よみもののきろく

(2007年3月…338-344) 中段は20字ブックトーク。価格は本体価格(税別)。 もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  もっと新しい記録
2007年3月の総評
今月の読了冊数は7です。
長編3、エッセイ・一般2、ライトノベル2。
コンプ計画中の著者の読了数は森博嗣3、椹野道流1、高里椎奈1、時雨沢恵一1です。

2007年3月の菜の花的ベストは…

 「εに誓って」             森 博嗣(評点4.0)

「εに誓って」は森博嗣のGシリーズ第4作。
シリーズ読者にはおなじみの山吹君と加部谷さんが乗車した高速バスが
ジャックされた!?…というお話。ジャックの間の僅か一晩で決着する、
物語内部の時間は短い作品です。シリーズの他の作品とは全く異なる設定。
そのミステリっぷりと心理描写が楽しめる、比較的異色作になっています。


以下、高評価順(同評価の場合は読了日順)に簡単に作品紹介します。

 「貴族探偵エドワード 銀の瞳が映すもの」椹野 道流(評点3.0)
 「キノの旅]」             時雨沢恵一(評点3.0)
 「モリログ・アカデミィ2」       森 博嗣 (評点3.0)
 「フラッタ・リンツ・ライフ」      森 博嗣 (評点3.0)
  

「貴族探偵エドワード 銀の瞳が映すもの」は、椹野道流の新シリーズ。
角川ビーンズ文庫から出ているライトノベルで、内容はオカルト・ミステリ。
異世界ですが、雰囲気としてはやや古風なイギリス風かな。
紹介文も兼ねたシリーズ第1作ということで、ボリュームは少なめ。

「キノの旅X」はその名の通り、時雨沢恵一のキノシリーズ第10巻。
人間キノと言葉を話す二輪車エルメスが、異世界の都市国家を1話1国で
巡っていく連作短編ライトノベルです。口絵「ティーの願い」、
第六話「ティーの一日」など、ティー、大フューチャー中。

「モリログ・アカデミィ2」は、森博嗣のブログの再編成第2巻。
「WEBダ・ヴィンチ」連載の森博嗣のブログ3か月分が元になっています。
このブログは本にされることを前提に3年という期限で進行中(全12巻完結予定)。
色々な世界を垣間見るのにお勧め。「算数」が特に楽しいです。

「フラッタ・リンツ・ライフ」は森博嗣のスカイクロラシリーズ第4作。
次第に明らかになるキルドレの新事実と、揺れる「僕」の心を描きます。
暗く幻想的、ふわふわとしているのにリアリティのある、
掴みがたいような心の動きの描写は秀逸。


 「仕事で話す力が面白いほどつく本」   櫻井 弘(評点2.0)

「仕事で話す力が…」は、話し方聞き方44のコツをまとめたハウツー本。
コツがまとまっていますので、困ったときにふと手にとって、
該当部分を読んで参考にしてみるという「辞書的」使い方が出来そうな作品。
今まで気付かなかったことが気付けるかもしれません。


 「小説 のだめカンタービレ」      高里 椎奈(評点1.0)

「小説のだめカンタービレ」は、超有名なあの漫画のノベライズ。
ノベライズは高里椎奈の手によるもの。下敷きはテレビドラマ版となっています。
ただ、ドラマでは両側の視点だったものが一方向になっていたりして、
ちょっと共感しづらい感じが残念。


以上、今月の読書の俯瞰でした。








338. 「貴族探偵エドワード 銀の瞳が映すもの」     椹野 道流
2007.03.01 中編 224P 457円 2005年11月発行 角川ビーンズ文庫 ★★★★★
英国風ミステリアス・ストーリー開幕

【100字紹介】
 大国アングレの首都・ロンドラ。
  三拍子揃ったお坊ちゃんのエドワードと、
  お世話係のシーヴァは閑古鳥の鳴く私立探偵。
  あるときエドワードの母校から幽霊騒ぎの究明を依頼され…。
  英国風ミステリアスストーリー第1弾


ついに菜の花、角川ビーンズ文庫にまで手を出したか!?
…と思われるかもしれませんが(間違ってはいない)、
一応、タイトルで選んだわけでも文庫で選んだわけでもなく。
著者で選んでますよ、椹野道流氏ですよ。
菜の花、この著者の作品をコンプ目指していますから。
でも、微妙なんですよね、全部は出来ない…。
いわゆるBL系も書く作家さんなので、そちらには流石に踏み出せません。
というわけで、一部除外作品はありつつ、収集中。

