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(2005年1月…087-093) 中段は20字ブックトーク。価格は本体価格(税別)。 もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  もっと新しい記録
087. 「作家小説」     有栖川 有栖
2005.1.07 連作短編 297P 533円 2001年幻冬舎、2003年幻冬舎ノベルス、2004年8月発行 幻冬舎文庫 ★★★+
作家を描く、作家だらけの連作短編集

本年初めての読了小説は、有栖川有栖でした!


【100字紹介】
 ベストセラーを生産するための機械にとりつかれた作家。
 サイン会が憂鬱な作家。笑う作家、怒る作家、
 壊れる作家などなど、ミステリよりミステリアスな
 「作家」という職業の謎に果敢に挑む、
 作家だらけの連作短編集! (100字)



●書く機械(ライティング・マシン)
 私は出版書籍部の編集者。ある日、編集長から
 自社の新人賞作家でなかなか人気の上がらない益子紳二の
 担当編集者になるように申し渡される。益子は遅筆、
 悪くはないがよくもないユーモアタッチの推理小説家。
 編集長は彼をベストセラー作家に大化けさせるため、
 地下の「秘密の部屋」に連れて行く…。

 <解説>
 昔、「世にも奇妙な物語」というTV番組がありましたが、
 このお話はまさにその中の1作としてふさわしい作品。
 「秘密の部屋」の謎が恐ろしい。
 この部屋はひどく非現実的で、リアリティとは程遠いにも関わらず
 用意周到な筆でここに至るまでの緊張感を高め、
 このようなことを読者が受け入れ、恐ろしいと感じられる
 一種異様な雰囲気を作り上げています。
 締め切りに間に合いそうにない作家をホテルや印刷所の
 会議室に閉じ込めて執筆させるという、
 いわゆる「缶詰め」のパロディでありますが、
 「書く機械」の意味が変わっていくラストは
 ホラー以外のなにものでもないでしょう。
 作家にはなりたくないな、と思わず呟いた1篇。

 評価:★★★★+



●殺しにくるもの
 同じような手口の殺人事件が連続して起きている。
 警察の調べでも被害者には共通項が見出せない。
 事件の描写と平行して、孤高のカルト作家・上杉皇一に
 女子高生の送り続けるファンレターが提示される。
 事件との関連性は…?

 <解説>
 殺人事件と、女子高生のファンレター&日記が
 カットバック形式で描かれています。
 殺人事件の被害者はひとくくりには出来ませんが、、
 どこか似たような雰囲気のある人々だ、ということはよく分かります。
 しかし、実際に彼ら同士には接点がないことに刑事たちは困惑します。
 手掛かりはもう一方の中心、女子高生のパートにあります。
 一見、何の関係もなさそうな2つのパート。
 しかし、衝撃的な結末を迎えて初めて、謎は氷解します。
 著者は、答えを言葉では語らない。それがまた巧いのです。
 この短編集随一の本格ミステリであります。
 菜の花の趣味ではない悲劇ながら、この完成度の高さに脱帽して
 評価は★5つにさせて頂きます。

 評価:★★★★★



●締切二日前
 推理小説家の川村耕太郎は、締切が2日後に迫った
 短編の構想すら出来ていない。創作ノートをめくってみたり、
 小ネタのメモをかえすがえす眺めてみたり…。

 <解説>
 締切間際の苦悩。まことに作家らしいテーマであります。
 しかし何故、人は締切ぎりぎりまでついつい放置して
 しまうのでしょうね?確かに、菜の花も小学生の頃に
 夏休みの宿題で大変な目にあったことが…。
 まあ、それに懲りてそれ以降は必ず7月中に8割がた
 終わらせてしまうようになったのですが。これこそ学習?

 そして何故か締切が迫ると、何か別のこと…
 例えば部屋の模様替え…をしたくなるのは人間の悲しい性
 とも言えるでしょう!本作でも主人公は右往左往して
 書庫で本を探してしまったり。大変コミカルに描かれているが
 実はとっても身につまされる内容だったりするのです。
 創作ノートの内容や、小ネタもまた、面白い!
 こんなに大奮発してしまっていいの?と思わず
 有栖川氏に訊いてしまいたくなります。
 
 ただ、残念なことにラストがどこにかかるのか、
 菜の花には分かりませんでした。誰か、教えて下さい!

