【100字紹介】
普段、私達が何気なく買い、使っている家電。
便利だけれどそれは一体どうやって動いているのだろう、
それをどうやって人類は生み出してきたのだろう?
そんな疑問を少しでも感じたら、是非この本を読んでみて下さい。
日本化学会が企画・編集している「化学のはたらきシリーズ」第2巻。
うっかり1巻ではなく2巻を手に取ったのは、
単にいつも行く図書館で第1巻がなかったからです。
所蔵していないのか、誰かが借りていたのかは知りませんけど。
日本化学会が動いているのですから、そりゃきっとマジメな本だろう、
と思い、読み始めてみました。しかし家電を入口にするなんて、
化学の人にしては普通の人っぽいよね…と…。
いやー、菜の花は、化学の人へは謎の偏見があるもので。
実験室では白衣ですけど、人前に出るとびしっとスーツを着て、
とにかくマジメで、カタイというイメージ。
服装がいい加減な、我々物理の人とは対照的。
大学によるのかもしれませんが。うちの大学では、という話。
本題に戻りましょう。
取り上げられている家電は
「テレビ」「照明」「時計」「電話」「ラジオ」「ビデオテープレコーダー」
「カメラ」「コンパクトカメラ」「ハードディスクドライブ」「パソコン」
「電子ピアノ」「ホームセキュリティ」「手回し発電機」
これに最終章で「知って起きた電気の基本」がくっついて、全14章構成です。
ざっくりした家電名なので、かなり広い範囲を含みます。
関係のある製品や技術も取り上げ、
技術史などもついでに放り込まれています。
家電名は本書のメインである「科学語り」の入口であり、軸ですね。
たとえば、第1章の「テレビ」では、そもそもテレビの画像の動くしくみのあと、
ブラウン管、液晶、プラズマ…などなど、各種テレビの説明、
ケーブルテレビや衛星放送などの、テレビの中身を送る方の話、
更には最近流行の「ワンセグ」の説明や、現在開発中のテレビについてなども。
「時計」では機械式もクオーツ式も取り上げますし、
昔の時計…日時計やら水時計やら、和時計…万年時計なども紹介。
「どうして時計といえばスイスなのか?」なんて話まで。
幅広く、興味を引くエピソードも盛り込んで、
頑張ってるな、化学会!って(笑)。
気になったのは、若干難度にばらつきがあることでしょうか。
文系の人でも分かるように噛み砕いている部分もあれば、
これは理系の大学生でもすぐに理解できるの?くらいの部分も。
対象者がいまいち判然としないというか。
まあ、分からないところは雰囲気だけ感じて、
読み飛ばせばいいのですけれどもね。
そうそう、副題の「相対性理論で正しく動くGPS」は本文中…、
コラムに出てくる内容です。第4章「電話」のラスト。
GPS衛星には原子時計が搭載されていますが、
これをわざと1日につき38マイクロ秒ずつ遅くする調整をしているそうです。
これは地上の時計と比べると衛星の時計は
特殊相対性理論からいくと7マイクロ秒/日で遅れ、
一般相対性理論からいくと45マイクロ秒/日だけ進むため、
全体としては38マイクロ秒/日だけ進んでしまうよ、という話。
もしもこのズレを放置すると、GPSで分かる地上の二地点間の距離は
1日につき10kmずつずれていくそうで。それは大変だー。
「こんなの、何の役に立つんだ?」という基礎研究が、
我々の日常生活で重大な役割を担っている例として挙げられているのです。
日本化学会の叫びが、副題になっているわけですね。
…しかし何故、これが第3章「時計」ではなく、第4章「電話」にあるのか…。
一応、「最近のケータイ電話にはGPSがついててさー」という前置きはありますが、
何となく不思議な気がしました、はい。スペースの問題?
テーマ |
: 家電の科学 |
語り口 |
: 説明的文章 |
ジャンル |
: 一般教養 |
対 象 |
: 一般向け |
雰囲気 |
: 頑張って説明します |
シリーズ |
: 化学のはたらきシリーズA |
企画・編集 |
: 日本化学会 |
装 丁 |
: 金子 裕(東京書籍) |
本文デザイン |
: 井上 恭一(東京書籍) |
図版・イラスト |
: 佐藤 銀平 |
|
文章・展開 |
: ★★★★★ |
簡 潔 性 |
: ★★★★★ |
学 術 性 |
: ★★★★★ |
独 自 性 |
: ★★★★★ |
読 後 感 |
: ★★★★★ |
|
総合評価 |
: ★★★★★ |
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