さて、その椹野道流氏の新しいシリーズ。
タイトルにびっくりですけどね。き…貴族探偵エドワード?
はい、そのままです。主人公は貴族のお坊ちゃん。
パブリックスクールを出て大学に行くかと思ったら、
趣味に走っていきなり私立探偵に。
そんなワガママお坊ちゃんを支えるお世話係の青年シーヴァ。
でも、大したお仕事も舞い込まず、うずうずしているところに、
やってきた依頼人が、エドワードの母校の校長先生。
なにやら幽霊騒ぎが起こっていて、それをエドワードに解決してもらいたいと…。
幽霊騒ぎに一枚噛んでいるらしい生徒・トーヤ、
それに事件の担当刑事であるプライスなどが絡んできて、
どたばたと、でもスムーズに事件は進行していきます。

うん、ミステリとしてはスムーズすぎて歯ごたえなし!?
かもしれませんけど、読みどころはそこじゃないかな。
実にこの著者らしい作品だと思います。
ちょっとまとまりすぎている感はありますが、
まあ、この長さで紹介文も兼ねた1作目ですから、
「綺麗にまとめた」というところでしょう。

銀の瞳に映ったのは…何だったのか。
やや女性好みのライトノベル、かな。

ちなみに舞台は異世界、かな。



菜の花の一押しキャラ…シーヴァ・アトウッド 「まさか!す、す、素晴らしいと思います。怪力、まことに結構です!」 (シーヴァ・アトウッド)
主人公 : エドワード・H・グラッドストーン
語り口 : 3人称
ジャンル : ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト
雰囲気 : オカルト・ミステリ
イラストレーション : ひだかなみ

文章・描写 : ★★★+
展開・結末 : ★★★+
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★+

総合評価 : ★★★★★
椹野道流の著作リスト よみもののきろくTOP
339. 「εに誓って」     森 博嗣
2007.03.04 長編 290P 880円 2006年5月発行 講談社ノベルス ★★★★
Gシリーズ第4作。バスジャックと謎の団体


【100字紹介】
 山吹早月と加部谷恵美が乗車した高速バスがジャックされた!?
  犯人グループは都市部に爆弾を仕掛けたという声明を出していた。
  乗客名簿には「εに誓って」という謎の団体客が。
  Φは壊れたねから続くGシリーズ第4作


「Φは壊れたね」「θは遊んでくれたよ」「τになるまで待って」に続く、
ギリシア文字がタイトルに入る「Gシリーズ」の第4作です。

100字紹介にあるように、シリーズの主要人物2人、
山吹と加部谷が東京発、中部国際空港行きの高速夜行バスに乗ったところ、
それがバスジャックされてしまうお話。
しかもこのバスジャック犯、かなり組織的なようで…。
さらにさらに、「εに誓って」なんて怪しい名前の団体客まで絡んできて、
事件は迷走状態…!?ε…これはどこかで聞いたような…?
そう、Gシリーズですよ!
これまで何度も出てきた、この意味不明なギリシア文字。
事件のキーワードに紛れ込み続け、そして真賀田四季の影を
連想させてきたギリシア文字ですよ。
これは一体、どんな関わりがあるのでしょうか。

今回は他のシリーズ作品とは一線を画す設定ですね。
全編、ずっとバスに乗っています。
夜行バスの走行時間で話が完結するわけですから、
ストーリーの中の時間は大変短いですが、しっかりミステリですね。
同様に全体がバスジャックの話、といえば
我孫子武丸著の「人形は遠足で推理する」というユーモアミステリがありますが、
設定も違えば展開も違うし、主軸がまったく違うので全然同じ感じはしません。
同じ「バスジャック」をテーマにしてもここまで違う作品になるわけですね、と。

ジャックされているのは山吹・加部谷ですが、
犯人が「ケータイで連絡可能ですよ」と言い出したために
山吹も加部谷もそれぞれ、赤柳(+海月及介)と西之園萌絵に連絡を取れることに。
バスの中の2人から、那古野の赤柳、海月、萌絵、
それに萌絵から愛知県警や犀川へどんどん連鎖して視点が変わります。
更に、バスに乗り合わせた人々へも視点は動き…。