 評価:★★★★★



●奇骨先生
 僕は高校の図書部員の企画で、インタビュアーとして
 敬愛する作家・奇骨先生宅を訪れた。
 同行したのは、本屋の娘である憧れの吉沢さん。
 機嫌よくインタビューに応じていた奇骨先生だったが、
 僕が小説家志望だと知ると、突然不機嫌になり、
 出版業界の暗部について語り始めた…。

 <解説>
 前半はそのまま雑誌に載っていても不思議でないほど、
 ごく一般的な作家へのインタビュー。これはこれで
 面白いものがあります。「小説家になるために重要な
 ことは諦めないこと」という言葉はきっと、
 有栖川有栖自身の声なのでしょう。
 後半は、図書館司書の専門科目の講義で、
 延々と聞かされたお話そのもの。でも少し過激。
 インタビューですから、殆どが会話文で進行するのが
 この小難しい講義を読みやすくするに一役かっています。
 奇骨先生の背後に、出版業界をよく知っていて、
 その上で自分の立場を真剣に考えている有栖川有栖
 …という像が浮かんでくるようです。

 そして奇骨先生の豹変振り。これは巧すぎます。
 このもっていき方は、人の心理をうまく表現しています。
 また、前半と後半の奇骨先生の二面性も、
 ひとりの人の心の中が、すべて同じ方向を向いているのではない、
 ということをよく表していると感じました。

 最終的に、ハッピーエンドに行き着いたので安堵。

 評価:★★★★



●サイン会の憂鬱
 新進作家の勅使河原秀樹は、出身町の書店で行なわれる
 新刊発刊記念サイン会に行くことになった。
 気が乗らない勅使河原だったが…

 <解説>
 インタビューと並んで、作家本人による重要な
 プロモーション活動であるサイン会を題材にしたもの。
 しかし、さすがに有栖川作品。何だか異常なんですね。
 次々と起こるトラブル。しかもこの作家、何故か
 読者がもどかしく思うほどサイン会を嫌がっているようで…
 最初は恥ずかしがっているのかと見えるのですが、
 何かそれ以上のものがあるような気がするのです。
 その答えは最後まで読んでのお楽しみ。
 どんなジャンルの小説であっても、
 ただでは終わらないところが推理作家というところでしょうか。

 評価:★★+★★



●作家漫才
 作家である「芥川正助」と「直木正太」の漫才。

 <解説>
 作家をとりまく環境…辛口書評やスランプ、文学賞などを
 ブラックな笑いも含んでネタにする漫才。
 しかし意外に知的な話題も?
 文学青年・文学少女なら思わずにやりな部分も多々あり。
 
 評価:★★+★★

 

●書かないでくれます?
 編集者の井上美沙緒は偶然、
 友人である作家の赤木慶也と飛行機で乗り合わせた。
 最近、傑作を書いたばかりだというのに赤木は何だか元気がない。
 どうやら人気エッセイスト失踪事件と関係がありそうなのだが…。
 
 <解説>
 失踪事件!何とミステリらしいテーマでしょう!
 けれどこの作品が描きたいのは、やはりミステリではなく、
 もっと別の雰囲気…不気味さ、でしょう。
 中間の挿話も非常に不気味。作品を通して漂う雰囲気も不気味。
 作品としてはホラーに分類されるのでしょうか?この短編集で最恐かも。
 前半の「雪女」評が後半にそのままきいてくる作りになっています。

 評価:★★★★★



●夢物語
 鰍沢文雄は小説家。ドリーム・ボックスという医療機器に入ったが
 トラブルで夢の世界に閉じ込められてしまった!
 その世界は「架空」という概念が存在せず、物語というものがない。
 そこでフミオは大観衆を相手に物語を語って聞かせる
 「物語手」になったのだが…。

 <解説>
 物語のない世界、物語を知らない人々に物語を語るのは、
 白黒しか知らない世界で、フルカラーの絵を描いてみせるようなもの。
 その印象は鮮烈で、誰もが語り手に魅了されてしまうのです。
 この作品はそんな周りからの絶賛、労い、そして尊敬の念が
 まるで自分に注がれているかのように感じられ、心地よいのです。
 それなのに、どこか不安が付きまといます。
 これがいつ醒めるともしれない夢の中だから?それとも…。
 それは、このお話を読んでみて知って下さい。
 ところで、作者はこの物語のラストを幾通りかによめるようにしたと
 あとがきで語っています。結末は、作者自身もひとつには決めかねると。
 あなたの結末はどうでしたでしょうか?

