です。初対面が苦手な博士、
とりあえず靴のサイズだの電話番号だの誕生日だのを尋ね、
その返ってきた答えである数字について語りだします。
例えば、靴のサイズを24だと言うと博士、

「ほお、実に潔い数字だ。4の階乗だ」
電話番号が576−1455だと言えば
「5761455だって?素晴らしいじゃないか。  1億までの間に存在する素数の個数に等しいとは」
…といった具合。うーん、こんな小ネタを駆使してくる文学なんて 読んだことがありません。人気の秘密はこの辺りか!? 設定も面白いし、数学を文学的に描き、 恐れずに向き合って親しんで、憧れ続ける姿勢には好感が持てます。 数学なんて…と思っている読者をも引き込むのでは? ただ、全体にややフラットな感じかな。 内容的に起伏がある…はずなんですが、 あまり巧く語っている、という感じはありません。 設定と発想、それに細かい描写は巧いです。 ところで登場人物、1人も最後まで名前が出てきませんでした。 それに容姿などに関しても、殆ど描写がありません。 何というか、不思議な感じがしました。 自分で小説を書いてみると分かるのですが、 最初に思わず、キャラを用意してしまうというか、 妙に事細かに描写してしまうことってよくあると思うのですよ。 そういうのが全然ないのですよね。 最初にキャラを用意すると、あとが簡単なのです。 著者と読者のキャラ像がある程度統一されてますし、 読者の意識をコントロールしやすいのだと思います。 それをせず、行間や細かい動作・言動・雰囲気で キャラを少しずつ描写してゆく、というのは 高等技なんじゃないかと菜の花は思います。 やたらと阪神ネタが出てきます。 というか、全体が数学と阪神で埋まっているというべきか。 菜の花は野球に興味がないので、巧く小物を使っているな、 と感心はしますが、読んで楽しくはないですね。 多分、世間一般の人にとっては親しみやすくて、 この小道具によって物語を自分の身近に引き寄せられて、 大変効果的に物語に入り込めそうな気はします。 解説は藤原正彦氏。あー、この方も最近売れましたね。 菜の花は氏のご母堂・藤原てい氏の作品しか拝読したことがありませんが。 「流れる星は生きている」のあの赤ん坊だった次男が… こんなに立派になって(涙)…というよーな、何故か親心!?みたいなものを 感じてしまうのでありました。いや、誰にでも子供時代はありますね。 その藤原正彦氏に「数学と文学の結婚」と言わしめた作品です。 数学をもっと身近に感じられる(かもしれない)1冊です。
菜の花の一押しキャラ…特になし 「途中止めしたら、絶対正解にはたどり着けないんだよ」(ルート)
主人公 : 私(家政婦)
語り口 : 1人称
ジャンル : 小説一般
対 象 : 一般向け
雰囲気 : ゆったり
結 末 : ±0か、やや−
解 説 : 藤原 正彦
カバー装画 : 戸田 ノブコ

文章・描写 : ★★★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★+
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★+
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400. 「エヴァンゲリオン完全解体全書 再起動計画」     特務機関調査プロジェクトチーム
2007.09.30 解説書 252P 571円 2007年9月発行 青春文庫 ★★+★★
エヴァンゲリオンを、もっと知りたい人へ…

【100字紹介】
 アニメ・エヴァンゲリオンの10年ぶりの劇場版公開に併せ、
 前作「新世紀エヴァンゲリオン完全解体新書」をもとに、
 謎に満ちた作品を多角的・学術的に解明しようとした解説書。
 巻末にはアニメシリーズ全データもあり


「エヴァンゲリオン」は恐らく、見たことはなくても
名前くらいは誰でも知っているであろう、有名なアニメ作品でしょう。
今月(2007年9月)に、10年ぶりに劇場版新作が公開されました。
菜の花は見に行ってませんけど。
というか、劇場版って一度も見たことないのですけれど。
でも、テレビシリーズは見ました、ええ。全部まとめて…。
何か、高校生の頃、文化祭のクラス展示でうちのクラス、
「アニメ展」やったんですよねー。
そのときに、1日で全部まとめて録画を見たのでした。
ちょっときつかった(苦笑)。
(ちなみに菜の花は「ドラえもん」担当だったので、
レポートを書くために「大長編ドラえもん」も、
何度もビデオを止めてメモを取りながら全作品見ましたとも。
真面目なのか不真面目なのか判然としない高校生でした…。
まあ几帳面ではありましたね。)

…と、この解説書には関係ないことでした。脱線、脱線。
ええと、本作はそんな(どんな?)エヴァを徹底解体しますよ〜というもの。
しかも学術的に、らしい。確かに第二章(EPISODE2 検証)では、
「分子遺伝学からの解明」「心理分析からの解明」「音楽的暗示からの解明」だの、
あやしげな言葉が並んでいますね。内容も、専門用語っぽいものが頻出。
何しろ読書好きかつ理系であるうちの弟御が「分からん」と
読むのをやめるくらいです。つまり、面白くない、と(えー)。
本当に面白ければ、ちょっとくらい言葉が分からなくても
結構読めてしまうものだと思うのですよ。
それがないということは、文章に魅力がなかったということかな。
あ、でも菜の花は読みきりましたよ。勿論。

で、内容なのですが。学術的に徹しようという姿勢は認めますが、
間違い(または誤解を招く表現)が散見されました。
まあ、菜の花も別に専門家ではないので、どこまで本当かは謎。
ただ、表面的には何となくはあっているけど、
本当にそれを学んだ人の深い理解から出た言葉、という雰囲気はなく、
専門外の人が頑張って入門書を中心に独習して書いたんじゃないかな、
という感じを受けました。高校教科書レベルよりは断然上ではあるでしょうけれど
せいぜい大学の学部生レベルという感じ。
プラス、こじつけではないのか?、それくらいなら幾らでも言える、
というような部分も幾つか。ちょっと微妙。

でもエヴァというアニメについて、こんなに考えて、
こんなに色々語って、きっとこの人たち、本当にエヴァが好きなんだろうなー、
菜の花も好きだよー、という一種の連帯感のようなものが感じられましたよ!
データの収集も緻密で、そうかあ、そうだったのかあ、という
「新たな発見」がありました。

ので、エヴァ好きには、結構楽しい本かも。
今まで見えなかった新たなエヴァが、見えてくるかもしれません。



テーマ : エヴァンゲリオン
語り口 : 説明調
ジャンル : 解説本
対 象 : ファン向け
雰囲気 : 学術的に語りたい

文章・描写 : ★★+★★
展開・結末 : ★★+★★
簡 潔 性 : ★★★★★
独 自 性 : ★★+★★★
読 後 感 : ★★+★★

総合評価 : ★★+★★
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