それぞれの心理描写はかなり巧みですね。
こんなに森博嗣氏って巧い人だっけ?と思わず驚くくらい。
冷静で客観的な視点を持ち続けたからこそ、
こういう文章が書けるのかな、と思いました。いや、巧いです。
かなりよかったですね。

落ちは…、そうですか…としか言えなかったですけど。
その意味ではすっかり菜の花、騙された人かな。
本作は、中盤の巧さに引き込まれました。



菜の花の一押しキャラ…山吹 早月 可哀想な弟君 「大丈夫、落ち着いて。僕がついているから」           「頼もしいのか、頼りないのか、複雑な人ですよね、山吹さんって」 (山吹 早月、加部谷 恵美)
主人公 : 加部谷 恵美、西之園萌絵他
語り口 : 3人称
ジャンル : ミステリ
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 新本格系
結 末 : 決着
ブックデザイン : 熊谷 博人・釜津典之
カバーデザイン : 坂野 公一(welle disign)
フォントディレクション : 紺野 慎一(凸版印刷)

文章・描写 : ★★★★
展開・結末 : ★★★+
キャラクタ : ★★★★
独自性 : ★★★+
読後感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★
よみもののきろくTOP 森博嗣の著作リスト
340. 「仕事で話す力が面白いほどつく本」     櫻井 弘
2007.03.10 一般 224P 533円 2005年1月発行 三笠書房 ★★★★★
気にかけてみよう!話し方聞き方44のコツ


【100字紹介】
 話し上手は聞き上手。それは単なる才能ではなく、
  コツをつかんで気にかけていれば、誰でも身につく能力なのです。
  豊富な具体例を挙げながら「こんなときはどう話したらいい?」を
  まとめた話し上手になるための辞書。


ハウツー本ですね。テーマは話し方。
話し上手は聞き上手。ですから聞き方、でもあります。

ああ、なるほどねー、ということが沢山。
多分、あまり普段から気にかけていなかった人ほど、
これを読んで「あ、そうか!」と気付けることは多そうです。
具体例も豊富で「こういう場面でこうするということか!」という
ことも分かりやすそうですね。

ただこの具体例、あまりにも「うまくいっている例」が多くて、
「普通はそういう反応にはならないと思う…」というものも。
そんなにうまくいくなら苦労はないよ、というのが一番強く思ったこと。
すぐに使える、と銘打っていて、例も沢山挙げられているのに、
何故かこれが実際に使えると思えない上に、
読み終わった直後に、本書に何が書いてあったか
忘れてしまうインパクトの薄さも不思議。
決して悪い本ではないと思うのですが、
一度読んでそれで終わりにするタイプではない、ということですか。

多分、困ったときにふと手にとって、
該当部分を読んで参考にしてみるという「辞書的」使い方が
一番向いているのではないかと思います。
今まで気付かなかったことが気付けるかもしれません。



テーマ : 話し方
ジャンル : 一般書
対 象 : ビジネスマン〜一般向け
雰囲気 : ハウツー
カバーイラスト : ©Jim Frazier-Images.com/IPJNET.com
カバーデザイン : 三笠書房装幀室
カバーフォーマット : 三枝 ノリユキ

文章・描写 : ★★+★★
展開・結末 : ★★+★★
簡 潔 性 : ★★★★★
独 自 性 : ★★+★★
読後感 : ★+★★★

総合評価 : ★★★★★
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341. 「キノの旅]」     時雨沢 恵一
2007.03.17 連作短編 272P 570円 2006年10月発行 メディアワークス
電撃文庫
★★★+
人間キノと言葉を話す二輪車エルメスの旅!