 評価:★★★+



菜の花の一押しキャラ…特に無し 「先生のお体の方が、いや、精神の方が大切です。」(江守…「締切二日前」) 作家が発狂したかと心配する編集者の、ありがたいお言葉。 有栖川有栖の著作リスト よみもののきろくTOP
088. 「恋恋蓮歩の演習」     森 博嗣
2005.01.13 長編 314P 840円 2001年5月発行 講談社ノベルス ★★+★★
航海中の豪華客船から消え失せた乗客と絵!

意味があるんだかないんだか謎なこのタイトル…。

【100字紹介】
 世界一周中の豪華客船ヒミコ号上、那古野から宮崎の1日半で、
 乗客の持ち込んだ天才画家・関根朔太の自画像を盗み出すのが
 今回の保呂草の任務。しかし航海中、
 突然の銃声の後に男性客の消失事件が発生した!? (97字)


関根朔太といえば、Vシリーズ(紅子さんのシリーズのことらしい)
の既刊である「魔剣天翔」にも登場した画家。
しかも本作のラストは、その「魔剣天翔」を読まずにはちょっと理解が困難かと。
もしも森博嗣をお読みになるなら、シリーズものについては
最初からすべて読むしかないようになっているのですね。
どうせそうなら、巻数でも振ってくれれば探しやすいんですがねー…。ちょっと不親切。


全体として、本作は他の森作品と同様、恋愛小説に分類されると思います
ミステリ仕立て恋愛小説。背表紙には「豪華絢爛森ミステリィ」と書いてありますが、
あくまでこれは純粋ミステリに分類には分類されない、と菜の花は考えます。


冒頭部分で語られる通り、本作は大変、事件前の日常部分が長い。
予告があるからまだ耐えられなくはないですがね。
しかし4割がそれに割り当てられてますから。さすがに長い。その内訳は
「幸せな純愛物語」、「片思い奮闘記」、「The 仕事人請負編」
って感じです。ははは。前2つがばりばり恋愛小説。

そして事件。こんなのミステリ小説の事件じゃない…。
恋愛小説のための事件としか思えない。
事件後の動きは殆ど無し。結局、解決する手段は思考だけ。
読者にミステリを解いてもらおうという意図はなく、
ただ、手品のようにブラックボックスで、結果をつきつけるイメージ。
実際、各章のタイトルは「種も仕掛けもありません」
「取り出しました一本の紐」「よくお確かめになって下さい」など、
手品の台詞そのもの。観客には考えさせないような意図に見える。

恋愛小説としては、大笛梨枝の純愛物語の方はとにかく都合がよく、
ああ、いいねえ、とは思うけど、目の肥えた恋愛小説読者に評価されるか否かは
分からない。恋愛小説を避けている菜の花としては、まあ、いいんでは?程度。
紫子の片思い奮闘記の方は、多分、面白い。努力はあるが、笑いもあり、で
変化に富んでいてよいかもしれない。

いつも森作品の評価が上げにくい理由は、物語の平坦さにあります。
盛り上がるべきところで盛り上がらず、エピソードが平べったい。
これが森博嗣の最大の欠点でしょう。
本作も例外ではありません。やはり、いまいち盛り上がりに欠ける…。
あと一歩、です。



菜の花の一押しキャラ…大笛 梨枝 「ドライな」彼女が何故、あれを欲しがっているかが分からない。 「覚えたから覚えているだけじゃん。知らないことは知らないもんね」(小鳥遊 練無) 納得。
トリック技巧 :★★+★★  殆どトリックなんてないけど。
思考の流れの自然さ :★★★★★  保呂草の思考は大変滑らかだと思う
リアリティ :★★★★★  リアリティは皆無ですね
本格度 :★★★★★  ミステリ風恋愛小説であって推理小説ではない
読みやすさ :★★★★★  文章は特に読みにくくはないが前提知識が必要
真相の意外性 :★★★★★  保呂草V.S.七夏はまあまあ意外かも
読後感 :★★★★  関根朔太のエピソードがよい

