よみもののきろく

(2010年4月…596-) 中段は20字紹介。価格は本体価格(税別)。 もっと古い記録   よみもののきろくTOPへ  
596. 「巨大高層建築の謎 古代から現代まで技術の粋を集めた建造物のおもしろさ」     高橋 俊介
2010.04.05 一般書 222P 952円 2008年10月発行 ソフトバンククリエイティブ
(サイエンス・アイ新書)
★★★★
高層建築の歴史と技術を、わかりやすく紹介


【100字紹介】
 日本初の超高層ビルである霞ヶ関ビルから40年、
 世界一の最長橋・明石海峡大橋から10年が経過するいま、
 国内外の巨大高層建築に投入された技術とその歴史を、
 様々なエピソードをまじえつつ分かりやすく紹介する。


1968年完成の霞ヶ関ビル、147m。
今ではもちろん、これより高いビルが国内にもあります。
でも当時はこんな高さのビルは日本には存在しませんでした。
関東大震災の翌年、「市街地建築物法」が改正され、
31mの高さ制限が設けられたからです。
法律で「これ以上高い建物は作っちゃダメ!」とされたわけです。
この「31m制限」は、関東大震災で52mの「凌雲閣 が倒れて、
31mの「旧丸ビル」が生き残ったから、という説もあるそうですが、
まあ、ちょうどいい数字だったから、ということでしょうか(31m=百尺)。
この法律は1963年に建築基準法改正により撤廃されました。
こうして、日本の超高層建築時代は到来したのです。

超高層建築は、日本のような地震大国ではちょっと怖いですよね。
でもそう簡単に倒れたりはいたしません!当然。
ちゃんと倒れないように、また風で揺れて
中にいる人々が酔っちゃったりしないように、
更には火事などの避難中、退路をふさがれにくいように、
色々な技術と工夫がしっかり施されているのです。
建築物の外側だけでなく、ビル建設で使う材料…鉄鋼や、
超高層建築では必須の設備であるエレベータの歴史と技術も取り上げています。
この本のお蔭で、鋳鉄、鋼鉄、錬鉄、銑鉄、鍛鉄の違いと関係を
初めて知った菜の花です。もしかして、常識だったらどうしよう。


関連の話題をたっぷり詰め込んで、
え、そんなことが!?というようなちょっと面白いエピソードなども交えて、
読み終わる頃には、高層建築を眺める目が変わっているかもしれません。
おかげさまで菜の花、次から高層建築を見たら、
今までは見もしなかったところをきょろきょろと眺め回してしまいそうです!


テーマ : 高層建築(技術工学史)
語り口 : 説明的文章
ジャンル : 一般教養
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 易しく魅力を語る
アートディレクション・デザイン : 近藤企画(近藤久博)
イラスト : アトリエ トランプハウス(山本 治)

文章・展開 : ★★★★★
簡 潔 性 : ★★★★
学 術 性 : ★★★★★
独 自 性 : ★★★★
読 後 感 : ★★★★

総合評価 : ★★★★
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597. 「家電製品がわかるII 相対性理論で正しく動くGPS」     藤島昭・井上晴夫監修 ; 佐藤銀平著
2010.04.14 一般書 279P 1600円 2008年1月発行 東京書籍 ★★★★★
身近にある家電の、しくみと歴史を紹介する


【100字紹介】
 普段、私達が何気なく買い、使っている家電。
 便利だけれどそれは一体どうやって動いているのだろう、
 それをどうやって人類は生み出してきたのだろう?
 そんな疑問を少しでも感じたら、是非この本を読んでみて下さい。


日本化学会が企画・編集している「化学のはたらきシリーズ」第2巻。
うっかり1巻ではなく2巻を手に取ったのは、
単にいつも行く図書館で第1巻がなかったからです。
所蔵していないのか、誰かが借りていたのかは知りませんけど。

日本化学会が動いているのですから、そりゃきっとマジメな本だろう、
と思い、読み始めてみました。しかし家電を入口にするなんて、
化学の人にしては普通の人っぽいよね…と…。
いやー、菜の花は、化学の人へは謎の偏見があるもので。
実験室では白衣ですけど、人前に出るとびしっとスーツを着て、
とにかくマジメで、カタイというイメージ。
服装がいい加減な、我々物理の人とは対照的。
大学によるのかもしれませんが。うちの大学では、という話。

本題に戻りましょう。

取り上げられている家電は
「テレビ」「照明」「時計」「電話」「ラジオ」「ビデオテープレコーダー」
「カメラ」「コンパクトカメラ」「ハードディスクドライブ」「パソコン」
「電子ピアノ」「ホームセキュリティ」「手回し発電機」

これに最終章で「知って起きた電気の基本」がくっついて、全14章構成です。

ざっくりした家電名なので、かなり広い範囲を含みます。
関係のある製品や技術も取り上げ、
技術史などもついでに放り込まれています。
家電名は本書のメインである「科学語り」の入口であり、軸ですね。

たとえば、第1章の「テレビ」では、そもそもテレビの画像の動くしくみのあと、
ブラウン管、液晶、プラズマ…などなど、各種テレビの説明、
ケーブルテレビや衛星放送などの、テレビの中身を送る方の話、
更には最近流行の「ワンセグ」の説明や、現在開発中のテレビについてなども。

「時計」では機械式もクオーツ式も取り上げますし、
昔の時計…日時計やら水時計やら、和時計…万年時計なども紹介。
「どうして時計といえばスイスなのか?」なんて話まで。

幅広く、興味を引くエピソードも盛り込んで、
頑張ってるな、化学会!って(笑)。

気になったのは、若干難度にばらつきがあることでしょうか。
文系の人でも分かるように噛み砕いている部分もあれば、
これは理系の大学生でもすぐに理解できるの?くらいの部分も。
対象者がいまいち判然としないというか。
まあ、分からないところは雰囲気だけ感じて、
読み飛ばせばいいのですけれどもね。


そうそう、副題の「相対性理論で正しく動くGPS」は本文中…、
コラムに出てくる内容です。第4章「電話」のラスト。
GPS衛星には原子時計が搭載されていますが、
これをわざと1日につき38マイクロ秒ずつ遅くする調整をしているそうです。
これは地上の時計と比べると衛星の時計は
特殊相対性理論からいくと7マイクロ秒/日で遅れ、
一般相対性理論からいくと45マイクロ秒/日だけ進むため、
全体としては38マイクロ秒/日だけ進んでしまうよ、という話。
もしもこのズレを放置すると、GPSで分かる地上の二地点間の距離は
1日につき10kmずつずれていくそうで。それは大変だー。
「こんなの、何の役に立つんだ?」という基礎研究が、
我々の日常生活で重大な役割を担っている例として挙げられているのです。
日本化学会の叫びが、副題になっているわけですね。

…しかし何故、これが第3章「時計」ではなく、第4章「電話」にあるのか…。
一応、「最近のケータイ電話にはGPSがついててさー」という前置きはありますが、
何となく不思議な気がしました、はい。スペースの問題?

テーマ : 家電の科学
語り口 : 説明的文章
ジャンル : 一般教養
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 頑張って説明します
シリーズ : 化学のはたらきシリーズA
企画・編集 : 日本化学会
装 丁 : 金子 裕(東京書籍)
本文デザイン : 井上 恭一(東京書籍)
図版・イラスト : 佐藤 銀平

文章・展開 : ★★★★★
簡 潔 性 : ★★★★★
学 術 性 : ★★★★
独 自 性 : ★★★★
読 後 感 : ★★★★★

総合評価 : ★★★★★
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