【100字紹介】
 人間のキノが、言葉を話す二輪車エルメスと
  旅をする物語第10作。国を巡ることは人を知ること。
  人間とそして世界の、美しさも醜さも。
  沢山の個性的な人が作り出す異世界都市国家を、
  キノとエルメスと一緒に旅しよう


●収録作品●
--------------------------------------------
口 絵 ペットの国 ―apPETite―
口 絵 ティーの願い ―Get Real!―
プロローグ 在る男の旅・b ―Life is a Journey, and Vice Versa・b―
第一話 インタビューの国 ―Out of the Question―
第二話 ホラ吹き達の話 ―Fantasy―
第三話 保護の国 ―Meritocracy―
第四話 電柱の国 ―Transmission―
第五話 こんなところにある国 ―Preface―
第六話 ティーの一日 ―a Day in the Girl's Life―
第七話 歌姫のいる国 ―Unsung Divas―
プロローグ 在る男の旅・a ―Life is a Journey, and Vice Versa・a―
--------------------------------------------

キノのシリーズ第10作です。
いつも通り100字紹介は超手抜きで、またまた前と同じです。
この文章すらいつもと同じ。
ついに10作目ですね。
連作短編なので、カウンタブルなのはもっと沢山。
1つの短編につき大体1国登場のため、
今まで出てきた国も沢山。
まあ、似たような話が出てきても仕方ないでしょうか?

第一話「インタビューの国」は、
第2作の「第四話 自由報道の国」や
第8作の第三話「ラジオの国」と通じるものがあるかな。
マスメディアに関する著者の共通した視点がありそうです。
テーマは似通っていますが、落ちや展開を工夫していて、
それぞれ面白いですけれどね。

最近露出の増えていた(?)シズ様が本作ではちょい役で。
代わりにどーんと登場しているのがティー。
何と口絵の主人公に!?(口絵「ティーの願い」)
さらに第六話では「ティーの一日」として彼女がまたまた主人公!?
大フューチャー中ですね。さてはティー、人気?
菜の花もこのキャラは未知数でなかなか面白いとは思いますが…
変な子ですよね、ええ。
これらはそんな彼女の一端が垣間見える2作品です。

異色作品(?)は第五話かな…。内容は読んでのお楽しみ…。

今回は第七話が全体の半分以上を占める長い話。
キノ、ターミネーター化!?という、一風変わったお話。
主人公が少年少女という感じで…。
あ、キノも少年少女ですが。まさにひとりで…(笑)。
キノって極悪非道!?という趣向ですがさて?
まあ、実際にかなりの勢いで非道ですけどね、この主人公。。。

そういえば、カラー口絵に、まだ髪の長かった頃の、
女の子女の子しているキノがいます。
ピンクのワンピースに白いエプロン、髪にもピンクのリボン。
うわあ、何か大きなお友達が沢山出てきそうなお嬢さんですね。
これはある意味、必見かも?



菜の花の一押しキャラ…トラックを運転する農夫のおばさん 「あちこちにあるボロイ通りが貧困街で、誘拐だ強盗だと  ひどく治安が悪いから、不用意に近づいたりして―」  そこで男はにやりと笑い、               「あんまりたくさん負傷者を出さないようにね」     (隊商の中年のおじさん)
主人公 : キノ
語り口 : 3人称
ジャンル : 異世界ライトノベル
対 象 : 子供〜一般向け
雰囲気 : 静か。淡々とした
結 末 : 各話完結型
イラスト : 黒星 紅白
カバー・口絵・本文デザイン : 鎌部 善彦

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP 時雨沢恵一の著作リスト
342. 「MORI LOG ACADEMY2 モリログ・アカデミィ2 1年のケーキ元旦に飽き」     森 博嗣
2007.3.24 エッセイ 320P 650円 2006年6月発行 メディアファクトリー ★★★★★
ブログを再編成した、森博嗣の新シリーズ2


【100字紹介】
 「WEBダ・ヴィンチ」連載の森博嗣のブログ日記
  「MORI LOG ACADEMY」の文庫化。
  小学校の学科別にカテゴリ分けし、
  HRでは日々の出来事や雑感、
  国語・算数・理科・社会・図工では関連記事を掲載。


はい、紹介文はすべて、1のときの使い回しです。
というわけで第2巻です。
前回同様、3か月分の森博嗣のブログの内容を再編成。
カテゴリ分けはHR、国語、算数、理科、社会、図工という
前回と同じものですが、内容量は圧倒的にHRが多いです。