総合評価 :★★+★★  ミステリ風恋愛小説
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089. 「アフリカポレポレ 親と子のセレンゲティライフ」     岩合 日出子
2005.1.19 エッセイ 340P 514円 1985年朝日新聞社、1990年2月発行 新潮文庫 ★★★★+
「ふつう」の親子の、アフリカ生活1年半

珍しく、方向性の違った本を読みました。


【100字紹介】
 動物写真家の夫に同行した著者と幼い娘。
 滞在したアフリカ・タンザニアのセレンゲティ国立公園は
 平原の真ん中、家はあるが電気はない、水もたまにしか出ない。
 でもキリンが庭に食事に来る自然と一体化した土地だった (100字)


大変、面白いノンフィクションでした。
1日数ページずつ、休憩時間に読んでいたので
読了まで1ヶ月以上かかりましたが、書かれている期間は1年半。
これでもとっても駆け足で、著者達の時間を駆け抜けた方ですよね。


すべての発端は、著者・岩合日出子氏が、
夫であり著名な動物写真家である光昭に

『セレンデティに行こう』

と言われたこと。それに対する著者の答えは『だれが?』。
もう、ここからして「は?何なのよ、何を言ってるの?」という
いぶかしげな著者の表情が浮かび上がってこようというもの。
それはそうでしょう!
普通に日本で生活していた主婦がいきなり、アフリカの国立公園で
1年以上も生活しろ!なんて言われたら、何が何だか分かりませんよ。
結局、動物写真家・光昭、妻・日出子、
そして4歳の娘・薫の3人は旅立つことになるわけですが…。

セレンゲティとはマサイ語で「はてしない平原」という意味だそうで、
実際にそんなところであることは、
次々と描写される生活ですっかり得心がいきます。
日本とは、かけ離れた生活。
しかもタンザニアはポレポレの国。
このタイトルになっている「ポレポレ」とは
スワヒリ語で「ゆっくり」の意味とのこと。
日本の常識は通用しない…特に時間的なことに関して。
流れている時間が全然違うのです。

今、日本で生きる我々の毎日の生活とは、まったくかけ離れた、
でもつくりものじゃない、本当の時間。
著者が動物写真家・光昭氏という特殊な人間でないことも、
とてもよいですね。妻の目から見た動物写真家。
そしてこのエッセイの主人公は特に、幼い娘の薫ちゃんです。
ちょっと口調が大人びすぎている気もしますが、
(言葉を覚えるこの時期に、周りが大人ばかりだから?)
ああ、すっとそんな言葉が出てくるんだね、と
感性の素直さに思わずうなずくこと請け合い。


著者は自分のことを、「ふつうの人」と言っていますが
そこにこそ、本作の魅力を感じます。
タンザニアにやってくる人々(旅行者ではなく)に同伴者がいる場合、
その人の仕事をサポートする研究者なり、写真家なり、助手である、
というのが一般的だと文中にもありますが、確かにその通りなのでしょう。
そうでもなければわざわざ長期間、どこか遠くで…しかも、
現在住んでいる場所よりずっと「不便」な土地に滞在しようと思うでしょうか。

しかし、著者は断固、主婦としてセレンゲティに滞在。
最初に光昭氏から「セレンゲティに行こう」と言い出されたときには
人を雇えば楽が出来るぞ、という提案だったにも関わらず。
著者は掃除をし、洗濯をし、食事を作って、子供と遊んで、勉強もさせる。
でも、どれも一筋縄ではいきません!何しろそこはポレポレの国アフリカ。
沢山の困難を乗り越えていかなくては満足に家事すら出来ないのです。
食事を作ることひとつとっても、何しろ電子レンジもガスコンロもない!
かまどで火を起こし、少ない食材で大食漢二人(夫と娘!(笑))を
養っていかなくてはならないし、生ゴミも気をつけないと野生動物の
格好の餌食に…!いやそれどころか食材自体が餌食に…!(笑)


どれもこれも、本当の「ふつうの人」である私には考えられない世界。
それをのびのびとした感性でもって、乗り越えていき、
むしろ素晴らしく住み心地よくなっているのでは?と
周りを変えていく…そんな著者の強さが一番の読みどころだと思います。


そして、動物写真家の取材に同行した母娘の目を通して見る自然。
生と死を見つめながら、毎日を必死で生きる著者の一家。

生きることを考えさせながらも、どこかふっと肩の力が抜けるような
シビアなはずなのに温かい、そんな作品です。



余談ですが、薫ちゃんって計算すると私と同じくらいの年代なんですよねー。
今頃、どうしていらっしゃるのか、それが妙に気になります、はい。



090. 「夢幻戦記L 総司紅蓮城(上)」     栗本薫
2005.01.21 続き物 206P 2003年12月発行 ハルキノベルス ★★★★★


さて、恒例(?)の前巻からの出版期間の開きは…!
じゃーん。10ヶ月でした!

ついについにお話も山場ですよ。

新撰組、襲名!(ってゆーのか?)
新見錦局長、切腹!(一応、局長だったわね…)

そして…!

芹沢鴨、暗殺!!!!!

やりました!ついに。
さよなら芹沢さん。成仏して下さいませ。
ついでに芹沢さんに憑いてたクラヴェロスさんも。
しかし、あの終わり方は何かの伏線か???


そんなわけで話は一気に進みました。
今回の部分は、どうも史実に引きずられているのか、
やたらしっかりした感じで栗本薫特有の遊びが少なかった気がします。
個人的にはこっちの方が好きですが(^ ^;)。

まあ、思考的には色々とオリジナルな流れもありました。
やはり初期の頃より、大変読みやすく、頷きやすい内容になりました。
総司の夢の話も考え方も、ああ、そうか、とそのまま受け取れるというか。
押し付けがましさがなくなった最近の栗本氏の著作、
他のものもちょっと読んでみたくなってきました。




菜の花の一押しキャラ…沖田 総司 「とにかくボクは京を去るのだ。逃げ出すのだ。逃亡するのだ。」(少将殿) リズムがいい。 よみもののきろくTOP
091. 「新本格謎夜会(ミステリーナイト)」     綾辻 行人+有栖川有栖 監修
2005.01.22 レポート 234P 2003年9月発行 講談社ノベルス ★★★★★
新本格謎解きイベント&トークショーを再現

今回は小説じゃありません。イベントのレポート…とでも言うのでしょうか。
こういうの、分類困っちゃいます。これで司書がよくとれたもんだ。。。


【100字紹介】
 新本格誕生15周年を記念して行なわれた
 謎解きイベント&トークショーを完全再現。
 綾辻・有栖川の監修した密室殺人事件の謎を解け!
 綾辻・有栖川他、新本格の作家9名などのトークショーは
 新本格ファンなら必見! (99字)


イベントが行なわれたのは2年前。
ミステリーナイトという、この類のイベントが存在するということは
それこそミステリーを読んでいると見かけることになるので知っておりましたが
参加したこともなければ参加者募集しているのを見たこともありませんでした。
ちょっと興味はあったんですけどねー。
まあ、参加者募集を見ても十中八九、参加したりはしないと思いますが。
あやしさに思わず逃げてしまうかと(笑)。

しかし、何とまあ豪華な顔ぶれでしょう!
これが今現在、募集かかってたら相当悩んだ自信ありです。
だって、ねえ?綾辻+有栖川の監修のイベント!というだけでも
「お!ちょっと興味あるねえ」
って感じなのに、さらに山ほど新本格派の作家さんがトークショー!
ってすごくない?すごくない?
ってゆーか、むしろそっちの方が気になりません?
つまり、謎解きよりトークショーの方が楽しみかもー!!!って(笑)。
そんな菜の花は自分の頭脳に自信がありません。てへ☆

そして中身の感想を…。
トークショー、なかなかナイスです。
こんなにこの人って面白かったんだ!という作家さんあり、
無難なことしか言わない作家さんあり、、、
まあ、作家さんも人気商売、確かに変なことは言えないでしょうけど。
個人的には、漫画家の喜国さんがお気に入りです。
この本を読むまで全然知らなかった方ですが。

そして二大柱のもう片方(というか、ほんとはこっちがメイン?)の
謎解きの方ですが、こちらはちょっと元気がない感じ。
ヒントの与え方等、実際の会場ではどのような印象だったか分かりませんが、
本ではやや、ほんとのヒント、という感じが強すぎかな、と。
それでいいんですけど、うーんと、何というか、
事件に対して臨場感がない。そんな感じ。
ああ、でもこんなものなのかなー。これがミステリーナイトなのかなー。