菜の花としては一番、算数が好きなのですが、
理系の菜の花には悔しいことに、分からない問題もあります。
今回は1つ目が分からない!悔しい!
文系の人は最初から諦めよ、というヒントでしたが、
理系の菜の花も歯が立たない…しくしくしく。
見た感じ、すぐ分かりそうな気もするのですが、分かりませんでした。
どうも菜の花もすっかり、老朽化してしまったようです。
4色問題ではずいぶん、頭の体操になって、
脳内くもの巣除去が出来たような気がしますね。

この手のエッセイを読んでいますと、
森博嗣氏の考え方は大変面白いな、といつも思います。
「そうそうそう、そうなんだよ!世間の人はそうは言わないけど、
絶対思っている人は他にもいると思っていたんだよ、よく言った!」
…というようなことから「それはさすがにちょっとどうなの?」
…ということまで色々ですが、そうですね、
普段他の人のブログなんか読んだりする菜の花ですが、
森博嗣氏の考え方が他のどのブログの内容よりも、近しく感じます。

これは森博嗣氏が、読者にそう思わせるのが巧いのか、
それとも森博嗣氏が大学の理系研究室という、
菜の花と比較的近い環境にあったせいか(似た環境が似た思考を作る説)、
たまたま菜の花と波長が合う人だったのか…、は定かではありませんが。


エッセイということで、とても軽い読み物の部類です。
誰でも気軽に読める、という意味で。
でもインプットすると、意外に違う世界が垣間見えて
何かを考えるときに「あ、あんな人や、あんな世界も世の中にはある」
という多様性を許容するような、考え方の参考にはなるでしょう。多分…。
何でも読んでみるものだ、という考えに近いですが…。

世間一般の人もこれで、少しは大学とか、研究とか、
はたまた趣味のことについてこんな世界もあるにはあるんだってば、
ということを考えて下さると、他の人のブログを読みに行ったときに感じる
「自分の周りの世界=世界のすべて」という多様性を許容してくれない考え方の人が
少しは減るのかなーとか思ってみたりみなかったり。
まあ、そういう自分のごく近い周りしか見えない人は、
広い世界から何かを吸収しようとはしないので、
そもそも読書などをしないのかもしれませんけれど。

世間にはこんな人もいるよ、を知りたい人にお勧め。
日記なので特に続き物でもないため、何巻から読んでもOKかと思います。
いきなり2巻でも無問題です。



テーマ : 日々の雑感など
語り口 : 日記
ジャンル : エッセイ
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 普通の日記ブログ
イラスト : 羽海野チカ
ブックデザイン : 後藤 一敬、佐藤 弘子

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP 森博嗣の著作リスト
343. 「小説 のだめカンタービレ」     高里 椎奈
2007.03.27 長編 288P 952円 2006年12月発行 講談社 ★★★★
変人ピアニストのだめと、指揮者千秋の物語

【100字紹介】
 人気漫画のTVドラマ版を小説化。
  幼い頃から志す指揮者の道へ、
  今一歩が踏み出せずにくすぶる音大生・千秋が、
  恐ろしいまでの才能を持ちながらも
  それを生かしきれないピアノ科学生・のだめと出会い
  成長する音楽物語


音楽の世界を描き、人気の漫画「のだめカンタービレ」。
2006年についにドラマ化され、その魅力的な世界を
ヴィジュアルに描き出して好評を得ています。
漫画版とドラマ版では幾つかの設定が異なっており、
またストーリーもカットされている部分が多々ありますが、
本書は漫画の小説化ではなく、ドラマ版の方の小説化となっています。

菜の花はドラマ「のだめカンタービレ」は面白いと思いましたし、
ノベライズした高里椎奈はすべての著作を読み漁っているくらいですから、
これは絶対読まねば!な1作でした。


さて本作。内容もそのままドラマと一緒。
いわゆる日本編がまるごと入った形ですね。
ただ、省略が多い。ドラマでは両側の視点から描かれたことが、
片方にされて省略されていたりします。
ドラマを見ている人なら、「ああ、この間にこういうことがあったから
こういう風になったんだよね」と補完できるのですが、
もしも知らない人が読むと置いてけぼりを食う可能性があります。
その場面ではあるキャラに視点を定めることによって、
そのキャラがどのように感じたかを読者にも体験させ、共感を呼ぶという
小説の展開としては常套手段なのですが、
ちょっとこれは、あとからのフォローが足りないと思いました。