ちなみに菜の花、犯人あてちっとも分かりませんでした…。
やっぱ駄目な探偵なんだー!がくっ。ミステリーファンなのに…。
微妙にミステリー語ってるのに…。語る資格無し?(号泣)



「いや、月に一度は作ってください…って感じ(笑)」(綾辻 行人) 奥様のお料理に関するコメント。主上!作ってあげて下さい! よみもののきろくTOP
092. 「六人の超音波科学者」     森 博嗣
2005.01.26 長編 295P 820円 2001年9月発行 講談社ノベルス ★★★★
Vシリーズ第7弾!閉ざされた研究所の事件

実は読了から1週間以上たってしまってからこれを書いています。
すっかり中身を忘れちゃってまして…ってゆーか、記憶力なさすぎ?
沢山読むけど、読んでくそばからどんどん忘れていく菜の花は、
底に穴のあいた柄杓みたいなものかも…。役立たずってゆーか。。。


【100字紹介】
 外界に通じる唯一の橋が爆破され、山中深くに築かれた
 六人の科学者が集う土井超音波研究所は陸の孤島に。
 所内でのパーティー中に死体が発見された。
 招待客の瀬在丸紅子たちが真相究明に乗り出す!
 Vシリーズ第7弾。 (100字)


結論から言うと、久し振りに面白い森作品だったかと。
魅力は、緊張感かな。
起伏があって、はらはらどきどき、な良い感じに仕上がってます。
ミステリとしても悪くない。その分、恋愛要素が邪魔な感じ。
論理はやや、飛ぶ傾向があるようにも思えます。
結果は論理的とは言えるけど過程は本当に論理的かしら…?

また、いくつかの疑問点もなきにもあらず。
例えば、某主要キャラが死にかけますが(そのあたりが、
菜の花も含めてちょっとスリルのある娯楽小説を求める人種にとっては面白さの山場か)、
何故犯人はそこまでしたの?というのは謎。だと思う。
他にも何故こんな行動を?という謎が幾つか。
所詮、人の考えることなんてそんなに論理的じゃないってこと???
まあ、そうなのかもしれない。

真相について。こういうの、菜の花は結構好きです。
不幸といえば不幸だけど、どうしようもなく不幸って訳でもないし。


なおストーリーは一応、既出の短編集「地球儀のスライス」の
「気さくなお人形19歳」の続編(?)にあたる模様。
全然、読んでなくても問題ないとは思いますが。
むしろVシリーズを全部読んでないと意味が分からない。




菜の花の一押しキャラ…小鳥遊 練無 今回は大活躍だったねー
トリック技巧 :★★★★★  あんまりトリックって感じではない
動機の妥当性 :★★★★  まあ、いいんじゃないかな
リアリティ :★★★★★  リアリティはないですね
本格度 :★★★★★  普通です
読みやすさ :★★★★  読みにくくはない
真相の意外性 :★★★★  悪くない
読後感 :★★★★  特に爽やかでもないが不快ではない

総合評価 :★★★★  これで無駄が省ければさらに○
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093. 「人買奇談(ひとかいきだん)」     椹野 道流(ふしのみちる)
2005.01.27 中編 229P 1997年7月発行 講談社X文庫ホワイトハート ★★★+
第3回ホワイトハート大賞エンタテイメント小説部門 佳作
精霊の血を引く少年と、青年追儺師が活躍!


珍しく、少女向けのいわゆる「ヤングアダルト文庫」です。
ジュニア文庫ほど年齢層は低くないけど子供向け、
具体的には10代後半がターゲットかな?って感じです。

ちなみに講談社のX文庫ホワイトハートは
私が中高生の頃に出来た比較的新しい文庫です。

親文庫に当たるX文庫は、小学生高学年〜中学生向けの
少女恋愛小説を発刊するシリーズ。
菜の花が小学生の頃は花井愛子とか人気だったなー。
そういえば菜の花が最初にはまった現代小説は、
このX文庫の折原みとでした。
今読むと、あー、やっぱ子供向けかな〜って気もしますが、
当時、本当にはまりました。特に「アナトゥール星伝シリーズ」は
何よりも好きだったなー。なつかしー。今でも続いていると思います、多分。
たまに本屋さんなんかで見かけると、思わず手に取ります、このシリーズ。
大学生になってからも惰性で新刊が出ると買ってたかも。
かのシリーズはX文庫では大変珍しいファンタジーでして、
もちろん、恋愛小説ではあるんですけど、
それ以上のものをテーマにしたように思います。
スタートした当時はホワイトハート文庫はまだなかったので
あまり類似するような本もありませんでした。
もしもホワイトハートがすでにあったならば、そちらに入ったかも?
でも、ホワイトハートよりはやや年少者向けではあるか…。
丁度、X文庫からホワイトハートへの橋渡し的存在と言えるかもしれません。
って、いつの間にか別の作品の紹介に…(^ ^;;

後から出来たホワイトハート文庫は、X文庫を卒業した少女が、
講談社文庫に進む前のステップとしての位置づけでスタートしたのかなーと
菜の花的には思います。実際は、そこで止まってる人、いっぱいいると思いますが。
基本的に冒険ファンタジーが殆ど。
この文庫で有名なのは、アニメ化もし、さらに年長者向けの講談社文庫で再発刊されるに至った
小野不由美の「十二国記シリーズ」でしょう。彼女はX文庫でデビューし、
その作風からホワイトハートに移り、今ではごく普通の新書も執筆する、小説家に。
読者だけでなく、作者の方もこうしてステップアップしていくこともあるんですね。
ついでに言っておくと菜の花、小野不由美の十二国記、愛読書です。
という訳で彼女のことは主上と呼ばせて頂きたい。はい。
実はもう呼んでますが…。上の方で…。
あー、知ってる方は知ってらっしゃると思いますが
(そりゃそーだ、知らない人は知らないだろうし。)
小野不由美主上は、推理小説家の綾辻行人氏の奥様です。


それはともかく。そろそろこの作品を解説せねば!
(うわー、前置きの方が長いよ、絶対。)

本作は、上にありますホワイトハートで行なわれている
コンテストの一般公募作品です。
第3回ホワイトハート大賞エンタテイメント小説部門において佳作を受賞。
作者は当時28歳の法医学教室に在籍する、監察医。
勿論、これがデビュー作です。それでは中身に…。


【100字紹介】
 雨の夜、行き倒れた少年・琴平敏生は人間と精霊のハーフ。
 彼を助けた若手ミステリー作家の天本森は、
 霊障を扱う謎の組織の追儺師という裏の顔を持っていた。
 敏生は森の誘いを受け、術者として組織に加わることに! (99字)


そんな感じです。
文章は、普通にプロとして書いていけるレベルです。
キャラクターも、悪くないと思います。
森(しん、と読む。もりではない。一応、ファーストネーム)の方は、
いかにもX文庫やホワイトハートにごろごろいそうなおにーさんですが、
敏生の方は工夫がなされていて、その上できっちり人物が出来ていますね。

ストーリーは、やや単純。まあ、原稿枚数に制限があるのでどうしても
短くまとめざるをえないため、あまり大きな話は書けないとは思うのですが。
オリジナリティを加えてはいますが、やっぱり月並みかな。
いやいや、よくよく考えてみると決して悪くはないはずなんですが…、
審査員の講評にもあった通り、「かたり方」が悪いのだ、
という気もします。多分、そうなんでしょう。
うん、どんどん、そんな気がしてきた。

微妙にいわゆるボーイズラブ的要素が入っている気もしますが、これは余分だな。
こういう風に書いてしまいたい作者の気持ちは分かる場面だったけど
(確かに、雰囲気的には不自然ではない)本筋には関係ないし。
趣味だけだし。どっちでもいいなら、好まない読者もいることですから
削って頂いた方がよいかと、菜の花的には思うんですけどね。


やや稚拙な部分も目立つものの、これからの成長が楽しみでもある作家です。
もう少し、この方の作品を追いかけてみようかな、と思いました。




菜の花の一押しキャラ…琴平 敏生 「目撃者なしの状態で、骨も残さず喰われた人間の死体検案書ってのは、  どうやって書けばいいんだ?僕には分からん。             解剖どころか、検案もできんじゃないか!」             (龍村 泰彦) うん、ごもっとも。 椹野道流の著作リスト よみもののきろくTOP
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