漫画には漫画、ドラマにはドラマ、そして小説には小説の手法があり、
そのまま移管することは出来ません。
もしもやっても魅力のない作品になるのは目に見えています。
本作は、それを踏まえて小説らしくノベライズしようとした、
というところは評価されると思うのですが、
まだ少し、ドラマにひきづられているようにも感じました。

確かに元々この作家さんは叙情的なものを重視し、
細かい説明を書き込まないタイプの方ではありますが、
うーん、、、今一歩。
もう少し書いてくれると、この作品は絶対面白いものになりうると思うのですが。



菜の花の一押しキャラ…千秋 真一 「今できる事をやるんだ。一秒も無駄にしたくない」千秋 真一
主人公 : 千秋 真一&野田 恵
語り口 : 3人称
ジャンル : ラブコメディー
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 真面目に音楽
結 末 : ハッピーエンド
ブックデザイン : 坂野 公一(Welle design)
写真 : ©フジテレビ

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★★★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP 高里椎奈の著作リスト
344. 「フラッタ・リンツ・ライフ」     森 博嗣
2006.3.31 長編 296P 1800円 2006年6月発行 中央公論新社 ★★★★★
戦闘機乗りのスカイ・クロラシリーズ第4作


【100字紹介】
 シリーズ第4弾。永遠に子供のままの「キルドレ」。
  戦闘機乗りでキルドレの僕は、謎をはらんだ女性の元を訪れる。
  上司の草薙はそれを快く思っていない。
  次第に明らかになるキルドレの新事実と、揺れる僕の心を描く。


スカイ・クロラに始まるシリーズ第4作です。
時間軸だと、「ナ・バ・テア」→「ダウン・ツ・ヘヴン」の次くらい?
「スカイ・クロラ」の前ではないかと想像。
実はうろ覚えなのですが、この主人公って多分…、
スカイ・クロラで名前が出てきたあの人ではないかと思うので。
そうか、こうなっていたのか、と。
とりあえず、初主人公ですね。このシリーズは作品ごとに主人公が変わりますから。
主人公が一作品の中で変わるのは時々ありますが、
一作品の中では変わらず、シリーズの作品ごとに変わるのは珍しいかも。

つまりそれは、比較的独立した話であるよ、と言っているような
ものだと思うのですが、その割にはシリーズの中の作品だよ、
という感じの平坦さが気になります。まあ、面白いのですが…、
でも一作品の中で大きな起承転結があって、山あり谷ありで
エンターテイメント性抜群、「大満足!」と思えるものを求めてしまう
ぜーたくものというか、フィクション大好き!な菜の花的には、
ちょっと物足りないかなーと。
シリーズ作品で、一番面白いのは常に第1作である、とよく言いますが、
多分、このシリーズも例外ではないかな。

相変わらず、暗く幻想的、ふわふわとしているのにリアリティのある、
掴みがたいような心の動きの描写は秀逸。
戦闘シーンなどの動きもあって、何がそんなに不満なのか、
自分でもよく分からないのですが。もっと明るさが欲しいのか?
だったら暗さが欲しいときにタイムリーに読めばよいのに。
何となく、自分で自分が分からなくなってきますねー、これは。

ところで「キルドレ」に関して、そして草薙に関しても、
意外というか、えーっ、という新事実発覚。
これが、スカイ・クロラに繋がるのか?
そして、そのあとはどーなってしまったのか…。
ちょっと、スカイ・クロラが読み返してみたくなりました。
…うーん、読み返してみようかな。
菜の花にしては珍しいことです。殆ど再読はしないので。
それを思わせるということは、やはりよい作品、ということなのでしょうか。
そうかもしれません。




菜の花の一押しキャラ…クリタ ジンロウ 「自信家じゃないことが証明されたときは、もう死んでいる。           死んだらここへは来られないわけだから、言っておいて損はないと思うんだ。」 (クリタ ジンロウ)
主人公 : クリタ ジンロウ
語り口 : 1人称
ジャンル : 異世界ファンタジー
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 暗め、飛行機、マニアック
結 末 : 続く感じ
表紙写真 : Erich Hartmann /
   Magnum Photoes /amana
ブックデザイン : 鈴木成一デザイン室

文章・描写 : ★★★★★
展開・結末 : ★★+★★
キャラクタ : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
よみもののきろくTOP 森博嗣の著作リスト
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